抜き書き読書ノート
公開日:
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最終更新日:2015/09/08
本
1.抜き書き読書ノートを作る
本を読むことが好きです。本屋さんやKindleストアで見つけた小説やドキュメンタリーを読むのも好きですし、実用書や学術書を仕事のために読むのも好きです。
私が読書にのめり込んだのは、大学生の頃でした。当時の私は、一冊でも多くの本を読みたいと考えていました。世の中に存在するたくさんの読むべき本に比べて、本を読むために自分に与えられている時間がとてもとても限られているように感じたためです。
しかし、最近は、たくさんの本を読むよりもむしろ、一冊一冊をじっくりゆっくり読むことを心かげています。世の中には読むに値する本がたくさんあって、そのすべてを読むことは、どんなに努力しても、どんな画期的な速読法を身につけても、最初から不可能です。であれば、むしろ、たまたま縁があって巡りあった限られた本を、一冊一冊大切に読みたいと思うようになりました。
たまたま巡り会えた一冊一冊を大切に読むために、私がしている具体的な行動は、読書ノートを作ること、です。具体的には、その本の中から気になった一節を抜き書きして、抜き書きに線を引いたり書き込んだりします。
(これは、『クラウド時代のハイブリッド読書術』の読書ノートです。)
その意味で、私が作る読書ノートは、「抜き書き読書ノート」と言えるかもしれません。
抜き書き読書ノートを作るのは、実用書や学術書だけではありません。小説やエッセイにも作ります。最近では、上橋菜穂子さんの『獣の奏者』と『鹿の王』、平野啓一郎さんの『ドーン』と『空白を満たしなさい』、村上春樹さんの『走ることについて語るときに僕の語ること』、倉下忠憲さんの『ブログを10年続けて、僕が考えたこと』などで、抜き書き読書ノートを作りました。
(これは、『ドーン』の抜き書き読書ノートです。)
当然ながら、抜き書き読書ノートを作るためには、手間と時間がかかります。抜き書き読書ノートを作りながら年間200冊の本を読む、なんてことは、不可能ではないにせよ、ほぼ不可能です。
でも、抜き書き読書ノートを作ることに、私自身は、少なくとも次の3つのメリットを実感しています。
- その本に対する理解が深まる
- その本を起点とする考えや行動につながる
- その本を「大きな引き出し」に「しまう」ことができる
これら3つのメリットは小さくありませんので、私は、抜き書き読書ノートなしに200冊の本を読むよりも、抜き書き読書ノートを作りながら20冊の本を読むことを選びたいと思います。
これからも抜き書き読書ノートを作り続けます。このためにも、このあたりで一度、腰を据えて、抜き書き読書ノートについて考えてみたいと思いました。そこで、何度かに分けて、断続的に、読書ノートについて書いてみます。
まずは、抜き書き読書ノートを作る手順を、多少一般的に書いてみます。
2.抜き書き読書ノートを作る手順
私が抜き書き読書ノートを作る手順は、次の3つの段階から成り立っています。
- 印をつけながら、本を読む
- 本の中の大事な箇所や面白い箇所を、読書ノートに抜き書きする
- 抜き書き読書ノートを、書き込みながら読む
(1) 印をつけながら、本を読む
a.本の中から価値のある抜き書き箇所を発掘するため、本を読む
当たり前ですが、抜き書き読書ノートを作る最初のプロセスは、その本を読むことです。
本を読むこと自体は、抜き書き読書ノートを作っても作らなくても変わらない、と思われるかもしれません。しかし、実際は、抜き書き読書ノートを作るというプロセスが後ろに控えていることで、本を読むことそれ自体が変わります。なぜでしょうか。
抜き書き読書ノートは、次の3つの要素から成り立ちます。
- 本からの抜き書き(とその抜き書きを特定する出典情報(ページ数やLocation番号))
- 抜き書きへの書き込み(線を引いたりポイントをまとめたり)
- 抜き書きを触媒として生まれた思考や文章や具体的なタスクの記録
これら3つのうち、いちばん大切なのは、本からの抜き書きです。その本の中のどの部分を抜き書きするかが、抜き書き読書ノートの価値の大部分を決めます。
では、その本の中の価値ある部分をきちんと抜き書きするには、何が大切なのでしょうか。それは、印をつけながら本を読むことです。本を読むときに、抜き書きすべき部分をきちんと見つけ出し、かつ、あとから抜き書きしやすいように特定しておくことで、うまく抜き書きをすることができます。
印をつけながら本を読むことは、本の中から価値ある抜き書き箇所を発掘するための作業です。
b.印をつけながら本を読む手順
印をつけながら本を読む手順は、紙の本とKindle本とで異なります。以下、それぞれの留意点を説明します。
(もちろん、電子書籍はKindle本だけではありません。しかし、私にわかるのはKindle本だけなので、Kindle本について説明します。)
(a) 紙の本の場合
紙の本に印をつけるための手段には、筆記用具で本に書き込む、付箋を貼る、ページの端を折り曲げる、などがあります。
私は、筆記用具で本に書き込んでしまうのがよいと考えています。どこからどこまでを抜き書きするのか、はっきりと特定できるためです。付箋やページ折り曲げは、ページ単位でしか印を付けられません。
筆記用具の使い方は、線を引いたり囲ったりして、抜き書きの箇所を特定することが最低限満たすべき条件です。加えて、なぜ、その箇所を抜き書きすべきなのか、その理由がわかるようにしておくとよいと思います。この場面では、客観的に重要と主観的に面白いを区別する三色ボールペン方式がうまく機能します。
なお、印をつけるのではなく、いきなり抜き書きをしながら本を読む、というやり方もありますし、この亜種としてページを写真撮影しながら読むことも考えられます。しかし、私は、第1段階として本に印をつけながら本全体を通読し、第2段階として印をつけた箇所を抜き書きしながら読み返す、2段階がよいような気がしています。
(b) Kindle本の場合
Kindle本に印をつけるためには、ハイライト、メモ、ブックマーク(付箋)という手段が用意されています。
Kindleの「ハイライト」「メモ」「共有」の基本を整理する
このうち、抜き書きのためには、ハイライトがおすすめです。その理由は、第1に、抜き書きの箇所を文字単位で特定できるからで、第2に、kindle.amazon.co.jpからハイライト箇所をテキストで取得できるからです。
Kindle本のハイライトには、2つのコツがあります。
ひとつめは、キーワードだけではなく、文全体や節全体をハイライトすることです。ハイライト箇所だけが一覧になりますので、キーワードだけでは、文脈を追跡できないためです。
ふたつめは、見出しや目次をハイライトすることです。見出しや目次は、ハイライト箇所を本の構造の中に位置づけることを助けてくれます。
他方で、Kindle本のハイライトには、注意点もあります。ハイライト箇所によっては、kindle.amazon.co.jpにその本のハイライト一覧箇所が表示されなくなる場合があるのです。
どのようなときに表示されなくなるか、正確なところすべてをわかっているわけではありませんが、少なくとも画像をハイライトすると、表示されなくなります。また、ルビや特殊文字などをハイライトしたことで表示されなくなることもあるようです。
Kindleのハイライト箇所が「kindle.amazon.co.jp」に表示されないときの対策手順
(2) 本の中の大事な箇所や面白い箇所を、読書ノートに抜き書きする
a.読書ノートの土台となる抜き書き
抜き書き読書ノートの土台は、本からの抜き書きです。本の中に存在する価値のある箇所を抜き書きすれば、それだけで、抜き書き読書ノートは役立ちます。
どんな箇所を抜き書きするかに、決まったルールはありません。ピンときた箇所を好きなように抜き書きするだけです。
しかし、持っておくとよい指針があります。私のおすすめは、「三色ボールペン方式」の考え方を取り入れて、客観的に重要な箇所と主観的に面白い箇所の両方を抜き書きすることです。
その箇所だけを読めばその本を8割程度理解したと言えるような、本の趣旨に沿った客観的に重要な箇所を、まずは押さえる。その上で、本の趣旨からは重要とは限らないが、自分の個人的な問題意識との関係で意味があったり、自分の好みや感覚にフィットして面白いと感じたりする箇所、つまり主観的に面白い箇所を抜き書きする。この両方を揃えると、抜き書きノートは、価値ある存在になります。
b.抜き書きの手順
抜き書きの手順も、紙の本とKindle本とで異なりますので、それぞれ留意点を説明します。
(a) 紙の本を書き写す
紙の本の抜き書きは、基本的には、手で書き写すしかありません。
前の手順で本に印をつけてありますので、その箇所を淡々と書き写します。本に書き込んだコメントなどもあれば、それも合わせて書き写します。
印をつけた箇所を書き写す際に、同じページの周辺が目に入ります。そのとき、印をつけた前後にピンとくる箇所を見つけたら、その箇所も合わせて書き写します。
スマートフォンを使うなら、紙の本のページを写真撮影することも、抜き書きの手段になりえます。ただ、抜き書き読書ノートのその後のプロセスのためには、抜き書き部分がテキストデータになっている方がよいです。そのため、写真撮影をした場合も、必要な箇所をテキストに文字起こしする方がよいように思います。
(b) Kindle本を抜き書きする
Kindle本の抜き書きには、ハイライト一覧の取り込みを活用できます。
ここで詳しいやり方を解説することは控えますが、kindle.amazon.co.jpというウェブサイトで表示したハイライト一覧を、コピー&ペーストによって、テキスト形式で取得できるのです。
ブックマークレット「KindleHighlight」で、「kindle.amazon.co.jp」から、Kindle本のハイライト箇所を、シンプルなデータで、クリップボードに取り込む
他方で、この方法による取り込みは、あまりにも便利で手軽なので、自分の頭への食い込み度合いが浅いとも言えます。また、この方法による取り込みでは、ハイライト箇所だけしか確認できず、ハイライト箇所の前後が同時に目に入る、ということがありません。
そこで、自分にとって大きな意味を持つKindle本については、Kindle本の画面を目で見ながら、手で書き写す、ということをしてもよいのではないかと思います。
(3) 抜き書き読書ノートを、書き込みながら読む
a.抜き書きを読み返す
抜き書き読書ノートの最後の段階は、抜き書きを読み返すことです。
その本の中の価値ある箇所をきちんと発掘して抜き書きしたのなら、抜き書き読書ノートは、それ自体が読み返すに値するものになっているはずです。
抜き書きを読み返せば、その本を復習することができます。また、その本の中の自分の好きな箇所が盛り込まれているので、抜き書きを読み返すことそれ自体が、この上ない楽しみでもあります。
このように、抜き書き読書ノートは、まずはそれ自体を読み返すものです。
b.抜き書きに書き込んで、抜き書き読書ノートを読み込む
抜き書き読書ノートを読むときに、抜き書きノートに印をつけたり書き込んだりすることは、もちろん問題はありませんし、むしろ望ましいです。
(a) 抜き書きに印をつける
抜き書きに線を引くのは、有効です。
すでに線を引いた部分だけを抜き書きしているのだから、すべてに線を引くだけになるんじゃないか、という心配もありえますが、実際は、そうはなりません。抜き書き部分の中にも、重要度や面白さの濃淡がありますので、抜き書きの中の選りすぐりをさらに絞り込むことができます。
(b) 抜き書きにコメントやまとめを追加する
抜き書き読書ノートに書き込むこともおすすめです。
抜き書きを自分の言葉でまとめ直したり、関連情報や自分の考えなどのコメントを書き加えると、抜き書き読書ノートの中に、本に関連する情報を集約することができます。
c.その本を起点とする考えや行動を、記録する
これは人によって好みが別れ、またツールを選ぶやり方ではあるのですが、抜き書き読書ノートに、その本を起点とする、しかしその本とは直接関係しないことを書き込む、ということも面白いです。
(a) その本を起点とする考えを文章にする
たとえば、一冊の本を読めば、いろんなことを考えます。これらの中には、本の内容に対する賛同や反論もあるでしょうが、実際に多いのは、本の中の何らかの記載から連想した、必ずしも本の趣旨とは直接に関係しない思考です。
このような、その本を読んだからこそ生まれたその本を起点とする思考だけれど、本の趣旨と直接に関連するわけではない思考を、抜き書き読書ノートの中にそのまま書き込んでしまうと、抜き書き読書ノートは自分だけの面白いノートになります。
私がときどきやるのは、本を読んだことをきっかけにして考えたことを、抜き書き読書ノートの中で、そのままブログ原稿として書き上げてしまう、ということです。
(b) その本を起点とする行動を記録する
また、その本をきっかけに何らかの行動を起こしたなら、その行動の記録を、その本の読書ノートの中に書いてしまう、ということもありえます。
たとえば、『Facebook×Twitterで実践するセルフブランディング』は、その第2章「自分のブランドの見つけ方」に、「自分のブランドを見つける手がかりとなる問いかけ」をいくつか紹介しています。
この問いかけに取り組んだなら、その記録を、全部同書の抜き書き読書ノートの中に書き込んでしまえばよいわけです。
まずは、自分のブランドを見つける手がかりとなる問いかけをいくつか紹介します。実際に紙とペンを使って、その問いかけに答えてみてください。自分のブランドは本を読んだだけで見つかるものではありません。自分なりに頭を捻ることで、イメージできるものです。
p.70
このような記録は、本の中で直接に提示された行動に限られません。何かの本を読み、その本を起点に何らかの具体的な行動を実行したら、その行動の記録を抜き書き読書ノートの中に書き込みます。そうすれば、その分、抜き書き読書ノートに自分だけの価値が生まれます。
d.抜き書き読書ノートの抜き書き読書ノートを作る
このように、抜き書きを読み返しながらいろいろと書き込んでいると、抜き書き読書ノート自体のボリュームが増えていきます。
自分なりに大切なことが盛り込まれている、と感じたなら、その抜き書き読書ノート自体を一冊の本のように考えて、その抜き書き読書ノートの抜き書き読書ノートを作ることもできます。
もちろん、時間も限られていますので、すべての本について、こんなことをすることはできません。でも、年に数冊くらいの本になら、抜き書き読書ノートの抜き書き読書ノートを作る、という読み方をすることはできるはずです。抜き書き読書ノートの抜き書き読書ノートを作るという読み方をした本は、自分にとって、特別な本になります。個人的には、年に数冊、そんな本と出会えることは、まちがいなく、人生の大きな幸福です。
3.抜き書き読書ノートについて、これから書きたいことのロードマップ
以上が、抜き書き読書ノートについての総論的なことです。
抜き書き読書ノートについては、まだ書きたいことが残っています。具体的には、WorkFlowyで抜き書き読書ノートを作ることです。というよりも、実を言えば、WorkFlowyで抜き書き読書ノートを作ることについて書き始めたところ、その一部が膨らんで、この記事として結実しました。
もともと書こうとしていたテーマである「WorkFlowyで抜き書き読書ノートを作ること」は、今後、こんな感じのロードマップで描いていく予定です。
(1) なぜ、抜き書き読書ノートを作るのか?
抜き書き読書ノートを作る目的について。
本記事の冒頭に書いた次の3点を丁寧に説明します。
(2015/09/08更新)なぜ、抜き書き読書ノートを作るのか?
- その本に対する理解が深まる
- その本を起点とする考えや行動につながる
- その本を「大きな引き出し」に「しまう」ことができる
(2) 抜き書き読書ノートに関するノウハウ
抜き書き読書ノートに関するいくつかの有効なノウハウを取り上げます。
a.抜き書き読書ノートの抜き書き読書ノート
まずは、抜き書き読書ノートの抜き書き読書ノート。
『思考の整理学』で紹介されていた「メタ・ノート」と同じものです。
b.漫画の抜き書き読書ノート
漫画の抜き書き読書ノートを作ってみたいと思っています。今のところひとつも作ったことがないため、まずは、『宇宙兄弟』か『ハイキュー!!』か『スラムダンク』か『クッキングパパ』かでやってみたいです。
c.抜き書き読書ノートによって本を自家薬籠中のものにする
抜き書き読書ノートを作る目的のひとつ、「その本を起点とする考えや行動につながる」のうち、「その本を起点とする行動につながる」ことの理由は、本を自家薬籠中のものにすることができることにあります。
これはと感じる一冊の本に出会ったなら、単にその本を「読んだ」というレベルに留めるのではなく、その本を徹底的に読み込み、自家薬籠中のものとするほうが、かえって効果的です。
抜き書き読書ノートを、本を自家薬籠中のものにするための手段として捉える記事をひとつ書きたいなと思っています。
(3) WorkFlowyによる抜き書き読書ノート
a.なぜ、WorkFlowyで抜き書き読書ノートを作るのか?
私は、自分の抜き書き読書ノートのために、WorkFlowyを使っています。WorkFlowyは、これまで私が読書ノートのために使ってきた様々なツールの中で、もっともピンとくるツールです。
しかし、WorkFlowyには、読書ノートのためにあるとよい機能のいくつかが欠けています。Evernoteの方がずっといいんじゃないか、という意見ももっともです。
そこで、主にEvernoteとの比較から、なぜ(Evernoteではなく)WorkFlowyで読書ノートを作っているのか、その理由を考えてみます。
b.WorkFlowyで抜き書き読書ノートを作る手順
この記事とセットになる記事です。
WorkFlowyで抜き書き読書ノートを作る手順をまとめます。
c.WorkFlowyによる抜き書き読書ノートから広がる可能性
抜き書き読書ノートを作るためにWorkFlowyを使うメリットのひとつは、そこからいろんな方向に展開する可能性を秘めていることです。
WorkFlowyによる読書ノートから広がる可能性を、ブログ原稿、読書会、プレゼン資料などを例に、考えてみます。
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