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iPS細胞・パソコン・自分のブログ。精度の高い試行錯誤を積極的に繰り返すための仕組み。

公開日: : ブログ, 知的生産

1.クローズアップ現代を見て、iPS細胞って本当にすごいんだ、と実感した話

先日放送されたクローズアップ現代「iPS細胞が変える"薬の常識”」に、私は衝撃を受けました。

iPS細胞が変える“薬の常識” – NHK クローズアップ現代

番組の内容は、上のリンク先で確認できますので、ぜひぜひ読んでいただければと思うのですが、概要、こんな感じです。

これまで薬を開発するときは、マウスなどの実験動物で、効果を試してきた。しかし、マウスと人間はちがうので、マウスで効果があっても、人間に効果が出るとは限らない。そのため、マウスなどの実験動物で試験した後、治験などの形で、人間に効果が出るかを確かめるプロセスが必要だった。

これに対して、iPS細胞を使えば、iPS細胞を培養することで、体の外で病気そのものの状態を再現した細胞を用意できる。この病気の状態を再現した細胞は、その病気にかかっている人間の細胞をもとにしたものなので、マウスなどの実験動物よりも、精度の高い実験結果が得られる。また、この方法なら、一度にたくさんの、病気の状態を再現した細胞を作ることができるので、いろんな物質を試すことが簡単である。

iPS細胞を用いることで、これまでにない新しい製薬の手法が可能になった。これによって、薬の開発のマインドセットが、大きく変わるはずである。

この話を知って、私は、iPS細胞って本当にすごいんだ、と実感しました。

もちろん、これまでも、iPS細胞が世紀の大発見だという認識はありました。なにせノーベル賞ですし。でも、私の認識は、「iPS細胞によって、再生医療が大きく進化する。」程度の認識に過ぎませんでした。未来を切り開く技術、という認識です。

でも、クローズアップ現代を見て、そうじゃないとわかりました。iPS細胞のインパクトは、未来の再生医療を切り開くことにとどまりません。iPS細胞は、人間の体に関する分野の全体に、パラダイムシフトを引き起こすほど大きなインパクトを与えるものでした。

2.リスクがなく精度の高い試行錯誤を可能にする仕組み

(1) iPS細胞を薬の開発に使うことの本質は、精度の高い試行錯誤を積極的に繰り返せるようになったこと

iPS細胞を薬の開発に使うという話に自分が感じた衝撃を、もう少し考えてみました。その結果、私が衝撃を受けたポイントは、「精度の高い試行錯誤を、気兼ねなく、ローコストで、積極的に繰り返すことが可能になったこと」だという結論に至りました。

どういうことでしょうか。

薬を開発するには、効果の有無を実験で確認する必要があります。これまでのパラダイムでは、薬の効果を確認するための実験は、マウスなどの実験動物を使ったものでした。つまり、大きく言えば、

  • (1) 病状を再現したマウスを用意する
  • (2) マウスの実験で、薬の効果の有無を確認する
  • (3) マウスで効果を確認できた薬を、人間で検証する

という3ステップです。

しかし、iPS細胞は、ここを変えました。iPS細胞によって、人間の病状を人間の体の外で再現した細胞を作り、その細胞を使って薬の効果の有無を確認する、という手法が可能になりました。つまり、大きく言えば、

  • (1) iPS細胞を培養して、体の外で、人間がかかる病気そのものの状態を再現した細胞を用意する
  • (2) 病状を再現した細胞で、薬の効果の有無を確認する
  • (3) 人間で検証する

という3ステップです。

マウスを使った実験と、iPS細胞を使った実験とでは、大きなちがいがあります。パラダイム転換です。特に、次の2点で、大きなちがいがあります。

ひとつは、実験をするための素材を準備する手間のちがいです。マウスの場合、病状を再現したマウスを用意する必要がありました。これに対して、iPS細胞の場合、用意するのは病状を再現した細胞です。

(私は素人なのでよくわからないのですが、想像するに、)細胞は一度にたくさんできますので、病状を再現したマウスを用意できる数と、病状を再現した細胞を用意できる数には、桁がちがうほどの差がありそうです。

もうひとつは、実験の精度のちがいです。マウスはしょせんマウスなので、人間ではありません。マウスに効果があっても、人間に効果があるとは限りません。でも、iPS細胞で作った細胞は、人間の細胞です。まさに人間の体の中にある病気を抱えた細胞と同じものを、人間の体の外で再現できます。

(この点も正確なことはよくわからないのですが、想像するに、)マウスよりもiPS細胞の方が、ずっとずっと精度の高い実験結果が得られそうです。

つまり、マウスを使った実験は、実験をするための素材を用意するのが大変な上に、その素材を使った実験の精度は高くありません。精度の低い試行錯誤を、コストを気にしながら、慎重に重ねていく必要がありました。

これに対して、iPS細胞を使った実験は、一度作ってしまえば実験をするための素材が大量に手に入る上に、その素材を使った実験の精度はとても高いわけです。iPS細胞によって、精度の高い試行錯誤を、気兼ねなく、ローコストで、どんどん積極的に繰り返すことが可能になりました。

精度の高い試行錯誤を、気兼ねなく、ローコストで、何度も何度も繰り返すこと。これが可能な否かで、薬の開発プロセスは、雲泥の差があるように感じます。

素人考えではありますが、このパラダイムシフトによって、薬の開発スピードは、大きく上がるにちがいないと、私は確信しました。

(2) パソコンが普及して、プログラミングにおいて、リスクがなく精度の高い試行錯誤が可能になった

このiPS細胞と薬の開発の話を聞いて、私が連想した話があります。パソコンが普及したこととプログラミングとの関係です。

文脈はちがうのですが、『ウェブ進化論』に、次のような記載がありました。

ゲイツが大学に入る頃のコンピューティング環境がどんなものだったか、身体がよく覚えている。

プログラムを書くと、その一行ごとに紙カードを一枚作るのだ。放課後、紙カード穿孔機が二〇台くらい並ぶプレハブの穿孔機小屋に行って順番を待つ。紙カードの束を背負って地下室に降りていく。作ったプログラムをコンピュータに通してもらうために、大学生たちに混ざって順番を待つ。カードリーダーがプログラムを読み込む。大型プリンタの前で出力を待つ。結果がパタパタと印刷される。どきどきしながら読む。紙カードを作ったときのタイプミスがあれば、コンピュータは無情にもエラーメッセージしか出さない。そうなればまた穿孔機小屋に逆戻りだ。location 2418

そんなふうに来る日も来る日も、穿孔機小屋と地下室のあいだを往復していた。いつも順番を待ってばかりいた。location 2426

「えっ、何? コンピュータを家で持つことができるの?」

「それで、好きなときに好きなだけ、使うごとにお金なんてかからずにコンピュータが使えるの?」

当時、コンピュータに熱中した世界中の少年たちは、ゲイツと同じように、パーソナルコンピューティングという時代の息吹に感動したのである。location 2427

マイクロソフトが生まれて三〇年。その間に信じられないほど技術が進歩した。一九七〇年代の「共有財産としての大型コンピュータ」の何億倍、何十億倍という性能のコンピュータを、私たちは今一〇万円足らずで買うことができ、コンピュータを一人で何台も私有する時代になった。location 2432

プログラミングをするには、自分が書いたプログラムがちゃんと動くのかを、コンピュータでテストしなければいけません。でも、Microsoftが生まれる以前、コンピュータは、とても高価なものだったので、1台のコンピュータを、何人も何十人もで共有していました。そのうえ、当時は、コンピュータ自体も、プログラムをテストするための道具も、今のパソコンと比べたら何億分の1の機能や性能しか持っていませんでした。

こんな事情だったので、当時、プログラミングをする人は、自分が書いたプログラムを、気楽にテストすることができませんでしたし、そのテストの精度もそれほど高いとは言えませんでした。

ところが、今や、十分な機能を持つパソコンは、そこら中にあふれています。ひとりで何台も所有していても何の不思議もありません。

その上、プログラムのテストの精度を高めるために使えるアプリケーションや試験機も豊富です。設定さえすれば、自分が書いたプログラムが、どんな環境でどのように動くのかを、かなり高い精度でテストできます。

つまり、パソコンが普及したことは、プログラミングとの関係で、「精度の高い試行錯誤を、気兼ねなく、ローコストで、何度も何度も積極的に繰り返すこと」を可能にしました。

そして、(これも素人考えではありますが、)これによって、世の中のプログラミングのレベルが上がるスピードは、格段に高まったはずです。

3.自分のブログは、個人的な知的生産の進化の速度を上げる

(1) 「精度の高い試行錯誤を、気兼ねなく、ローコストで、何度も何度も積極的に繰り返すことが可能な仕組みを用意すると、物事が進化するスピードが上がる」

  • iPS細胞は、薬の開発との関係で、を試精度の高い試行錯誤を、気兼ねなく、ローコストで、何度も何度も積極的に繰り返すことを可能にした。これによって、薬の開発スピードは上がるだろう。
  • パソコンは、プログラミングとの関係で、精度の高い試行錯誤を、気兼ねなく、ローコストで、何度も何度も積極的に繰り返すことを可能にした。これによって、プログラミング全体が進化するスピードは、大きく上がったのではないか。

これが、ここまでで考えたことです。

しかし、私は、製薬会社で働いているわけでもないですし、少なくとも今のところは、プログラミングもしていません。なので、このことを考察しただけでは、知的好奇心が満たされる以上の意味合いは、何もありません。

そこでもう少し進めて、iPS細胞と薬の開発、パソコンとプログラミングからの考察を抽象化してみます。

すると、「精度の高い試行錯誤を、気兼ねなく、ローコストで、何度も何度も積極的に繰り返すことが可能な仕組みを用意すると、物事が進化するスピードが上がる」となります。

これを支える具体的な事例は、今のところ、iPS細胞&薬開発とパソコン&プログラミングという2つの事例だけです。しかし、抽象的に考えても、精度の高い試行錯誤を気兼ねなく積極的に繰り返せば、物事の進化のスピードが上がる、という関係性は合理的なので、これはそれなりに正しいのではないかと考えています。

(2) 個人的な知的生産における、「精度の高い試行錯誤を積極的に繰り返すための仕組み」とは?

では、これを自分に関する領域に取り入れることはできないでしょうか。特に、私の関心事は個人的な知的生産なので、この領域に取り入れることはできないでしょうか。

このために考えるべき問いは、次の問いです。

  • 個人的な知的生産において、「精度の高い試行錯誤を積極的に繰り返すための仕組み」とは、どんな仕組みなのか?
  • どんな仕組みを用意すると、個人的な知的生産が進化するスピードがあがるのか?

結論だけを先に書くと、今のところの私の答えは、「自分のブログ」です。

「自分のブログ」は、「個人的な知的生産において、精度の高い試行錯誤を、気兼ねなく、ローコストで、何度も何度も積極的に繰り返すことを可能にする仕組み」です。少なくとも、私は、この「単純作業に心を込めて」というブログを、そのような仕組みとして捉えています。私は、この「単純作業に心を込めて」という自分のブログで試行錯誤を繰り返すことで、自分の個人的な知的生産を進めるスピードを上げることができました。

なぜ、「自分のブログ」は、個人的な知的生産において、「精度の高い試行錯誤を積極的に繰り返すための仕組み」として機能するのでしょうか? また、それはどうやって?

これはまた別の機会に。

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