向上心と自己肯定感を育てやすい人生観・世界観との関係
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書き方・考え方
目次
1.人生観・世界観を書き換えることは、向上心を殺すか?
(1) 自己肯定感を育てやすいように、人生観・世界観を書き換える
私は、自己肯定感に肯定的です。自己肯定感は、あった方がいいし、多ければ多いほどいいと思っています。
自己肯定感を育てるために有効な方法にはいくつかあると思うのですが、私がいちばん効果が高いと思っているのは、自己肯定感を育てやすいように人生観・世界観を書き換える、という方法です。
人生観・世界観には、自己肯定感を育てやすいそれと、自己肯定感を育てやすくないそれがあります。自己肯定感を育てやすくない人生観・世界観を持っているなら、その人生観・世界観をそのままにしたままで自己肯定感を育てようとがんばるよりも先に、人生観・世界観を自己肯定感を育てやすいものに書き換える方が、合理的です。
たとえば、「~~で1番になることにこそ価値がある」という人生観を持っているとします(~~には、いろんなものが入ります)。この人生観を前提として自己肯定感を育てるには、現実に、~~で1番になる必要があります。
~~で1番になれればそれで万歳なのですが、~~で1番になれない間はなかなか自己肯定感を育てることができません。このとき、自己肯定感を育てるためには、ふたつの方向があります。
ひとつは、~~で1番になることです。もうひとつは、「~~で1番になることにこそ価値がある」という人生観を書き換えて、たとえば、「(~~よりも1番になれる可能性が高い)●●で1番になることに価値がある」とか、「~~を楽しむことに価値がある」とか、自分がより自己肯定感を育てやすいものにすることです。
このうち、~~で1番になるのは、自分だけでどうにかなるわけではありません。自分にできるのは、それに向かってがんばるだけですが、がんばれば必ず1番になれるわけでもありません。これに対して、人生観を書き換えることは、自分次第でできます。
『7つの習慣』の用語を使えば、~~で1番になることは、影響の輪の外側であり、人生観を書き換えることは影響の輪の内側です。
(2) 人生観・世界観を書き換えることは、向上心を殺すか?
このように、私は、人生観・世界観を、自己肯定感を育てやすいものへと書き換える、ということを、自己肯定感を育てるための有効な手段だと認識しています。
でも、これに対しては、それは良くない、という意見もあると思います。私がぱっと思いつくのは、この手段は向上心を殺す、というものです。
たとえば、「~~で1番になることに価値がある」という人生観のもとで、~~で1番になるために一生懸命がんばることは、~~で1番になることまで到達できなくても、何らかの客観的な価値を生む可能性が高いです。
これに対して、「~~で1番にならなくてもいいよ。楽しめばいいよ。」みたいな人生観だと、最初から~~で1番になろうとする努力をしないので、「~~で1番になることに価値がある」という人生観のもとでがんばったときと比べて、生み出せる価値が減りそうです。
つまり、自己肯定感を育てやすい人生観・世界観に書き換えるという手段は、現実世界でがんばるのではなく、人生観・世界観を書き換えることに逃げることであって、向上心を殺す、ということです。
自己肯定感を育てやすい人生観・世界観と、向上心との関係を、どのように考えたらよいでしょうか。
2.向上心と自己肯定感を育てやすい人生観・世界観のマトリクス
(1) 向上心と自己肯定感を育てやすい人生観・世界観のマトリクス
このふたつの関係を、マトリクスで整理します。
マトリクスの軸は、
- 自己肯定感を育てやすい人生観・世界観と、自己肯定感を育てやすくはない人生観・世界観
- 向上心が高い状態と、向上心が高くない状態
というふたつです。
自己肯定感を育てやすい人生観・世界観の典型例は、がんばらなくてもいいんだよ的な人生観・世界観で、自己肯定感を育てやすくはない人生観・世界観の典型例は、一定の基準に到達しないとお前の生きる価値はない的な人生観・世界観です。
すると、こんなマトリクスができます。
自己肯定感を育てやすい人生観・世界観 |
自己肯定感を育てやすくはない人生観・世界観 |
|
向上心が高い状態 |
【第1領域】 |
【第2領域】 |
向上心が高くない状態 |
【第3領域】 |
【第4領域】 一定の基準に到達しないと価値がない的な人生観・世界観を持っている。 向上心が高くなくて、現実世界で行動せず、全然がんばってない。 |
(2) 向上心を保つには、何が大切なのか
a.自己肯定感を育てやすい人生観・世界観は、向上心を殺す、という意見が意味すること
さて、このマトリクスを使って、向上心と自己肯定感を育てやすい人生観・世界観について考えます。
「自己肯定感を育てやすい人生観・世界観を持つことは向上心を殺す」という意見は、要するに、自己肯定感を育てやすい人生観・世界観かつ向上心が高い状態の【第1領域】にいる人は、向上心を失い【第3領域】に移動しがち、ということを意味します。
また、この意見は、自己肯定感を育てやすくはない人生観・世界観なら、向上心が低下しない、ということも含意するはずです。そうでないと、「自己肯定感を育てやすい人生観・世界観を持つこと」に対する批判にならないからです。
そこで、この意見は、次のふたつを意味します。
- 向上心を維持するためには何らかの支えが必要で、支えがないと向上心は低下してしまう
- 自己肯定感を育てやすい人生観・世界観は向上心の支えにはならないけれど、自己肯定感を育てにくい人生観・世界観は向上心の支えになる
b.検討
このふたつに対しては、どちらに対しても、突っ込むことができるのではないかと思います。
向上心を維持するためには何らかの支えが必要ということについては、向上心は、何もないと低下する方向に動くものではない、という突っ込みが可能です。
向上心を持つことは、それ自体わりと快適なことです。向上心は、放っておくとどんどん低下するものではなく、むしろ、自らを維持する力が働くものではないかと感じます。
また、仮に、向上心に支えが必要だとしても、「自己肯定感を育てやすい人生観・世界観が向上心の支えにならなくて、自己肯定感を育てにくい人生観・世界観が向上心の支えになる」ということについても突っ込みが可能です。
まず、自己肯定感を育てやすい人生観・世界観によって向上心を支えることは可能です。自己肯定感を育てやすい人生観・世界観によって十分に自己肯定感を育て、安心して向上に邁進できる、という道筋があるはずです。
それから、自己肯定感を育てにくい人生観・世界観が本当に向上心を支えるのか?という疑問もあります。ハングリー精神や危機感として向上心を支えるようにも思えますが、プレッシャーや余裕のなさによって向上心が傷ついてしまうこともあります。人にもよりますが、私にとっては、むしろこっちの方が大きい気がします。
とすると、結局、自己肯定感を育てやすい人生観・世界観かつ向上心が高い状態の【第1領域】にいる人が、向上心を失い【第3領域】に移動しがち、という力学は、ありません。
(3) どの領域が気持ちよいか
4つの領域間に、どこかの領域から他の領域に自然と動くような力学が働いているわけではないなら、自分がどの領域にいたいのかを考えて、自分でその領域に移動すればよいだけです。領域間に働く力学がないなら、その場所にとどまることができるはずです。
私にとっては、4つの領域のどこにいたいかの順序は明らかです。
- 1位 【第1領域】自己肯定感を育てやすい人生観・価値観/向上心高い
- 2位 【第3領域】自己肯定感を育てやすい人生観・価値観/向上心低い
- 同率3位 【第2領域】と【第4領域】自己肯定感を育てにくい人生観・価値観/向上心高い・低い
ここからすると、私にとっては、上にいるか下にいるか(向上心の高い低い)よりも、右にいるか左にいるか(自己肯定感を育てやすい人生観・世界観か否か)がずっと大切だ、ということがわかります。
3.自己肯定感を持ちやすい人生観・世界観と向上心との間に必然的な関係はないから、自己肯定感を持ちやすい人生観・世界観に書き換えればよい
自己肯定感を持ちやすい人生観・世界観を持つと、向上心を失ってしまう、という批判は、たぶん、当てはまりません。自己肯定感を持ちやすい人生観・世界観を持てば向上心が向上する、という関係があるかはわかりませんが、少なくとも、自己肯定感を持ちやすい人生観・世界観を持つと向上心が殺されるわけではありません。
自己肯定感を育てることに価値を感じるなら、人生観・世界観の書換えは、けっこう有効な手段です。向上心のことを心配して、この手段をためらう必要は、たぶんないと思います。
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