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WorkFlowy基本5原則【第4原則】「トピック」を手で動かして秩序をつくり、ひとつの秩序をいろんな視点で表示する

公開日: : 最終更新日:2016/05/05 WorkFlowy

1.はじめに

WorkFlowyは、他の道具にはあまり見られない特徴を持つ、ちょっと変わった道具です。このWorkFlowyの変な特徴は、うまく活かせばWorkFlowyの力を引き出してくれますが、下手をするとWorkFlowyになじめない元凶になりかねません。

そこで、WorkFlowyの変な特徴をうまく活かすにはどうしたらいいんだろうか、という観点から、「WorkFlowyの基本5原則」というものを考えてみました。

次の5つです。

WorkFlowyの力を引き出す使い方 WorkFlowyの基本5原則の概要と予告

今日は、【第4原則】「「トピック」を手で動かして秩序をつくり、ひとつの秩序をいろんな視点で表示する」です。

第3原則は、「アウトライン」を流動的に変化させ続けることを要求します。「アウトライン」を構成するのは「トピック」なので、「アウトライン」を流動的に変化させ続けるためには、「トピック」を動かす必要があります。ところが、WorkFlowyは、デジタルツールであるにもかかわらず、「トピック」を自動的に動かして秩序を整えるための機能を、まったく持っていません。WorkFlowyの「アウトライン」は、手で動かして組み立てるべきものです。ひとつひとつ手作業で「トピック」を動かすことによってのみ、「アウトライン」は流動的に変化します。

一見、不合理です。でも、「トピック」ひとつひとつを手で動かさなければいけないことには、実は、大きな意義があります。それは、自分をくぐらせることができる、ということです。

また、WorkFlowyは、こうして手作業で組み立てた「アウトライン」の秩序を、いろんな視点で表示することができます。Zoomによる特定場所の拡大表示、折りたたみによる全体構造の俯瞰など、いろんな視点による表示については、デジタルツールであることの強みを存分に発揮しています。ひとつの秩序をいろんな視点で表示することによって、ただひとつの秩序でありながら、場面場面に対応した多くの価値を生み出すことができます。

これが、WorkFlowy基本5原則の第4原則、「「トピック」を手で動かして秩序をつくり、ひとつの秩序をいろんな視点で表示する」です。

2.【第4原則】「トピック」を手で動かして秩序をつくり、ひとつの秩序をいろんな視点で表示する

(1) 「アウトライン」の流動的な変化は、手作業で「トピック」を動かすことによって

a.WorkFlowyの「トピック」は、動かない

WorkFlowyによる知的生産は、ただひとつの「アウトライン」から個別具体的な目的に対応したたくさんの一部分を「切り出す」というあり方をしています。第2原則です。

そのひとつからたくさんの一部分を「切り出す」ことができるような、ただひとつの「アウトライン」を実現するには、その「アウトライン」を流動的に変化させ続けなければいけません。第3原則です。

では、WorkFlowyのただひとつの「アウトライン」を流動的に変化させ続けるには、どうしたらよいのでしょうか。

WorkFlowyの「アウトライン」は、「トピック」によって構成されています。もっといえば、WorkFlowyの「アウトライン」を構成するのは、「トピック」だけです。「トピック」を階層構造に組み立てたものが、「アウトライン」なのですから、WorkFlowyの「アウトライン」を流動的に変化させ続けるには、「トピック」を動かすしかありません。

であれば、「トピック」を動かすには、どうしたらよいのでしょうか。

WorkFlowyは、この2015年に存在するクラウドサービスです。シンプルに見える画面の向こうには、テクノロジーの粋が集まっています。中でも、「トピック」を動かすことは、WorkFlowyの本質的な機能です。であれば、「トピック」を動かすことについて、WorkFlowyが画期的な方法を用意していても、おかしくはありません。

ところが、「トピック」を動かすことについて、WorkFlowyの回答は、シンプルです。

「手で動かしてください。」以上。

更新時で「トピック」を自動で並べ替える機能は? ありません。

検索条件に合致した「トピック」だけを抽出して新しい場所に生成する機能は? ありません。

他のクラウドサービスと連携して、何らかの情報を自動的に追記する機能は? ありません。

WorkFlowyの「トピック」は、ユーザーが手を動かさないかぎり、微動だにしません。

WorkFlowyの「トピック」は、自動では動かないのです。

b.自分をくぐり抜けた秩序

「トピック」を自動的に動かせないことは、一見不合理ですし、致命的な機能不足のようにも思えます。

比較的シンプルなツールであるテキストエディタだって、テキストファイルを更新日で自動並べ替えをしたり、grep検索で特定の条件に合致する部分だけを別ファイルに保存することができます。

ましてや、Evernoteなら、ノートの検索や並べ替えは自由自在であるうえに、メール転送やiftttとの連携を活用すれば、自動的に情報を蓄積し続ける仕組みを組み立てることができます。たとえば、ToodledoやTodoistの完了タスクをiftttで1日1ノートに蓄積し、電子業務日誌が勝手に完成するシステムを組むことだってできるのです。

なぜ、WorkFlowyは、「トピック」を自動で動かす機能を持っていないのでしょうか。

以下は私の勝手な推測なのですが、私は、WorkFlowyが「トピック」を自動で動かす機能を持っていないのは、「あえて」だと考えています。

「あえて」だと考える理由は、「つけようと思えば簡単だから」です。たとえば、WorkFlowyの「トピック」は、そのひとつひとつが、更新時情報を持っています。ですから、「トピック」を更新時で並べ替える機能は、つけようと思えば簡単なはずです。

にもかかわらずなぜ「あえて」つけていないのでしょうか。これも推測の域を出ませんが、自分の意図にもとづき、自分の手と頭を動かすことで、「アウトライン」を組み立てることを大切にしているのではないかと思っています。

WorkFlowyの「アウトライン」に存在する秩序は、更新日やテキスト情報によって自動的に生成された秩序ではありません。ユーザーが何らかの意図を持って、自分の手と頭を動かして手作業で組み立てた秩序です。WorkFlowyは、このような、自分をくぐり抜けた秩序からこそ、価値が生み出される、と考えているのではないかという気がします。

(2) ひとつの秩序を、いろんな視点で表示する

a.秩序はひとつ

WorkFlowyの「アウトライン」に存在する秩序は、自動的に生成されることはなく、手作業で組み立てるべきものです。これを少し別の観点からいえば、「WorkFlowyの「アウトライン」に同時に存在する秩序は、ただひとつである。」となります。どういうことでしょうか。

更新日や内容によってデータを自動的に並べ替える機能を持っているツールは、個々のデータを、いろんな基準で並べ替えることができます。たとえば、WindowsやMacのOSなら、更新日順・ファイル名・ファイルの種類などでの並べ替えです。

そして、いろんな基準で並べ替えることができるということは、同時に複数の秩序を持っている、ということでもあります。たくさんのファイルをどのように並べ替えるかは、その時点での表示の仕方に過ぎません。そのいずれかの秩序が絶対というわけではありません。更新日順・ファイル名・ファイルの種類など、いろんな秩序を同時に持っている、ということです。

Evernoteも同じです。ノートの作成日、ノートの更新日、ノートタイトル、関連度順など、いくつかの秩序でノートを並べ替えることができ、どれかひとつの基準を絶対視する枠組みにはなっていません。Evernoteのノート群の中にも、同時に複数の秩序が存在します。

これに対して、WorkFlowyでは、並び順がひとつに決まっています。WorkFlowyの「アウトライン」には、順序と階層という2つの次元があり、すべての「トピック」が、この2つの次元で特定されるひとつの場所に位置づけられています。とりわけ、順序の次元については、ひとつの順番に存在する「トピック」は、ひとつだけです。

そして、「トピック」は、手で動かさないかぎり、勝手に動くことはありません。ということは、WorkFlowyの「アウトライン」が同時に持つ秩序はただひとつだ、ということです。

「トピック」の数がいくつでも、これは変わりません。WorkFlowyを使い始めたばかりで「トピック」の数が10や100のときも、年単位で使い続け、「トピック」の数が1万や10万を超えたときも、WorkFlowyに存在する秩序は、ただひとつです。

たとえば、今、私のWorkFlowyの「アウトライン」には、おそらく15万を超える「トピック」が存在しています。そして、順序をひとつに決めれば、「トピック」を特定することが可能です。1番目の「トピック」は『私の教科書』トピックに特定されます。同じように、100番目、1000番目、15万番目の「トピック」も、それぞれひとつに特定されます。これら15万を超える「トピック」群は、ただひとつの秩序しか持っていません。

b.視点はいろいろ

WorkFlowyに存在する秩序はただひとつですが、にもかかわらず、WorkFlowyは、そのひとつの秩序で、たくさんの知的生産のために機能します。なぜでしょうか。

それは、WorkFlowyが、このただひとつの秩序を、いろんな視点で表示するための機能を備えているからです。この表示する視点の切り替えに関して、WorkFlowyは、テクノロジーの粋を存分に結集しています。

まず、好きな場所を好きな倍率で拡大表示する機能が、Zoomです。巨大なアウトラインの特定部分を、アリの目で見る機能といえます。Zoomによって表示した「アウトライン」の一部を、「リスト」と呼びます。

次に、「アウトライン」や「リスト」の骨組みをわかりやすく表示するための機能が、折りたたみと展開です。骨組みを透視する視点ともいえますし、鳥の目で俯瞰するともいえます。

Zoomがあるからこそ、自分のすべてが同居するただひとつの「アウトライン」の中で、今この瞬間に表示したい一部分だけを見ることができます。

また、折りたたみと展開があるからこそ、鳥の目で全体を俯瞰し、骨組みを透視することで、全体と部分の関係を把握できます。

さらに、Zoomと折りたたみ&展開を組み合わせることで、全体と部分の関係把握を、好きなレベルで行うことができます。全体の中の一部分における全体と部分の把握、みたいなややこしいことが、何もむずかしいことを考えずに、自然と実現されるわけです。

このように、WorkFlowyは、ひとつの秩序を表示する視点の切り替えの場面では、デジタルツールであることの強みを存分に活かしています。ここも、WorkFlowyの設計思想が感じられます。

3.まとめ

【第4原則】

「トピック」を手で動かして秩序をつくり、ひとつの秩序をいろんな視点で表示する

「アウトライン」の秩序は、「トピック」を手作業で動かし、自分で組み立てるべきものである。

そのような自分をくぐり抜けたただひとつの秩序を、テクノロジーを活かして、様々な視点を切り替えながら表示する。

【WorkFlowy基本5原則】

WorkFlowy基本5原則は、次のとおりです。

第1原則を前提に考えてみると、「トピック」移動と「アウトライン」構築をすべて手動でやらせるという第4原則のすごみが浮かび上がる気がします。

お知らせ

このエントリは、その後、加筆修正などを経て、書籍『クラウド時代の思考ツールWorkFlowy入門』の一部分となりました。

書籍『クラウド時代の思考ツールWorkFlowy入門』の詳細目次と元エントリは、次のとおりです。

『クラウド時代の思考ツールWorkFlowy入門』の詳細目次と元記事の紹介

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