Evernoteを中心に、知的生産のためのクラウドベースを作る
目次
1.Evernoteを中心としたクラウドサービスのおかげで、知的生産を続けられている
(1) サラリーマン・夫・父でありながら、知的生産者であるということ
学生のころ、『知的生産の技術』や『「超」整理法』を読んだ私は、知的生産に対して、強いあこがれを持ちました。そして、毎日せっせと本を読み、ノートに読書メモや文章を書きました。そのころの私にとって、知的生産は、自分にとって最も大切な活動領域のひとつでした。
その後、私は、就職してサラリーマンになり、結婚して夫になり、子どもが生まれて父になりました。
どれもありがたいことです。でも、サラリーマン・夫・父という新しい3つの役割は、それぞれ、それなりのまとまった時間を必要としました。
サラリーマンになり、夫になり、父になった私には、個人として自由にできる時間は、そんなに残されていませんでした。時間だけは豊富だった学生のころとは、比べ物になりません。
読書する時間が減りました。読める冊数も減りましたし、読んだあとで読書メモを作ったり、その本について考えたりすることも、なかなかできなくなりました。
文章を書く時間も減りました。簡単な日記をパソコンで書くのがやっとでした。じっくりと心を落ち着かせて日記を書ける日はわずかでしたし、日記以上の文章、たとえば、インプットした情報をもとに、自分なりに考えて、考えたことにまとまったかたちを与えることによって成り立つ文章は、とても書いていられなくなりました。
サラリーマンであり、夫であり、父である以上、知的生産を追い求める知的生産者であることは、まあほどほどにしておかなくちゃね、と自分に言い聞かせ、私は、知的生産を続けることを、ほとんど諦めかけていました。
(2) クラウドサービス群
この状況で、私の知的生産を救ってくれたのは、クラウドサービスでした。
インプットのためのクラウドサービスは、Feedly(当時はGoogleリーダー)、Pocket(当時はRead It Later)、そしてなんといってもKindle。
アウトプットのためのクラウドサービスは、TwitterとWordPressブログ。
そして、インプットとアウトプットを含む全体をカバーするのが、Evernote。
これらクラウドサービス群のおかげで、私は、通勤時間や昼休み、移動時間や会議の待ち時間などを、知的生産に投入できるようになりました。
中でも、中心的な役割を果たしているのが、Evernoteです。インプットをEvernoteに集約し、アウトプットをEvernoteの中でコツコツと進めることで、私の知的生産は回っています。
私にとって、Evernoteは、知的生産の基本インフラです。この基本インフラのおかげで、サラリーマンでもあり夫でもあり父でもある私は、同時に、知的生産という活動領域を維持できています。私が知的生産を諦めずに継続できているのは、Evernoteのおかげです。
2.『Evernote「超」知的生産術』に、知的生産を継続するヒントを求める
(1) 『Evernote「超」知的生産術』のテーマは、Evernoteを中心とした継続的な知的生産
話は変わります。昨日、『Evernote「超」知的生産術』(倉下忠憲著)を読み終えました。
この本は、一見すると、Evernoteの解説書です。タイトルに「Evernote」という単語が含まれ、「Evernote」と「超」はEvernoteのイメージカラーである緑色であり、表紙にはEvernoteのロゴがあしらわれています。
でも、この本は、Evernoteの解説書ではなく、むしろ、知的生産の解説書です。この本は、Evernoteを、どのように知的生産に役立てるか、を論じた本です。
『Evernote「超」知的生産術』の一節を引用します。
本書では、先に述べた「効率よく、できるだけ時間をかけずに情報収集を行い、継続的に情報のアウトプットをできる」環境を作るために、ツールとしてはEvernoteを中心としたクラウドツールを使い、運用法として「知的生産の技術」と「アイデアのつくり方」の書籍をベースにします。
p.38
『Evernote「超」知的生産術』は、Evernoteを中心としたクラウドベースを組み立てることで、知的生産を継続する、というテーマに取り組んだ本です。
(2) Evernoteを中心としたクラウドベースによって、知的生産を継続する
私の課題は、自分に残された限りある時間をうまく使って、知的生産を継続したい、というものです。そのために、今、私は、Evernoteを中心としたクラウドサービス群の力を借りています。
とはいえ、今の私のやり方は、もちろん、完璧でありません。Evernoteはいろんな使い方を許容しますし、Evernoteと組み合わせられるクラウドサービスはたくさんあります。改善の余地は、まだたくさん残されています。
『Evernote「超」知的生産術』は、Evernoteを中心としたクラウドサービス群の力を借りることを、「クラウドベースを作る」というかたちで、わかりやすく提示しています。Evernoteを中心としたクラウドベースを組み立てて、知的生産を継続する、という本書のテーマは、まさに、今の私にぴったりです。
自分の知的生産を支える仕組みを少しでも改善し、限りある時間を活かして、継続的な知的生産を実践するため、『Evernote「超」知的生産術』からいただいたいくつかのヒントを、ここにまとめます。
3.『Evernote「超」知的生産術』の全体像
『Evernote「超」知的生産術』は、7つの章で構成されます。7つの章は大きく分けると、次の3つのまとまりになります。
- (1) 知的生産のためのクラウドベースを作る
- (2) 知的生産の4工程
- (3) 継続的な知的生産
(1) 知的生産のためのクラウドベースを作る
第1章「あなたの知的生産はEvernoteで「超」加速する」は、総論的な話です。現代において知的生産が重要である理由や、Evernoteが知的生産にとってどのように役立つか、などが解説されています。
また、本書の構成の核となる、知的生産の4工程が解説されています。
- インプット(情報収集)
- 情報整理
- 発想・思考
- アウトプット(書き出し)
第2章から第6章は、この4工程に沿って、配置されています。
(2) 知的生産の4工程
a.インプット(情報収集)
知的生産の4工程中、インプット(情報収集)を扱うのは、第2章「Evernoteを新時代のスクラップ・ブックにする」と第3章「Evernoteを多元式メモ帳として使う」です。
第2章は、外から来た情報をいかにEvernoteに取り組むか、という話です。
この中で私にとってとくに有益だったのは、「知的生産のための資料は「専門資料」と「一般資料」に分けられる」という指摘です。
第3章は、頭のなかにふと思い浮かんだアイデアを、どのように捕まえるか、という話です。本書では、「着想」という言葉が使われています。
第3章は、Evernoteを、多元式メモ帳と捉えています。メモする道具をひとつに限定せず、どこにメモをしたものであっても、Evernoteに集約することによって、状況にふさわしい手段でメモをとりながら、メモを集積することができる、ということです。
b.情報整理
第4章「Evernoteで自分だけの整理法を確立する」は、Evernoteの整理法を作り上げる方法論を論じるものです。
第4章には、倉下忠憲さんが具体的にどのようにEvernoteを整理しているか、の実例も紹介されています。しかし、これよりも役に立つのは、自分にとって最適なEvernote整理法を作り上げるための方法論が紹介されていることです。
Evernoteの整理法を考えるなら、ここで紹介されている「マドルスルー整理法」は、役に立ちます。
c.発想・思考
第5章「Evernoteを発想のツールとして使いこなす」は、KJ法やメタ・ノートといった発想法を、Evernoteでどう実践するか、を考察しています。
KJ法は、ひとつのアイデアをひとつのカードに書き出し、そのカードをまとめたり並べたりすることによってアイデアを生み出す発想法です。EvernoteのノートをKJ法のカードと同じように考えれば、Evernoteのノートをまとめたり並べ替えたりすることによって、KJ法のようなことを実現できます。
また、メタ・ノートは、『思考の整理学』で紹介されていたノート法です。本書では、段階に応じたノートブックを作ることによって、メタ・ノートをEvernoteで実践する方法が紹介されています。
d.アウトプット(書き出し)
第6章「クラウドツールでアウトプットを強化する」は、Evernoteによって生み出した情報を、主にブログにアウトプットしましょう、という話です。
本書をEvernoteの解説本だと捉えると、ブログへのアウトプットに一章を費やすのは不自然な気もします。でも、本書のテーマは知的生産です。知的生産にとって、アウトプットは不可欠の一部なので、ブログへのアウトプットを丁寧に論じるのは、むしろ自然なことです。
本書は、ブログを、「アウトプットを行う場所」として把握します。
現代ではブログというアウトプットを行う場所を誰でも持つことができます。そしてその場所は「とりあえず」の気持ちでアウトプットを出せる貴重なところでもあります。
p.254
本当に、「とりあえず」の気持ちでアウトプットを出せる場所を持てることは、知的生産を継続するためには、とても貴重なことです。
(3) 継続的な知的生産
第7章「セルフ・マネジメントとライフログ」は、知的生産を「継続する」ということに力点が置かれています。
本書は、知的生産を継続するには、「行動管理」と「メンテナンス管理」の2つが必要だと説明します。「行動管理」はスケジュールやタスクを管理することで、「メンテナンス管理」はモチベーションの管理です。
さらに、本書では、ライフログをとることも、知的生産を継続するための要素と捉えています。
これら(注・メンテナンス管理とライフログ)は直接生産を行う活用ではないものの、「知的生産」のサイクルを長期的に回していくためには欠かしてはならないものです。
p.314
『Evernote「超」知的生産術』では、これらの知的生産を継続するための行動に、Evernoteを使う具体的な提案がなされています。
4.おわりに~すぐに取り入れた3つの具体的なEvernoteの使い方~
このように、『Evernote「超」知的生産術』には、知的生産の全行程に渡るEvernoteの使い方が解説されています。Evernoteを中心に、最適なクラウドベースを組み立てる、という発想は、参考になります。Evernoteを知的生産に活用することを考えるなら、読んで損はない本です。
最後に、おまけとして、私自身が『Evernote「超」知的生産術』から取り入れた3つの具体的なEvernoteの使い方を紹介します。
(1) タスクフォース
ひとつめは、タスクフォースです。
タスクフォースは、渡部昇一氏の『知的生活の方法』で提唱された情報カードの使い方です。特定の目的が生じたときに、その目的に沿って、一時的に、1つのカードボックスに関連する情報カードを集める、という方法です。
蓄積してきたカードを、特定のテーマに基づいて集め、1つのカードボックスに入れておく。それを参照しながらアウトプットを行うわけです。このカードボックスに収められたカード群が、タスクフォースです。
p.171
時系列やゆるい分類で並べられていたカードを集め直すこのやり方を、タスクフォース、つまり「具体的な特定の目的のために一時的に編成される部局や組織」になぞらえているわけです。
p.171
Evernoteでこのタスクフォースを実践するには、特定の目的のノートブックを作り、そのノートブックに関連するノートを集める、という使い方になります。
Evernoteでも同様の考え方が使えます。とりあえず集めたノートを、特定の目的が発生したらそれにあわせて編成し直します。この場合カードボックスにあたるのがノートブックです。特定の目的とは知的生産でいえば、新しい企画ということになるでしょう。そのアウトプットに必要な資料や情報をすべてそのノートブックに集めるという使い方ができます。
p.172
特定の目的が生じたら、その目的が生じている期間限定で、一時的なノートブックを作る、という使い方がいいなと思いました。ノートブックを固定したものと考えない発想が大切なんだなと感じました。
(2) メタ・ノート
ふたつめは、メタ・ノートです。
もともとのメタ・ノートは、
(1) 何か考えが浮かんだら、それを手帳などに書き留める
(2) 書き留めたものをあとで見返して、脈がありそうなものを別のノートに転記する
(3) 転記したノートを見返し、まだ脈がありそうなものをさらに別のノートに転記する
p.221
です。
これに対して、本書の提案は、
これがEvernoteでは、次のような流れになります。
(1) アイデアを総合的に集めるノートブック
(2) 一次選別先の「メタ・ノート」ノートブック
p.226
となります。
私も、さっそく、自分のEvernoteの中に、「メタ・ノート」という名前のノートブックを作りました。今後は、PostEverによる日誌などから、芽が出そうなアイデアと、「メタ・ノート」ノートブックに転記することにします。
なお、メタ・ノートについては、倉下さんがシゴタノ!に書いた記事があります。コンパクトに要領よくまとまっていますので、多少なりともメタ・ノートに興味を持った方は、一読するとよいのではないかなと思います。
思考を整理する「メタ・ノート」習慣を始めよう! | シゴタノ!
(3) Evernoteをメンテナンス管理に使う
みっつめは、Evernoteをメンテナンス管理に使う、ということです。
本書の中で、私がいちばん共感したのは、「「知的生産」のサイクルを長期的に回していく」ということです。この記載を読んで、私は、自分にとっていちばん大切な課題は、知的生産を継続することだということを理解しました。
今現在、私は、このブログに対して、かなり熱中しています。熱中しているので、継続することができています。
しかし、私がこのブログを始めてから、まだたった2年少々です。2年程度なら、勢いで何とかなります。でも、5年、10年と知的生産を継続するためには、勢いだけでは何ともなりません。
今後、5年、10年と知的生産を継続することは、自分にとっての大切なテーマです。知的生産を継続するために、Evernoteをどのように使うとよいのだろうか、ということを考えるヒントになりました。
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