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「単純作業に心を込めて」を、『千夜一夜物語』みたいなブログにしたい。

公開日: : ブログ, 単純作業に心を込める

1.『千夜一夜物語』の構造

(1) 『千夜一夜物語』

『千夜一夜物語』という物語があります。『アラビアン・ナイト』という名称の方が一般的かもしれません。

『千夜一夜物語』は、たくさんの物語を寄せ集めてできた物語です。有名どころでは、「アラジンと魔法のランプ」や「アリ・ババと40人の盗賊」なども、そのうちのひとつの物語です。

でも、『千夜一夜物語』自体がどんな物語なのかは、あんまり知られていないのではないかと思います。

『千夜一夜物語』は、シャーラザッド(シェエラザード)が、命を賭けて、シャーリヤル王に、連夜、物語を語って聞かせる、という物語です。「アラジンと魔法のランプ」も、「アリ・ババと40人の盗賊」も、シャーラザッドがシャーリヤル王に語って聞かせる物語の中のひとつです。

さらに、シャーラザッドが語る物語の登場人物が、物語の中で別の物語を語ることもしょっちゅうです。たとえば、第3夜から始まる「漁師と魔神の物語」では、登場人物である漁師が魔神に「イウナン王の大臣と医師ルイアンの物語」を語ります。さらにさらに、その「イウナン王の大臣と医師ルイアンの物語」では、登場人物である王が「シンディバード王の鷹」という物語を、登場人物である大臣が「王子と食人鬼の物語」という物語を語ります。

『千夜一夜物語』は、物語の中に物語があるような長大な物語を、連夜(版によってちがいますが、200~1001くらい)、シャーラザッドがシャーリヤル王に語り続ける、という物語です。

千夜一夜物語のあらすじ – Wikipedia

(2) 『千夜一夜物語』の枠物語という構造

『千夜一夜物語』は、シャーラザッドの語る物語の中に、小さな物語が出てきて、さらにその物語の中にもっと小さな物語が出てくる、という入れ子構造を持っています。この入れ子構造の物語は、枠物語と呼ばれています。

Wikipediaによれば、枠物語とは、物語の中により小さな物語を埋め込んだ、入れ子構造の物語のことです。

枠物語(わくものがたり、英語:frame story, frame tale, frame narrative)とは、より小さな物語を埋め込んだ入れ子構造の物語のことである。つまり、導入的な物語を「枠」として使うことによって、ばらばらの短編群を繋いだりそれらが物語られる場の状況を語ったりするような物語技法である。小説の場合「額縁小説」とも呼ばれる。

枠物語 – Wikipediaより)

『千夜一夜物語』の場合、シャーラザッドがシャーリヤル王に毎晩物語を語り聞かせるのが外側の物語です。その外側の物語に、シャーラザッドによって語られる物語があり、さらにそれぞれの物語の中に登場人物によって語られるもっと小さな物語がある、という入れ子です。

この枠物語という構造は、ある意味、なかなか便利な構造です。物語の全体的な構造やテーマを保った上で、作者が語りたい物語を、かなり柔軟につけ加えることができます。

Wikipediaにも、こんなことが書いてありました。そうだと思います。

枠物語のフォーマットはさまざまな語り手が自分の好きな話あるいは知っている話を語り、一方で語りたくないものは語らず、他の場所から聞いた話を付け加えることもできるという融通性を持っている。作者が以前から温めていたストーリーを短編にして、長い物語の中に組み込むのにも都合のいい奇想でもある。

枠物語 – Wikipediaより)

『千夜一夜物語』は、もともと、伝承されていたたくさんの物語を編纂してまとめたものです。いちばん外側に配置された、シャーラザッドがシャーリヤル王に連夜物語を語り聞かす、という物語は、あまたの物語をひとつの物語へと統合する役割を担っています。

2.「単純作業に心を込めて」を、『千夜一夜物語』みたいな構造を持つブログに

(1) 全体構造を持たないブログ

a.「単純作業に心を込めて」は、全体構造を持たないブログ

話は変わって、ブログです。もっとも、「ブログとは?」みたいな一般的な話ではなくて、この「単純作業に心を込めて」という特定のブログの話です。

「単純作業に心を込めて」は、ひとりで個人的にやっているブログです。2012年3月くらいに始め、2012年5月にドメインをとり、以後、レンタルサーバー+ドメイン+WordPressという組み合わせで続けています。現時点(2014年9月末時点)の状況は、650個くらいの文章が蓄積されていて、Feedly登録者は500人強、PVは(最近突然増えて)1日4000くらい、といったところです。

「単純作業に心を込めて」を始めるとき、私は、基本的にはボトムアップで書くことにしました。物事に対するアプローチには、トップダウンとボトムアップがあって、私自身はトップダウンが好きなのですが、このブログについてはボトムアップを基本にしよう、と決めました。

ボトムアップのアプローチでブログを続けてきたことは、正解だったと思います。ボトムアップを基本に据えたからこそ、そのときどきの書きたい気持ちを大切にすることもできましたし、ブログに文章を書くことで自分の新しいテーマに出会う、なんてことも多々ありました。なによりも、トップダウンのアプローチでブログをしていたら、ここまでブログを続けることも、600を超える文章を投稿することも、きっとできなかったと思います。

他方で、トップダウンを意識していなかったためか、このブログに含まれる600を超える文章には、全体構造がありません。ブログ全体を貫くテーマやメッセージは、ぜんぜんありません。「単純作業に心を込めて」は、全体構造を持たないブログです。

b.ブログの全体構造に対する懐疑的な見方2つ

「単純作業に心を込めて」が全体構造を持っていないことに、私は、なんとなく物足りなさを感じます。できれば全体構造を与えたいなあと思います。

でも、ブログの全体構造に対しては、懐疑的な見方もありえます。

ひとつは、ブログの全体構造なんて必要ない、という考え方です。

ブログを構成するのは、ひとつひとつの具体的な記事であり、かつ、GoogleやSNSのおかげで、ブログを構成するひとつひとつの記事は、記事単位で全世界に広がります。なので、この考え方は、ブログには全体構造なんて必要なくて、ブログを構成するひとつひとつ記事の質を上げるだけで十分だと考えます。

もうひとつは、ブログに全体構造を与えるのは不可能だ、という考え方です。

ブログに含まれる文章の数は、ひとむかし前のウェブサイトとは、桁が違います。文章の数が10個20個なら、トップダウンできれいに配置して、そこに全体構造を作ることは簡単です。でも、ある程度ブログを続ければ、そこに含まれる文章の数は、すぐに100個200個になりますし、1000個2000個に到達することもありえます。

100個200個や1000個2000個の文章を、トップダウンできれいに配置して、そこに全体構造を与えるなんて、気が遠くなる作業です。ですから、この考え方は、ブログに全体構造を与えるのは不可能だ、と考えます。

(2) 『千夜一夜物語』みたいな枠物語の構造を、「単純作業に心を込めて」に与える

a.『千夜一夜物語』をヒントに、2つの考え方に答える

『千夜一夜物語』は、この2つの考え方それぞれに対して、答えるヒントを与えてくれます。

(a) 全体構造なんて必要ない、わけでもない

『千夜一夜物語』を構成するのは、事実上、ひとつひとつの物語です。シャーラザッドとシャーリヤル王が出てくるのは、全体の1割もありません(1%もないかもしれません)。でも、かといってシャーラザッドとシャーリヤル王の物語という外側の物語が必要ないかといえば、そんなことはありません。

もし、『千夜一夜物語』が、シャーラザッドとシャーリヤル王の物語なしに、淡々とたくさんの物語を平板に並べた物語だったなら、『千夜一夜物語』は、ここまでの強力な物語にはなっていなかったはずです。シャーラザッドとシャーリヤル王の物語という外側の物語は、『千夜一夜物語』に含まれるひとつひとつのたくさんの小さな物語の魅力を、大きくする機能を果たしています。

これと同じように、ブログの全体構造は、ブログに含まれる個々の文章の力を大きくする機能を果たす可能性があります。ブログの全体構造に従って、個々の文章が適切に配置されれば、単に個々の文章が平板に並んでいる状態のときに比べて、ブログに含まれるひとつひとつの文章が発揮する力は大きくなるのではないか、ということです。

私は、ブログの全体構造に、こんなことを期待しています。

(b) 構造によっては、全体構造も不可能じゃない

ブログに全体構造を与えるなんて不可能だ、という考え方に対しても、『千夜一夜物語』は、ひとつのヒントを与えてくれます。

『千夜一夜物語』には、たくさんの物語が含まれています。でも、『千夜一夜物語』に含まれるたくさんの物語は、全体としてひとつの物語にまとまっています。『千夜一夜物語』は、たくさんの物語をうちに抱えつつ、全体構造を実現しています。

なぜ、『千夜一夜物語』は、全体構造を獲得できたのでしょうか。それは、いちばん外側に、どんな物語も吸収できる、懐の深い物語を配置したからです。「シャーラザッドがシャーリヤル王に連夜物語を語り聞かせる」という物語を配置したことで、シャーラザッドに語らせさえすれば、どんな物語だって『千夜一夜物語』の一部として取り込むことができます。『千夜一夜物語』が全体構造を持てたのは、いちばん外側の、シャーラザッドとシャーリヤル王の物語を配置したからです。

ブログも、これと同じように考えることができそうです。いちばん外側に、自分がブログに書くテーマのすべてを吸収できる、懐の深いテーマを配置すれば、すべての文章は、そのテーマの一部として、外側のテーマの一部になります。

となると、課題は、「シャーラザッドがシャーリヤル王に連夜物語を語り聞かせる」という大きな物語に相当するテーマは何かです。「単純作業に心を込めて」に書く文章すべてを吸収するような、大きなテーマを見つければ、ブログに全体構造を与えるのも、不可能ではありません。

b.「単純作業に心を込めて」を、『千夜一夜物語』みたいなブログにしたい。

私は今、このブログに投稿する文章を、ボトムアップアプローチによって、書きたいことを書きたいときに書きたいように書いています。そのためか、今、このブログには、全体構造がありません。

でも、私は、このブログに全体構造を与えられたらいいなあ、とも思っています。もともとトップダウンの構造が好きだというのもありますし、また、全体構造があることによって、個々の記事が発揮する力が増えるのではないかと期待しているからです。

『千夜一夜物語』の枠物語という構造は、この状況に対して、ヒントになりそうです。これはぜんぜん厳密な話ではないのですが、私が今、感じているのは、「「単純作業に心をこめて」を、『千夜一夜物語』みたいなブログにしたい。」ということです。

シャーラザッドがシャーリヤル王に連夜物語を語り聞かせるような、そんな懐の深くて力強いテーマと出会えることを期待しています。

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