単純作業に心を込める3つの方向性を、子育てに適用してみる
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単純作業に心を込める, 子育て
目次
1.単純作業に心を込める3つの方向性
以前、単純作業に心を込めるために、3つの方向性がある、ということを書きました。次の3つです。
- 単純作業の繋がる先を見据える方向性
- 単純作業を片付ける能力を鍛える方向性
- 単純作業そのものを丁寧に慈しむ方向性
これを、自分の生活におけるいろんな場面に適用してみます。まずは、子育てに適用します。
2.子育てにおいて、単純作業に心を込めることが、なぜ大切か
子育てにおいて、単純作業に心を込めることは、大切です。理由は、次のふたつです。
(1) 単純作業をしている時間が長い
第一の理由は、単純作業をしている時間が長いことです。
子育てをするとき、親は、寝かしつけをしたり、おむつを替えたり、抱っこをしたり、食事を食べさせたりします。これらの行動は、動作としては、単純作業です。
子どもと遊ぶのも、特に子どもが小さいときは、単純作業の繰り返しが多くを占めます。0歳から1歳くらいの子どもは、積み木で遊んだり、絵本を読んだり、音が鳴るおもちゃで遊んだりするときに、あまり複雑なことを望みません。単純な繰り返しが好きなのではないかと思います。
単純作業をしている時間が長いので、子育てにおける単純作業に心を込めることで、子育て全体に心を込めることができるのではないかと思います。
(2) 心を込めているかどうか、子どもに伝わる
第二の理由は、心を込めているかが、子どもに伝わる気がすることです。
多くの動作が単純作業なので、何か別のことをしながらだって、することはできます。テレビを見ながらおむつを替えることだって、スマートホンをいじりながら積み木遊びをすることだって、長電話しながら抱っこで寝かし付けをすることだって、考え事をしながらご飯を食べさせることだって、可能といえば可能です。ひとつひとつの動作は別に難しくないため、何かをしながらでも、失敗することはありません。
でも、心を込めているかどうかが、子どもに伝わっている気がします。何かをしながら片手間でしているか、その単純作業に心を込めているかによって、子どもの表情や反応が、何となく違います。
子どもに伝わるので、できる限り、心を込めて子育てをしたいと思います。
3.3つの方向性を適用してみる
子育てにおいて単純作業に心を込めることが大切だと考えるなら、次は、いかにして単純作業に心を込めるか、です。3つの方向性を適用してみます。
(1) 単純作業の繋がる先を見据える方向性
ひとつめの方向性は、単純作業の繋がる先を見据えるという方向性でした。
子育てにおける単純作業が繋がる先とは、子どもの成長や子どもの将来ではないかなと思います。ひとつひとつの子育て作業が、子どもの成長や子どもの将来に繋がることを想いながら、子育てのいろんな作業をする、という方向性です。
ご飯を準備するときに、そのご飯を食べることで子どもが元気に大きく育つことを想像する。絵本を読むときに、絵本に触れることで心や知能が豊かになることを期待する。おむつを替えるときに、スキンシップが安定した情緒をはぐくむことを祈る。
子どもは、可能性のかたまりです。日々どんどん成長します。ですから、単純作業が繋がる先に子どもの成長を想像することは、わりとやりやすいことではないかと想います。
(2) 単純作業を片付ける能力を鍛える方向性
ふたつめの方向性は、単純作業を片付ける能力を鍛えるという方向性でした。
子育ての作業には、誰でもできるんだけれど、上手下手がある、という作業があるのではないかと思います。たとえば、子どもに絵本を読むことは、誰でもできますが、上手な人と下手な人がいます。あるいは、子どもを抱っこすることは、誰でもできますが、安定感があって子どもをリラックスさせる抱っこをする人と、見ていても危なっかしくて子どもも落ち着かない抱っこになってしまう人がいます。
このように、簡単で単純な作業でも、そこに何かの差が存在するので、その作業をする自分の能力を鍛えることは、素朴に楽しいことです。
単純作業を片付ける能力を鍛える方向性で単純作業に心を込めるには、小さなポイントに着目して、細かい試行錯誤を繰り返すことが有効です。絵本を読むなら、声の高さや読むスピード、ページをめくるタイミングなどに着目し、いろんなパターンを試してみます。抱っこをするなら、手の形、腕の形、支える位置、揺れのリズムなどに着目して、いろんなパターンを試してみます。
(3) 単純作業そのものを丁寧に慈しむ方向性
みっつめの方向性は、単純作業そのものを丁寧に慈しむという方向性でした。
この方向性を実践するには、単純に、子育てという単純作業を丁寧に慈しむだけです。
ですが、ちょっとしたコツはあるのではないかと思います。私が大切だと思うのは、そのときにしている子育て作業以外のことを考えないこと、特に、その子育て作業を終えた後に何をしたいか・しなければいけないかを考えないこと、です。
たとえば、子どもが眠たそうにぐずっているんだけれど、流しに皿や鍋が山積みになっている、という状態を考えます。このとき、眠そうにしている子どもを寝かしつけるわけですが、流しに皿や鍋がたくさん残っているので、子どもを寝かしつけた後で、皿や鍋を洗わなければいけないわけです。そうなると、寝かしつけが終わったら皿を洗おう、と思いながら、寝かしつけをすることになりがちです。しかし、このように考えていると、寝かしつけそのものを丁寧に慈しむことができません。次にやることを考えながら寝かしつけをしていると、寝かしつけは、可及的速やかに片付けるべきタスクになってしまい、慈しむ対象でなくなってしまいます。
子育てだけしていて生活が回るわけではないので、子育て以外にもやらなければいけないことはたくさんあります。ですから、子育ての作業をしているときに、子育ての後でしなければいけないことを考えてしまうことは、普通のことです。でも、その後でやらなければいけないことをいったん置いておいて、その子育て作業そのものに集中することができれば、子育てという単純作業が丁寧に慈しむ対象となり、子育てという単純作業から、多くのうれしさを感じることができるのではないかと思います。そして、子育て全体が、幸せな時間になるのではないかと思います。
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