自分個人のための知的生産システムを改善し続ける。「ハイブリッド」シリーズ(倉下忠憲)から受け取った「ハイブリッド・システム」というコンセプト。
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知的生産
目次
1.倉下忠憲さんの「ハイブリッド」シリーズに共通するコンセプトは、「ハイブリッド」と「システム」
(1) 3冊の「ハイブリッド」シリーズ
倉下忠憲さんは、2014年8月現在、3冊の「ハイブリッド」シリーズを書いています。
順に、
『クラウド時代のハイブリッド手帳術』(2011年)
『Evernoteとアナログノートによる ハイブリッド発想術』(2012年)
『ソーシャル時代のハイブリッド読書術』(2013年)![](http://ir-jp.amazon-adsystem.com/e/ir?t=tjsgkokoro-22&l=as2&o=9&a=4863541244)
の3冊です。
『クラウド時代のハイブリッド手帳術』のテーマは手帳です。このブログでは、「手帳から「ハイブリッド手帳システム」へ。『クラウド時代のハイブリッド手帳術』を参考に、自分なりの手帳システムを作る。」等の記事でご紹介しました。
『Evernoteとアナログノートによるハイブリッド発想術』のテーマは発想です。このブログでは、「アイデアの「畑」と「地層」:『ハイブリッド発想術』読書メモ(「なぜ、私は、思考するツールとして、Evernoteを使うのか」番外編)」等の記事でご紹介しました。
『ソーシャル時代のハイブリッド読書術』のテーマは読書です。このブログでは、「『ソーシャル時代のハイブリッド読書術』を手引書に、ウェブを活かした個人レベルの総合的読書システムを組み立てる」等の記事でご紹介しました。
(2) 「ハイブリッド」と「システム」
これら3つの本には、共通するコンセプトが、2つ、あります。
a.書名にもなっているコンセプト=「ハイブリッド」
ひとつはもちろん、「ハイブリッド」です。
このように「2つ以上の異質なものを組み合わせて1つの目的を成すもの」が「ハイブリッド」です。
『クラウド時代のハイブリッド手帳術』p.23
異質なものとは、典型的には、デジタルとアナログです。デジタルとアナログという異質なものを組み合わせて1つの目的を成すことが、3冊に共通するコンセプトです。
3冊を、デジタルとアナログという観点で表に整理することもできます。
デジタル | アナログ | |
『ハイブリッド手帳術』 | スケジュール:Googleカレンダー タスク:Evernote メモ:iPhone (セルフマネジメント:Evernote?) |
スケジュール:ほぼ日手帳カズンによるWeeklyプランナー タスク:Dailyタスクリスト メモ:いろんなメモ帳(ロディア、モレスキンなど) セルフマネジメント:ほぼ日手帳カズンのデイリーページ、文庫本ノート |
『ハイブリッド発想術』 | 発送を支援するいろんなデジタルツール Evernoteのアイデア地層 iPadという道具 |
いろんなアナログノート |
『ハイブリッド読書術』 | 本を探す:ネット書店、ソーシャルウェブ 本を読む:蔵書管理サービス(メディアマーカー)、電子書籍 読了後の行動:デジタルの読書ノート、読書ノートのEvernoteへの蓄積、ブログやソーシャルウェブへのアウトプット |
本を探す:リアル書店、リアル知人 本を読む:紙の本、ペン 読了後の行動:アナログノートへの読書ノート |
b.負けず劣らず重要なコンセプト=「システム」
このように、「ハイブリッド」は重要なコンセプトなのですが、「ハイブリッド」に負けず劣らず重要なコンセプトが、もうひとつあります。それは、「システム」です。
つまり、単一のツールに注目するのではなく、複数のツールから1つの「システム」を構築していく、という考え方になります。
(略)
それぞれのツールは自分の得意なことをこなして、弱点の部分は他のツールが補う。そしてそれらの組み合わせ全体で「手帳」の機能を実現する仕組みを作ることです。
『クラウド時代のハイブリッド手帳術』p.19
それぞれの場面で、異質な複数のツールを使い分けるだけでは、それほど高い効果は得られません。そうではなくて、複数のツールを組み合わせて、全体として1つの「システム」を構築する、という考え方が大切です。
「手帳」にせよ、「発想」にせよ、「読書」にせよ、異質な複数のツールから1つの「システム」を構築し、システム全体でひとつの機能を実現する仕組みを作ることが、「システム」というコンセプトです。
3冊から、それぞれの「システム」を表現した図表を引用させていただきます。
『クラウド時代のハイブリッド手帳術』の「ハイブリッド手帳システム」
『Evernoteとアナログノートによるハイブリッド発想術』のEvernoteにアイデア地層を作るシステム
『ソーシャル時代のハイブリッド読書術』のハイブリッド読書システム
c.「ハイブリッド」と「システム」の関係
ただ、「ハイブリッド」と「システム」が独立のコンセプトかといえば、そういうわけでもありません。
もう一度、「ハイブリッド」の説明を引用します。
このように「2つ以上の異質なものを組み合わせて1つの目的を成すもの」が「ハイブリッド」です。
『クラウド時代のハイブリッド手帳術』p.23
2つ以上の異質なものを使うだけでは、ハイブリッドではありません。「組み合わせて1つの目的を成す」ことが、ハイブリッドです。
「組み合わせて1つの目的を成す」というのは、要するに、システムになっている、ということなので、「ハイブリッド」というコンセプトの中に、「システム」というコンセプトも含まれている、というのが正確なところかもしれません。
そうはいっても、「ハイブリッド」シリーズにおいて、「システム」はとても重要です。ですから、私は、「ハイブリッド」シリーズのコンセプトを、「ハイブリッド・システム」という言葉で受け取りたいと思います。
2.「ハイブリッド・システム」というコンセプトは、自分個人のための知的生産システムを改善し続ける上で、役に立つ
(1) 自分個人のための知的生産システムを作る
最近、なんとなく感じていることは、自分個人のための知的生産システムを作ると、いいことがたくさんある、ということです。とりわけ、本を読んだり、文章を書いたり、ものを考えたりすることが好きなら、自分個人のための知的生産システムを作ると、小さいけれど確実な幸せを感じられるんじゃないかなあと思います。
知的生産を構成するのは、
- 本を読んだり何かを調べたりといったインプット
- 文章を書いたり人に話をしたり何かを形作ったりといったアウトプット
- インプットとアウトプットの間にある、自分の中で起きている何らかの営み
の3つです。
それぞれを思いつくままやるよりも、相互の関係性や情報の流れを意識して、全体としてのシステムを作ることを意識すると、知的生産を生み出す力が上がり、知的生産の成果物が増え、知的生産から得られるよろこびも深まるんじゃないかと感じています。
知的生産システムというのは、何も、大学とか研究所とかだけで活躍するものではありません。自分個人のための知的生産にも、自分個人のための、自分なりの個人的な知的生産システムを作れば、それはきっとうまく機能します。
(2) 「ハイブリッド・システム」というコンセプトが役に立つ
そして、私は、この、自分個人のための知的生産システムを作る上で、「ハイブリッド・システム」というコンセプトが役に立つと感じています。
というのも、「ハイブリッド・システム」というコンセプトを持つと、ひとつの絶対的なツールや解法を求めるあまり、現実の一歩を踏み出せずにいる、という事態を避けることができるからです。
世の中には、知的生産に関するいろんなツールが開発され、いろんな解法が提唱されています。手帳術にせよ、読書術にせよ、発想術にせよ、少し調べれば、たくさんのものがあります。
その中から、「ひとつの絶対的なツール」「ベストな解法」を見つけようとすると、難民になります。手帳難民、読書術難民、発想術難民です。絶対的なベストを求めてさまよい、現実の一歩を踏み出せず、身動きがとれなくなります。
これに対して、「ハイブリッド・システム」は、ひとつの絶対的なツールや解法ですべてを解決する、という考え方ではありません。自分なりにいくつかのツールや解法を組み合わせてシステムを作り、システム全体で問題を解決する、という考え方です。
ひとつひとつのツールや解法に弱点があるなら、他のツールや解法でその弱点を補います。大切なのはシステム全体がどう機能するかであって、システムを構成するツールや解法に大きな意味はありません。
そのため、「ハイブリッド・システム」のコンセプトを持てば、ツールや解法の試行錯誤が容易です。気楽に、そのときそのときのベターを積み重ねることで、継続的に、システムを改善できます。
個別のツールや解法の試行錯誤が容易な「ハイブリッド・システム」というコンセプトは、自分個人のための知的生産システムを作るために、役立ちます。
そんなわけで、私は、「ハイブリッド」シリーズ3冊から受け取った「ハイブリッド・システム」というコンセプトを活用して、自分個人のための知的生産システムを作り、継続的に改善していこうと思います。
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