「作品」と「価値」をめぐる時間軸
公開日:
:
単純作業に心を込める
少し前に、これを書きました。
ここに書いた「「作品」を作り終えた後、価値を見い出される」のことを、ブログからは離れて、もう少し考えてみます。
●
自分が生み出したものは、どのようなものであれ、自分の「作品」です。
今夜の夕食や、誰かに宛てた手紙のような、形あるものは、もちろん自分の「作品」です。
友達と演奏した曲、子どもに向けた絵本の読み聞かせ、今日の仕事の窓口におけるお客様対応のような、形のないものも、ある意味で、自分の「作品」です。
せっかく生み出す自分の「作品」なので、そこに何らかの「価値」があるとよいと思います。
ですが、自分の「作品」に価値があるか否かを決めるのは、自分ではありません。決めるのは、自分以外の誰かです。
自分以外の誰かが、自分が生み出したその「作品」に、何らかの「価値」を見い出したとき、その「作品」は「価値」を獲得します。つまり、「作品」の「価値」とは、自分以外の誰かに見い出されることによって、生まれるものです。
●
「作品」の「価値」は、自分以外の誰かによって見い出される。
ここに時間軸を入れて考えてみましょう。
まず、同時です。「作品」を生み出すことと、「価値」を見い出されることとが、同時に生じます。
たとえば、講演です。講演の本番に、どのようなことをどのように話すか。こんな自分のふるまい全体が、自分の「作品」です。
講演という「作品」は、生み出されるのと同時に、参加者という受け手に届きます。参加者はその場でその講演という「作品」に何らかの「価値」を見い出します。(もちろん、なんの「価値」も見い出さないことだって、ありえます。)
つまり、講演は、「作品」を生み出すことと、「価値」を見い出されることとが、同時に生じるわけです。
次に、「作品」を作り終えた後で、「価値」を見い出される、という順序です。
前に書いたように、ブログは、この一例でした。ブログ記事という「作品」を書き終えた後で、そんな既に生み出された「作品」に対して、誰かが「価値」を見い出してくれます。(もちろん、誰にも「価値」を見い出されないことだって、ありえます。)
つまり、ブログは、「作品」を作り終えた後で、「価値」を見い出される、という順序です。
ここまでに、
- 「作品」と「価値」が同時:「作品」を生み出す=「価値」を見い出される
- 「作品」が先、「価値」が後:「作品」を生み出す→「価値」を見い出される
の2つを見てきました。
論理的にいえば、もうひとつあります。「作品」を生み出すよりも前に、「価値」を見い出される、という順序です。
一見、この順序はなさそうです。「価値」を見い出そうにも、対象である「作品」が存在していないのですから、よくわかりません。
しかし、ありえます。
それは、
- これから生み出される予定の「作品」に期待される「価値」が、まず、決まる。
- その後、その期待された「価値」を実現すべく、「作品」が生み出される。
という順序です。
たとえば、クライアントからの注文にもとづき、システムを組んで納入する場合。最初に、クライアントが求める機能や要件が定まります。つまり、クライアントが期待する「価値」です。そして、その後、その期待された「価値」を実現すべく、システムという「作品」が生み出されます。
つまり、最初に何らかの「価値」を期待され、その後、その期待された「価値」を実現すべく「作品」が生み出される、という順序は、わりと幅広く存在しています。
●
およそすべての社会的な営みには、自分が生み出す「作品」に自分以外の誰かが「価値」を見い出す、という構造があります。しかし、この「作品」と「価値」の関係に時間軸を導入すると、そこに、3つのパターンが浮かんできます。
自分の「作品」に誰かが「価値」を見い出す、という構造を前提としても、3つのパターンのいずれかによって、異なった特徴を持つように感じています。
スポンサードリンク
関連記事
-
店長からのおすすめの一品
店長自らが、厨房に立ち、同時に、カウンター越しにお客さんとの会話もしてくれるような、そんな居酒屋が、
-
たくさんの研究者によるたくさんの研究の集積の中に、たくさんの多方向の流れが生まれる仕組み
1.はじめに 『これからのエリック・ホッファーのために』を読んでから、「研究」というあり方に、興味を
-
作品群を生み出し続けることの意味
1.はじめに 私にとって、このブログの意義は、「作品群を生み出し続ける」ということにあります。 ま
-
「幸福度」で「幸福な人生」を表現するときの4パターン(合計値派・最大値派×主観派・客観派)
1.「幸福度」で「幸福な人生」を表現する 幸福とは何か、というのはすごく難しくて微妙な問題なので、
-
頭が混乱したときに備えて、具体的な行動を決めておく。『ねじまき鳥クロニクル』岡田亨の基本技
1.岡田亨の基本技 『ねじまき鳥クロニクル』の主人公の「僕」、岡田亨は、頭が混乱すると、アイロンがけ
-
単純作業に心を込めるタスク管理
1.「単純作業に心を込めて」という行動指針とタスク管理 「単純作業に心を込めて」というこのブログの
-
ひとつの文章によってではなく、一連の文章群によって、何かを伝える
1.自分のブログに書く文章に、整った論理構造を与えやすいのは、表現する対象をシンプルに絞り込むことが
-
単純作業に心を込める、3つの方向性
1.はじめに 私は、単純作業に心を込めることを、自分の行動指針にしています。単純作業に心を込めるこ
-
「小さな作品」をたくさん積み重ねて、大きなメッセージを表現する
「単純作業に心を込めて」の第1戒律は、「作品未満のものを出さない」です。 「単純作業に心を込めて」の
スポンサードリンク
- PREV
- 知的生産のフローが、ずっとそこにあり続けること
- NEXT
- 「ここにいたんだ」体験への合理的戦略