単純作業に心を込める、3つの方向性
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単純作業に心を込める
目次
1.はじめに
私は、単純作業に心を込めることを、自分の行動指針にしています。単純作業に心を込めることからたくさんの恩恵を受けているので、どのようにすればもっと上手に単純作業に心を込めることができるか、いろいろと試してきました。
その結果、私は、単純作業に心を込めるやり方には、3つの方向性があるのではないかと考えるに至りました。それは、次の3つです。
- 単純作業の繋がる先を見据える方向性
- 単純作業を片付ける能力を鍛える方向性
- 単純作業そのものを丁寧に慈しむ方向性
2.単純作業の繋がる先を見据える方向性
(1) 単純作業の繋がる先を見据える
ひとつめの方向性は、「単純作業の繋がる先を見据える」という方向性です。
多くの単純作業は、何かのための一部分です。ですから、多くの単純作業は、何か別のものに繋がっています。そして、単純作業が繋がる先のものは、多くの場合、その単純作業よりも、大きな価値を持っています。つまり、単純作業が繋がる先のものは、概して、単純作業そのものよりも、多くの人に影響を与えたり、多くの成果を生み出したりします。
そこで、単純作業の繋がる先にある、より大きな別の何かを見据えることによって、単純作業に心を込めることができます。今自分がやっていることは単純作業に過ぎないけれど、この単純作業によって、もっと大きな価値が生まれるんだ、と思って、単純作業に取り組む。この心持ちで単純作業に心を込めることが、ひとつめの方向性です。
(2) Mr. Childrenの『彩り』
Mr. Childrenの歌で、『彩り』という歌があります。あの歌は、この方向性を歌っているのではないかと思います。ひとつの解釈として。
『彩り』には、こんな歌詞があります。
僕のした単純作業がこの世界を回り回って
まだ出会ったこともない人の笑い声を作っていく
単純作業が繋がっていく先を想い、そこに誰かの笑顔があると感じることで、目の前の単純作業に心を込めることができる。それが小さな幸せになる。このことを、とてもきれいに表現した言葉だと思います。
3.単純作業を片付ける能力を鍛える方向性
(1) 単純作業を片付ける能力を鍛える
ふたつめの方向性は、「単純作業を片付ける能力を鍛える」という方向性です。
単純作業という作業を片付けるにあたっては、どれくらい上手に片付けられるか、というレベルがあります。たとえば、書籍の一部をコピーする、という単純作業にしても、まっすぐにコピーできるか、とじ目部分をどれくらいきれいにコピーできるか、スピードと正確さなどの点で、作業レベルの違いを観念することができます。
単純作業を繰り返せば、その単純作業のレベルは、少しずつ向上します。繰り返し行うことによって、単純作業を片付ける能力が鍛えらるためです。
単純作業を片付ける能力を鍛えることも、成果物としての単純作業のレベルが向上することも、どちらも、単純に、素朴に、うれしいことだと思います。ここに喜びを感じることができるなら、逆に、単純作業を行うとき、この単純作業を行うことで、単純作業を片付ける能力を鍛えているんだと自覚することによって、単純作業から喜びを感じることができます。
こうすることで、単純作業に心を込める、という方向性があるのではないかと思います。
(2) 単純作業を片付ける能力の集積は、仕事力の必要条件
単純作業を片付ける能力といわゆる仕事力は、たぶん、繋がっています。
仕事の多くは、単純作業の組み合わせです。個々の単純作業のレベルは、単純作業が組み合わさって構成される仕事のレベルに、影響を与えます。単純作業を片付ける能力が低く、個々の単純作業のレベルが低ければ、それを組み合わせることによって構成される仕事のレベルも、高くはなりません。
もちろん、単純作業を片付ける能力だけ高くても、仕事をするには、十分ではありません。単純作業を組み合わせたり、全体を見て方向付けをしたり、そういった能力は、もちろん必要です。
しかし、単純作業を片付ける能力が低ければ、高いレベルの仕事を実現することはできません。単純作業を片付ける能力は、仕事力の必要条件ではないかと思います。
4.単純作業そのものを丁寧に慈しむ方向性
(1) 単純作業そのものを丁寧に慈しむ
みっつめの方向性は、「単純作業そのものを丁寧に慈しむ」というものです。
何かの役に立つからとか、自分が成長するからとか、そういうこととは関係なしに、そのときに行っている単純作業そのものを味わうことを目的として、その単純作業を丁寧に慈しみます。
この方向性は、快適な単純作業にしか使えないわけではありません。退屈な単純作業や、場合によっては苦しい単純作業にも、適用可能だと思います。いやな単純作業も、そのものを丁寧に慈しめば、何となく、心地よい気分になります。
(2) 単純作業の行い方が、心のあり方に影響を与える
私は常々感じているのですが、ある単純作業を丁寧に行うか、雑に行うか、という行い方は、そのときの自分の心のあり方に、大きな影響を与えます。どんなちょっとした動作であっても、このことは当てはまると思います。
たとえば、ペットボトルのキャップを開けて、お茶を飲むとします。顔をペットボトルに向けて、ペットボトルを目でしっかりと捉え、左手でペットボトルの胴体をつかみ、身体の前に持ってくる。そして、右手をペットボトルのキャップに近づけて、右手の親指と人差し指と中指でキャップを包み込み、特に親指に力を入れて、キャップを時計と反対回りにくるくると回す。キャップが外れたら、そのままそのキャップを右手で持ち上げ、それと同時に左手を上方向に動かして、口の前にペットボトルを持ち上げる。それにあわせて自分の口を少し開けて、ペットボトルの口と自分の口とを接触させる。左手をさらに上げると、ペットボトルの中のお茶が口の中に流れ込むので、口でそのお茶を受け止めて、のどの奥へと流し込む。……
お茶を飲むという単純作業を、丁寧に行うと、お茶を飲むという何でもない単純作業によって、少し心が落ち着きます。逆に、雑な行い方でお茶を飲むと、少し心が波立ちます。
単純作業そのものを丁寧に慈しむことによって、そのときの自分の心のあり方を、整えることができます。
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