「夢のドア」とタスクのドア。GTDの思想
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仕事の方法論
1.『宇宙兄弟』 #222 「夢のドア」
『宇宙兄弟』は、現在進行形の漫画の中では、1,2を争う好きな漫画です。
好きなポイントはいろいろとあるのですが、魅力のひとつは、説教くさくも暑苦しくもなく、さわやかなエピソードに乗せて、夢へのあこがれや夢に向かって進むことの魅力を表現していること、です。
先日読んだ『宇宙兄弟』23巻にも、そんな『宇宙兄弟』の魅力を存分に発揮する一話がありました。#222「夢のドア」です。
ブライアンという宇宙飛行士が、少年少女に語りかけるエピソードです。以下、ブライアンの言葉を引用します。
人の人生にはいくつもの“夢のドア”がある
人は……例えば「宇宙へ行く」みたいな大きな夢を持った時
目の前に現れたバカでかいドアに畏縮して
向こう側へ行くことを諦めちまう
「開けられるわけがない」――ってな
だがビビることはないんだよ
本当ははじめから―――
そんな“バカでかいドア”なんてものはない
小さなドアが
いっぱいあるだけだ
“成長のドア”
“発見のドア”
“勝利のドア”
“賞賛のドア”
他にもいろいろ見つかるだろう
そしてその小さなドアを開けるたび
君らの夢がひとつずつ叶っていくのがわかるはずだ
<略>
君らには
そのためにやるべきことがある
手探りでも何でもいい
意地でも次のドアに手をのばし続けることだ
そんなことしてる間に――
気付いたら
宇宙遊泳とかしてるかもよ?
2.「夢のドア」とGTD
(1) 共感したポイント
ブライアンの話で、私が共感したのは、「そんな“バカでかいドア”なんてものはない 小さなドアがいっぱいあるだけだ」というところです。
夢を達成することを、ドアを開けるというメタファーで表現するとします。
このとき、通常の発想では、夢の大きさとドアの大きさが比例するイメージを描きます。ドアの大きさは、難易度です。つまり、大きな夢=大きなドア=達成するのがむずかしい、というイメージです。
でも、ブライアンは、そうじゃない、といいます。夢の大きさと対応するのは、ドアの大きさではなくて、ドアの個数なんだ、というのが、ブライアンの考えです。大きな夢に到達するためには、大きなドアがあるわけではなくて、たくさんのドアを開けなければいけないだけ。つまり、夢の大きさと対応するのは、ドアの大きさではなく、ドアの個数です。大きな夢=たくさんの小さなドア=ひとつひとつはそんなにむずかしくないことを、たくさん達成、というイメージです。
たとえば、宇宙飛行士になるという夢は、ばかでかい夢です。でも、そのためにばかでかいドアを開ける必要はありません。小さなドア、それこそ、ちょっと頑張って、あたりまえのことをあたりまえにこなせば開けられるドアを、たくさんたくさん開ける。それによって、ばかでかい夢を達成できる、というのが、ブライアンのアドバイスです。
そして、ブライアンはいいます。たくさんの小さなドアを開けるために必要なのは、ひとつのドアを開けた後で、次のドアに手を伸ばすことです。次のドア、次のドアと手を伸ばすことを続けることが大切だと説きます。
小さなドアを次々と開け続けると、その先に、いつの間にか夢をかなえている自分を発見する、というのが、ブライアン流の夢の叶え方です。
(2) GTD
この話は、それ自体、よい話です。夢に向かってすすむ勇気を与えてくれます。
でも、私は、この話に、夢とか理想とかだけでなく、タスク管理のコツを感じます。
つまり、大きなタスクを片付けるために必要なのは、大きなドアを開けることではなく、小さなドアをたくさん開けることなんだ、ということです。
たとえば確定申告をするというような、ちょっと大きめで面倒なタスクに、ブライアンのスピーチを適用してみましょう。
人は……例えば「確定申告をする」みたいな大きなタスクを抱えたとき、
目の前に目の前に現れたバカでかいドアに畏縮して
向こう側へ行くことを諦めちまう
「確定申告なんて面倒なこと、できるわけない。やりたくない。面倒だ。」――ってな
だがビビることはないんだよ
本当ははじめから―――
そんな“バカでかいドア”なんてものはない
小さなドアが
いっぱいあるだけだ
“領収証を整理するドア”
“e-taxの登録をするドア”
“支払調書を集めるドア”
“電子認証を登録するドア”
他にもいろいろ見つかるだろう
そしてその小さなドアを開けるたび
確定申告という大きなタスクに向かって、ひとつずつ進んでいくのがわかるはずだ
<略>
君らには
そのためにやるべきことがある
手探りでも何でもいい
意地でも次のドアに手をのばし続けることだ
そんなことしてる間に――
気付いたら
口座に還付金が振り込まれるかもよ?
我ながらぴっくりするくらい、全然感動的ではないスピーチです。
でも、このスピーチは、このタスク管理の思想のひとつ、特にGTD的なタスク管理の思想を、よく表現しています。
GTDの思想のひとつは、大きなタスクを抱えたときこそ、その大きなタスクを、ひとつの大きなドアと捉えるのではなく、たくさんの小さなドアと捉えることです。大きなタスクを、いくつかの自分の具体的な行動に分解することが、GTDの思想のポイントです。
大きな夢だけでなく、大きなタスクにも、大きなドアではなくて、いくつもの小さなドア、の考え方は、大きな威力を発揮します。
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