その文章が果たすべき役割、意識していますか? 典型的な4つの役割とその活用方法
目次
1.仕事文章の特徴は、役割があること
仕事で作成するいろんな文章全般を、「仕事文章」と呼ぶとして、「仕事文章」に共通する特徴は、何でしょうか。
私は、「役割があること」だと考えています。
仕事で作成するいろんな文章は、何らかの役割を持っています。何らかの役割を果たすために作成されます。連絡メールにしても、業務日報にしても、会議の議事録にしても、残業届にしても、何らかの役割を果たすために、その文章は作成されます。
この「役割がある」という特徴を理解することが、仕事文章を作成する力を伸ばすために、とても有効です。以下、このことを説明します。
2.仕事文章を作成する力を伸ばすには、文章の役割の典型例を理解するのが早道
(1) 文章の役割を意識することは、文章力よりも、ずっと大切
一般に、文章を作成する力を伸ばすには、いわゆる文章力を鍛えることが必要だと言われています。しかし、仕事文章を作成する力を伸ばすためには、文章力を鍛えることよりも、その仕事文章が果たすべき役割を意識する方が、ずっと重要です。
仕事文章には、役割があります。仕事文章でいちばん大切なのは、その文章が果たすべき役割を果たすことです。きちんとしたてにをはと完璧な論理を持っていても、その文章が果たすべき役割を果たしていなければ、その文章は、仕事文章としては、失格です。反対に、日本語があやしくても、もっといえば、まともな日本語になっていなくても、その文章が果たすべき役割を果たしていれば、仕事文章としては、合格です。
「文章力はあるけれど、文章の役割を意識していない人が作成した仕事文章」は、「文章力はないけれど、文章の役割を意識している人が作成した仕事文章」よりも、その仕事文章が果たすべき役割を果たせない可能性が高いです。そのため、前者は、後者に、劣ります。
仕事文章を作成する上では、その文章の役割を意識して作成することが、文章力を鍛えるよりもずっと重要です。
(2) 文章の役割を意識するには、役割の典型例を知るすること
では、文章の役割を意識して仕事文章を作成するには、どうしたらよいでしょうか。
役割を意識するだけなので、文章を作成する際に、「この文章が果たすべき役割は何だろうか?」と自分に問うだけです。しかし、これだけでは、いつも正確に文章の役割を把握できるかは、心許ないです。
有効で手っ取り早い方法は、役割の典型例を知ることです。役割の典型例を知った上で、仕事文章を作成するたびに、今から作る仕事文章は、どの典型例に当てはまる文章なんだろうと考えることが、安定した結果をもたらします。
3.文章の役割の、4つの典型例
私は、仕事文章の典型的な役割を、4つに分けて理解しています。以下のとおりです。
- 読み手に何らかの行動を起こさせるという役割
 - 読み手に情報を伝えるという役割
 - 記録に残すという役割
 - 手続上、要求されていて、存在すること自体が役割
 
順に説明します。
(1) 読み手に何らかの行動を起こさせるという役割
その文章を読んだ誰かに、何らかの行動を起こさせる、という役割を果たすべき文章が存在します。たとえば、何かを提案する文章は、その文章の読み手に、こちらが提案する内容の行動をとってもらうことを役割とする文章です。
この役割の文章は、読み手に求める行動を起こしてもらえたかどうかで、価値が決まります。そのため、この役割の文章を作成するときは、まず、読み手にどんな行動を起こしてほしいと望むのかを特定し、次に、そのためにどんな文章が有効かを考えることになります。
(2) 読み手に情報を伝えるという役割
その文章を読んだ誰かに、何らかの情報を伝える、という役割を果たすべき文章が存在します。たとえば、上司への報告書です。
この役割の文章は、読み手に伝えるべき情報を伝えられたかで、価値が決まります。そのため、この役割の文章を作成するときは、まず、誰に、どの情報を、どの程度具体的に伝えるべきかを特定し、次に、それに適した内容を考えることになります。
(3) 記録に残すという役割
将来のために、何らかの事実を記録に残す、という役割を果たすべき文章が存在します。議事録はこの例です。
この役割の文章は、将来、記録が必要とされるタイミングで、必要とされる記録がそこに残っているかどうかで、価値が決まります。そのため、この役割の文章を作成するときは、まず、記録が必要になるのは、将来のどんなタイミングなのかを想像し、それに対応した形で記録をすることが大切です。
(4) 手続上、要求されていて、存在すること自体が役割
最後に、ちょっと毛色の違う文章として、手続上要求されていて、存在すること自体が役割である、という文章が存在します。施設を利用するための届出書などが典型ですが、助成金を受け取ったときの報告書が、この役割の文章になってしまっている場合もあります。
この役割の文章は、手続上要求されていて、存在すること自体が役割なので、手続が要求する条件を満たした文章であることが、何よりの価値です。そのため、この役割の文章を作成するには、手続が要求している条件を丁寧に確認して、その条件に従って、淡々と、あんまり力を入れずに、作成するのが合理的です。
4.おわりに
文章の役割を意識することは、仕事文章を作成する上で、文章力よりも手前に位置づけられるノウハウではないかと思います。そして、文章の役割を意識することは、文章力を鍛えるよりも、たぶん、ずっと簡単です。まずは、今から作成する文章の役割が、4つのうちのどれなのか(どの役割がメインなのか)を考えることから始めるのが有効ではないかと思います。
スポンサードリンク
関連記事
-  
                            
                              - 
              
行動&結果が同じヒーローの価値をどんな基準で、どのように順位付けするか?
1.倉下さんからの追加質問 先日から、R-styleの倉下忠憲さんが発行しているメールマガジンを購
 
-  
                            
                              - 
              
『「できる人」はどこがちがうのか』→自分なりの「上達の秘訣」を育てている
1.「できる人」は、自分なりの「上達の秘訣」を持っている (1) 下手くそな状態から上達するまでの
 
-  
                            
                              - 
              
Evernoteは、ノートの杭を打つからこそ、思考のツールとして現にうまく機能している。
1.ノートの杭を打つにもかかわらず、Evernoteは、なぜ、思考のツールとして現に機能しているのか
 
-  
                            
                              - 
              
項目番号はアウトライナーになる(項目番号によって文章の構造を組み立てる)
1.なぜ、こんなに項目番号を推すのか (1) 項目番号がすき 私が好きなものは、Evernote
 
-  
                            
                              - 
              
『文章教室』(結城浩)練習問題実践記録・第9回「接続詞をうまく使いましょう」
この文章は、結城浩先生の『文章教室』に取り組んだ記録です。 →文章教室 第1回~第8回の記録は、
 
-  
                            
                              - 
              
全体としてひとつの流動的な有機体であるか否か(Evernoteとプロセス型アウトライナーの思想のちがい)
1.はじめに 「Evernoteとアウトライナーの融合は可能か?」というテーマを考察した、この記事
 
-  
                            
                              - 
              
「セルフブランディングを実践した先にある世界」と「その時点までの考察をアウトプットして、フィードバックを得る仕組み」
1.普通の個人が、自分の毎日に、「その時点までの考察をアウトプットして、フィードバックを得る仕組み」
 
-  
                            
                              - 
              
制限時間がある:ドラクエのレベル上げと現実世界の重要な違い(2)
1.はじめに ひとつ前の記事で考えたテーマは、「ドラクエのレベル上げと現実世界の自分育成は、(似て
 
-  
                            
                              - 
              
瞬時レビューと実行中メモで、タスク実行中の感情&脱線を処理する。感情と脱線からも価値を汲み取るタスクマネジメントシステム
1.「タスクの実行」を助けるタスクリストの条件(2)「タスク実行中の感情と脱線を処理できるタスクリス
 
-  
                            
                              - 
              
『WorkFlowy文章作法』第1章「2つの原則」(前半「知的生産のフロー」)
この記事は、『WorkFlowy文章作法』の第1章「2つの原則」のうち、前半の「知的生産のフロー」で
 

