[生活を創るキーワード辞書]で、言葉を「思考の道具」として鍛える(マンダラートが言葉を大切にする理由)
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Mandal-art
目次
1.「言葉だけだから味気ない」は完全な誤解
以前、私は、マンダラートに、次の3つの誤った先入観を抱いていました。
- 1.マンダラよりもマトリクスの方が、論理的な枠組みを持っている。だから、論理的な枠組みを活用した思考法を求めるなら、マンダラートよりもマトリクスの方がよい。
- 2.マンダラよりもマインドマップの方が、自由で彩りがあってイメージを刺激する。だから、イメージを活かした自由な思考法を求めるなら、マンダラートよりもマインドマップの方がよい。
- 3.マンダラよりもアウトライナーの方が、階層の移動や組み換えや俯瞰が使いやすい。だから、階層構造を活用した思考法を求めるなら、マンダラートよりもアウトライナーの方がよい。
この先入観は、『[超メモ学入門]マンダラートの技法』という1冊の本と、MWEというひとつのアプリケーションによって、くるりとひっくり返りました。
段差ラ部で桝目を学ぶ 〜マンダラートに抱いていたネガティブな先入観がひっくり返った話〜
2つめの先入観である「イメージを活かした自由な思考法を求めるなら、マンダラートよりもマインドマップの方がよい」がひっくり返った理由は、次の3つの誤解が解けたからでした。
- (1) マンダラは言葉だけだから味気ない・マインドマップは絵や線や図形もあるから彩りがある
- (2) マンダラは周辺の個数が8個で固定されているから窮屈・マインドマップは個数の制約がなくて自由
- (3) マンダラは「中心セル」と「周辺セル」の位置関係が固定されているから表現できる関係性のバリエーションに乏しい・マインドマップは自由な配置が可能だから無限の可能性を表現できる
マンダラートに彩りを発揮させる(マインドマップとの比較を念頭に置いて)
3つの誤解解消の中で、私がもっとも刺激を受けたのは、「(1) マンダラは言葉だけだから味気ない」の解消です。
この「マンダラは言葉だけだから味気ない」は、次の2つの命題に分解できます。
- マンダラは言葉だけである
- 言葉だけだから味気ない
いずれも誤解ですが、特に大切なのは、後者の「言葉だけだから味気ない」です。
「言葉だけだから味気ない」。これは、根拠のない先入観であり、完全な誤解です。言葉は、使い方によっては、豊かな彩りを発揮する「思考の道具」になりえます。私は、このことを、『[超メモ学入門]マンダラートの技法』の「第4章 書いてミル」に教わりました。
以下、本章の「[生活を創るキーワード辞書]を創る」というアイデアを紹介することで、「言葉だけだから味気ない」が誤解であることを明らかにし、言葉を「思考の道具」として鍛える方法を説明します。
2.[生活を創るキーワード辞書]を創る(『[超メモ学入門]マンダラートの技法』「第4章 書いてミル」の紹介)
(1) 「言葉」が持つ意味に対する理解度が、思考力を決める
『[超メモ学入門]マンダラートの技法』の「第4章 書いてミル」は、ものごとを「観る」ことのひとつである「書く」を掘り下げる章です。
まず、本章で、マンダラート考案者の今泉浩晃氏は、「書く」という行為が思考するための最も便利な方法であると指摘します。
ともかく、この〈書く〉という行為は、私たちがアタマを使うための、最も便利な方法であることだけは間違いないようです。403 よくミルためにはそれを書いてミルことが一番いい
そして、この「書く」という行為が、「言葉を」書く行為であることを確認します。
この〈書く〉ということは〈言葉を〉書くのでしたね。406 書くということは言葉を知ることから始まるんだ
ここから導かれるのは、「言葉」は「思考の道具」である、ということです。
同時に、「言葉」が、思考をする上で、とても重要な存在であることも明らかになります。なぜなら、「言葉」は「思考の道具」なのですから、「言葉」が持つ意味を分かっていなければ、その「言葉」を「思考の道具」として使って考えることはできないはずだからです。
一つの言葉が、どんな[イメージの星雲]を創っているのかを知らなければ、その言葉を使って〈考える〉ことはできないはずでしょう。408 [イメージの星雲]をどう解釈するかさせるかが言葉なのだ
たとえば、「知的生産」が自分にとって重要なテーマだとすると、日々、「知的生産」について考えるはずです。そして、「知的生産」について考えるなら、「知的生産」にかかわる言葉群を、「思考の道具」として使わざるをえません。例を挙げると、〈情報〉や〈システム〉です
今泉氏は、「これらの言葉がどんな意味を持つのか、ちゃんとわかって使っているか?」と突きつけてきます。
知的生産にかかわる言葉群の大半を、ただ何となく分かったツモリで過ごしてはきませんでしたか? たとえば〈情報〉という言葉は、今では、頻繁に聞き、使っている言葉なのですが、それが何を意味するのか、ちゃんと説明できますか?
あるいはまた〈システム〉という言葉は、どんな意味を持った言葉なのでしょうね。ちゃんと分かって使っているのでしょうか?407 イメージを再現できる言葉を使っているか
つまり、「言葉」が持つ意味に対する理解の度合いが、思考力を決める、ということです。思考力を高めたいなら、「言葉」に対する理解度を高める必要がある、ということです。
こんなふうに考えてくると、言葉に対する感性とか、理解度というもの、もっといえば言語能力というものが、いかに基礎能力として重要な意味を持っているのか、ということがお分かりになるでしょう。この言語能力をどう高めていくか、これが分からなければ、思考力も、創造性も、絵に描いた餅でしかありませんね。408 [イメージの星雲]をどう解釈するかさせるかが言葉なのだ
(2) 「[生活を創るキーワード辞書]を創る」という提案
たしかにそうです。言葉に対する理解度は、思考力を決めます。思考力を高めるためには、言葉に対する理解度を高めなければいけません。
では、具体的には、いったいどうしたらいいでしょうか。
今泉氏の提案は、具体的でシンプルです。[生活を創るキーワード辞書]を創ればいい、というのです。
“あなただけの辞書”を創ってやればいいのです。あなただけの辞書とはあなたの生活を創っているキーワード辞書、ということです。
あなたの生活を考えるとき、あるいは、あなたの仕事にとって、これだけは押さえておきたい〈言葉〉は何か、それがあなたのキーワード。409 あなたを創るキーワードを究める
具体的には、どうやればよいのでしょうか。
まず、こんなキーワードを書き出します。個数の目安は、25〜64個です。
書き出してみればわかるけど、それほど多くないはずです。
5Wの問いで、各五つのキーワードを出すとして25個、マンダラ展開で八つずつ、八方向に出しても64個もあれば十分でしょう。
コツは、なるべく〈やさしい言葉〉、知っているつもりでいる言葉をピックアップすることです。
問題は、どんな言葉を選択するか? です。
ピックアップするコツは、意外に〈やさしい言葉〉に注目すること!
知っているつもりでいる言葉こそを、チェックすること。
ピックアップしたら、どうしたらよいでしょうか。もちろん、マンダラを創ります。ひとつの言葉ごとにひとつ、その言葉を中心セルに置いたマンダラを創ります。
そのようにして、あなたにとって重要と思われる〈言葉群〉がセレクトされてきたら、その言葉を理解するためのメモ・マンダラを[書いてミル]のです。
この作業を実際にやることで、「思考の道具」としての「言葉」に対する理解度を高め、思考力を高めることができます。
こうして25から40くらい、最大でも64の、あなただけの〈言葉の辞典〉が完成したときに、あなたの、モノを見る目、モノの理解度、思考力などが、どれほど深まってくるか、やってみれば分かる。お、おおッ、と目を見張る。
ともかく一度、書いてみる、これだけのことで、歴然と差が出る。
まさに〈書く〉ということのパワーを知ることができるはずです。
ちょっと補足します。
なぜ、[生活を創るキーワード辞書]を創ると、「言葉」に対する理解度を高めることができるのでしょうか。
それは、マンダラを創ることによって、その言葉を四方八方からミルことができるから、です。
マンダラを書く、マンダラを創るということは、中心のセルに書かれたコトを核としてさまざまなイメージの星雲が、寄せ集まったスガタを創ることなのです。 集まるイメージの破片(?)の間には、特に深い関係がないかも知れませんが、中心のテーマとは深い関係がある、というスガタになっているはずです。周辺の イメージ群の相互関係は、中心のテーマを通じて、くっつき合っているのです。403 よくミルためにはそれを書いてミルことが一番いい
マンダラは、ものを四方八方からミルための〈装置〉そのものなんですね。404 四方八方からイメージを集めるとマンダラになる!
(3) 簡単なまとめ
簡単にまとめます。
- 「言葉」は「思考の道具」だから、「言葉」に対する理解度が思考力を決める。よって、思考力を高めたいなら、「言葉」に対する理解度を高める必要がある。
- 「言葉」に対する理解度を高めるためには、[生活を創るキーワード辞書]を創るのがよい。[生活を創るキーワード辞書]を創ると、自分が「思考の道具」としてよく使う「言葉」が持つ意味に対する理解度を高めることができる。
- [生活を創るキーワード辞書]を創る手順は、以下のとおり。
- 自分の生活や仕事にとって、これだけは押さえておきたい「言葉」を書き出す。知っているつもりの〈やさしい言葉〉に注目するのが、ピックアップのコツ。
- 自分にとって重要な「言葉群」を選び出したら、それぞれの「言葉」を理解するために、ひとつの言葉ごとにひとつのマンダラを創る。
3.私の[生活を創るキーワード辞書]の入り口
「[生活を創るキーワード辞書]を創る」という提案は、「マンダラは、言葉だけだから味気ない」という私の誤解を解消してくれました。
いくぶんくり返しになってしまいますが、この提案がどのように私の誤解を解消してくれたのかを説明します。
(1) 「言葉」という思考の道具の彩りは、「言葉」に対する理解度によって決まる
私の誤解は、いくぶん単純化すると、次の図式で説明できます。
- 「言葉」という思考の道具=彩りがない → イメージを活かした思考に向かない
- 「絵や図」という思考の道具=彩りがある → イメージを活かした思考に向く
誤解の原因は、この図式の中の、
- 「言葉」という思考の道具=彩りがない
の部分、特に「=」の部分です。
なぜなら、この「=」は、思考の道具の彩りが、「言葉」や「絵や図」という思考の道具の種類によって客観的に決まっていることを前提としていますが、実際はそうではないからです。
実際は、思考の道具の彩りは、道具を使う人の、その道具に対する理解度によって変わります。思考の道具が「言葉」であれ「絵や図」であれ、その思考の道具を使う人が、その思考の道具を、どの程度理解しているかによって、その思考の道具は、彩り豊かな道具にもなれば、彩りの乏しい味気ない道具にもなります。
たとえば、「ソーシャル時代のセルフブランディングはどうあるべきか?」というテーマを考えるとします。
「言葉」という道具を使うなら、「ソーシャル時代」や「セルフブランディング」、あるいは「価値」といった言葉群を、どう理解しているかが、その思考の彩りを決めます。
これらの言葉群に対する理解度を離れて、一般的に、「言葉」という思考の道具に彩りがあるかないか、を考えても、意味がありません。
(2) 言葉を、彩り豊かな「思考の道具」へと、鍛える
「言葉」という思考の道具の彩りは、客観的に決まっているわけではない。思考の道具としての「言葉」を使う人が、その「言葉」に対して、どんな理解を持っているかが、その「言葉」の思考の道具としての彩りを決める。
これが、「[生活を創るキーワード辞書]を創る」という提案の底にある考え方です。
これまで、私は、「自分の言葉に対する理解度や能力は、そんなに低くない」と考えていました。私にとって、文章の読み書き能力を鍛えることはかなり優先順位の高い営みですし、今の仕事は、本業も副業も文章の占める割合が高い仕事です。自分の言語能力はそこそこ大丈夫だろう、と自分で考えていました。
ところが、この考えは、少々甘かったようです。「[生活を創るキーワード辞書]を創る」という提案を知り、そして実際に創ろうとしてみたとたん、すぐに痛感しました。普段自分がよく使う言葉に対する認識が、いかにふわふわしたものなのかを思い知らされました。
でも、逆に言えば、うれしいことでもあります。「言葉」を鍛えることによって、思考力を高めていく余地が、自分にはたくさん残されている、ということだからです。
そんなわけで、さっそく[生活を創るキーワード辞書]を創りはじめたところ、こんなひとつのマンダラが生まれました。
このマンダラが、私の[生活を創るキーワード辞書]の入り口です。
これからじっくりと時間をかけて、自分の[生活を創るキーワード辞書]を創る作業に取り組もうと思います。そして、自分にとって大切な存在である「言葉」を、彩り豊かな「思考の道具」へと鍛えていきます。
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