『7つの習慣』が誇るパワフルな考え方:P/PCバランス
目次
1.『7つの習慣』の魅力は、パワフルな基本となる考え方にある
私は、『7つの習慣』を、すばらしい本だと考えています。読んで気持ちよくなるだけの自己啓発本とは、別次元の本だと思います。
私がこのように考える理由のひとつは、『7つの習慣』には、基本となる考え方がいくつかあって、それら基本となる考え方が、パワフルだからです。『7つの習慣』が誇る、パワフルな基本となる考え方は、たとえば、「インサイド・アウト(影響の輪と関心の輪)」とか、「P/PCバランス」とか、「重要と緊急のマトリクス」とか、「刃を研ぐ」とかです。
2.P/PCバランスを活用すれば、無理なく自然にPCを大切にできる
この中でも、私が特に影響を受けたのは、P/PCバランスという考え方です。
(1) P/PCバランスとは何か
P/PCバランスとは、成果(Performance)と目標達成能力(Performance Capability)のバランスのことです。
成果を達成するためには、目標達成能力が必要です。目標達成能力が高ければ、それほど多くの時間や労力を投入しなくても、高い成果を上げることができます。そのため、目標達成能力を高い状態にすることは、とても大切です。
ところで、成果を達成することにも、目標達成能力を維持・発展させることにも、時間や労力など、自分の資源を費やす必要があります。しかし、自分の資源は限られているので、成果を達成することに集中すれば、目標達成能力の維持・発展に費やせる資源は減りますし、逆に、目標達成能力の維持・発展に集中すれば、成果を達成することに費やせる資源は減ります。
そのため、成果を達成することに偏りすぎると、目標達成能力が低下してしまい、成果を達成するために資源を費やしても、思うように成果が出ない状態に陥ります。反対に、目標達成能力を維持・発展することに偏りすぎると、すばらしい目標達成能力をを持ちながら、全然成果を出さない、という、本末転倒な状態に陥ります。
そこで、成果を達成することと目標達成能力を維持・発展させることとの間のバランスをとる必要があります。これが、P/PCバランスの考え方です。
(2) P/PCバランスの具体例(『7つの習慣』より)
『7つの習慣』は、P/PCバランスの具体例をいくつか挙げています。そのうち、次の2つを紹介します。
a.イソップ童話の黄金の卵を産む鶏の話
ある農夫が、鶏を飼っていた。その鶏は、毎日卵を産んでくれた。
ある朝、農夫が鶏のところに行くと、鶏が、黄金の卵をひとつ産んでいた。その翌日も、その翌日も、鶏は、毎朝ひとつの黄金の卵を産んだ。
鶏が産む黄金の卵によって、農夫は豊かになった。
しかし、農夫は、次第に、鶏が1日1個しか黄金の卵を産まないことを待ちきれなくなった。そこで、農夫は、鶏の腹を切り裂いて、一度に全部の黄金の卵を手に入れることにした。
農夫は、鶏の腹を切り裂いたが、そこに黄金の卵はなかった。そして鶏は死んでしまい、農夫は黄金の卵を産む鶏を失った。
この話では、黄金の卵がP(成果・Performance)であり、鶏がPC(目標達成能力・Performance Capability)です。継続的に黄金の卵という成果を得るためには、目標達成能力を維持する必要があるのですから、目標達成能力である鶏を大切にしなければいけないのに、農夫は、一度に成果を得ようとして、目標達成能力である鶏を自ら殺してしまいました。
b.クラムチャウダーが評判だったレストランの話
あるところに、クラムチャウダーが評判のレストランがあった。そのレストランには、クラムチャウダーを求めて、多くのお客さんがやってきた。
レストランの経営者は、クラムチャウダーの材料費を減らして同じ価格でクラムチャウダーを売れば、大きな利益を上げられると思いつき、クラムチャウダーの具を少なくした。
しばらくの間は、クラムチャウダーの材料費が減ったが、売り上げはそのままだったので、利益が大きくなった。しかし、しばらくすると、クラムチャウダーの評判は落ちてしまい、クラムチャウダーを求めてやってくるお客さんはいなくなった。結果として、クラムチャウダーから得られる利益はなくなった。
この話では、クラムチャウダーから得られる利益がPであり、評判のクラムチャウダーを提供できることがPCです。経営者は、クラムチャウダーから得られる利益を増やすことを狙って、材料費をけちった結果、クラムチャウダーの評判を落としてしまい、ひょばんのクラムチャウダーを提供できるというPCを損なってしまいました。
(3) P/PCバランスを活用すると、PCを大切にできる
私は、P/PCバランスの真価は、PCを大切にできることにあると思っています。
P/PCバランスは、その名に「バランス」という単語が入っていることからもわかるように、Pに費やす資源とPCに費やす資源のバランスをとるのが大切だよ、と説いています。つまり、Pに偏るのも、PCに偏るのも、どっちもよくない、という教えです。
でも、私の場合は、PとPCのバランスをとるためには、意識的にPCに偏ろうとするくらいがちょうどいいです。私の傾向として、何も意識せずに行動していると、ついつい、成果を得ること(P)に偏ってしまい、目標達成能力の維持・発展(PC)をほったらかしにしがちです。目の前に成果を上げられるチャンスがあったら、それを活かさなくちゃ、と思ってしまうことが、成果に偏りがちな理由なのではないかと思います。
これに対して、P/PCバランスの考え方を活用すれば、本当の意味で効果が高いのは、目先の成果だけではなく、目標達成能力がどうなるか、ということを含んだものだということがわかります。そうなると、ついつい目先の成果のための行動をとってしまいそうなときに、一歩立ち止まって、その行動によって目標達成能力がどうなるかを意識し、最終的な判断を下すことができます。
また、ある行動が直接は成果につながらなくても、目標達成能力を維持・発展することにつながるのなら、その行動に価値を感じることができます。
このように、無理なく自然に、目標達成能力の維持・発展(PC)を大切にできることが、P/PCバランスの考え方のよいところです。
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