「タスクの実行」を助けてくれるタスクリストの条件は?
公開日:
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最終更新日:2014/08/23
仕事の方法論
目次
1.はじめに・「タスクの実行」を助けてくれるタスクリストの条件とは?
(1) 「タスク管理」と「タスクマネジメント」
『クラウド時代のハイブリッド手帳術』は、「タスク管理」と「タスクマネジメント」という2つの言葉を、別の意味で使っています。
「タスク管理」は、「タスクをどう保存するか」にフォーカスをあてた概念であるのに対して、「タスクマネジメントシステム」は、(タスクの保管はもちろん、)その保管したタスクをどうすれば処理しやすくなるかや、着手するための「やる気」を出すにはどうしたらいいか、までをカバーする概念です。
(参照:『クラウド時代のハイブリッド手帳術』p.87)
ざっくり言うと、
- タスク管理:タスクの保管
- タスクマネジメント:タスクの保管+タスクの実行
ということです。
(2) 「タスクの実行」を助けてくれるタスクリスト
私自身は、これまで、「タスク管理」と「タスクマネジメント」という2つの言葉を、このように明確な意味で使い分けていませんでした。どちらの言葉を使うこともありましたが、そのときの気分や流れで、適当に言葉を選んでいました。
それどころか、タスクを扱うシステムの役割が、タスクの保管とタスクの実行という2つの機能だということを、意識すらしていなかったように思います。
言われてみれば当然ですが、「タスクの実行」は、タスクを扱うシステムが担うべき重要な役割です。それも、かなり重要な役割です。
そこで、タスクを扱うシステムが、「タスクの実行」を助ける役割をうまく果たすためには、どんなことが大切なんだろうか、ということを考えてみます。これを検討する観点もいくつかありそうですが、さしあたり、タスクリストのあり方から考えてみます。
すなわち、「「タスクの実行」を助けてくれるタスクリストの条件は何か?」ということです。
2.「タスクの実行」を助けてくれるタスクリストの条件
「タスクの実行」を助けてくれるタスクリストの条件を考えてみたら、私の場合、次の5つが浮かびました。
- (1) 今の自分が簡単にできる具体的な行動を教えてくれるタスクリスト
- (2) タスク実行中の感情と脱線を処理できるタスクリスト
- (3) 「タスクリストに書いてあることをやれば、うまくいく」「タスクリストに書いてあることをやらないと、酷い目に遭う」と確信できるタスクリスト
- (4) 個別具体的なタスクがつながる先を「見える化」してくれるタスクリスト
- (5) やったことを残してくれるタスクリスト
順に、説明します。
(1) 今の自分が簡単にできる具体的な行動を教えてくれるタスクリスト
第1に、今の自分が簡単にできる具体的な行動を教えてくれることです。
今の自分が簡単にできる具体的な行動を教えてくれるタスクリストは、「タスクの実行」を助けてくれます。でも、今の自分が簡単にできる具体的な行動を教えてくれないタスクリストは、「タスクの実行」を助けてくれません。
「今の自分が簡単にできる具体的行動」には、いくつかの意味があります。
まず、自分の行動を教えてくれることです。他人の行動とか、自分の状態を教えてもらっても、助けになりません。
次に、具体的行動を教えてくれることです。抽象的な行動を教えてもらっても、あんまり助けになりません。
それから、今の自分ができる行動を教えてくれることです。今というタイミング、今いる場所で、今いる人だけで、今ある道具だけを使ってできる具体的な行動でないと、行動に移せませんので、それほど助けになりません。
最後に、これは人によるかもしれませんが、簡単にできる行動を教えてくれることです。私の場合は、難しいこと、チャレンジングなことは、後回しにしたくなります。今すぐ、鼻歌を歌いながら5分くらいで終わる行動を教えてもらえると、やる気になります。
(2) タスク実行中の感情と脱線を処理できるタスクリスト
第2に、タスク実行中の感情と脱線を処理できることです。
タスクリストは、コンピュータのプログラムに似ています。きちんとしたプログラムを用意すれば、コンピュータはプログラムに沿って、粛々と働きます。同じように、きちんとしたタスクリストを用意すれば、私たちはそのタスクリストの沿って、粛々と働くことができます。
でも、人間はコンピュータではありません。タスクリストのとおりに処理することを邪魔する感情が浮かんできたり、タスクリストに書いてない脱線をしてしまうこともあります。感情と脱線に邪魔されると、タスクリストのとおり粛々と進めなくなります。
感情を排除する工夫や脱線を避ける仕組みを作ることも大切です。でも、感情と脱線をある程度仕方ないものと諦めて、それを織り込んだ対策を立てておく方が、たぶん、うまくいきます。
タスクリストは、タスク実行中の感情と脱線にも、わりとうまく対応できます。
感情は、その感情を受け止めれば、わりと落ち着きます。感情を受け止めるためのよい手段は、その感情を言葉で表現することです。タスクリストに、感情を文字でメモする場所を作っておけば、タスクリストは、タスク実行中の感情をうまく処理することを助けてくれるので、「タスク実行」を助けてくれます。
脱線が大きな問題になるのは、脱線自体もさることながら、脱線から戻ってくるときに、うまく戻れないことです。脱線する前の本線がどこだったかを見失うことで、大きな時間をロスします。であれば、脱線してもすぐに戻ってこれる仕組みを作っておくことは、よい脱線対策になります。タスクリストは、今取り組んでいる本線を明らかにしてくれるので、脱線後本線に戻るために役立つため、「タスク実行」と助けてくれます。
(掘り下げました→瞬時レビューと実行中メモで、タスク実行中の感情&脱線を処理する。感情と脱線からも価値を汲み取るタスクマネジメントシステム)
(3) 「タスクリストに書いてあることをやれば、うまくいく」「タスクリストに書いてあることをやらないと、酷い目に遭う」と確信できるタスクリスト
第3に、「タスクリストに書いてあることをやれば、うまくいく」「タスクリストに書いてあることをやらないと、酷い目に遭う」と確信できることです。
a.「タスクリストに書いてあることをやれば、うまくいく」
「タスクリストに書いてあることをやれば、うまくいく」と確信できれば、自分がすべきタスクの全体像が把握できます。やるべきタスクを忘れているのではないか、という心配がなくなるので、精神衛生上、とてもプラスです。
また、「タスクリストに書いてあることをやれば、うまくいく」と確信していれば、タスクリストの残りタスクが減ることは、イコール、自分がやるべき残りタスクが減ることです。「タスクリストに書いてあることをやれば、うまくいく」というタスクリストが0になったときの感慨はひとしおです。
「タスクリストに書いてあることをやれば、うまくいく」というタスクリストは、タスクを実行するやる気を大いに高めてくれますので、「タスク実行」を助けてくれます。
b.「タスクリストに書いてあることをやらないと、酷い目に遭う」
これと反対に、「タスクリストに書いてあることをやらないと、酷い目に遭う」と確信できるタスクリストも、「タスク実行」を助けてくれます。
やらないと酷い目に遭うぞ、という脅しのようなプレッシャーではありますが、効果は抜群です。
なお、この「タスクリストに書いてあることをやらないと、酷い目に遭う」という条件は、「タスクリストに書いてあることをやれば、うまくいく」に負けず劣らず、大切です。というのも、「タスクリストに書いてあることをやらないと、酷い目に遭う」という条件を失うと、タスクリストがオオカミ少年状態になり、タスクリストが力を失うからです。
たとえば、本当は10日後に提出すべき書類について、8日後の締め切りを設定する、とします。
こうすれば、タスクリストのとおりにやれば、10日後締切りのものが8日後には完成するので、「タスクリストに書いてあることをやれば、うまくいく」の条件を余裕で満たします。
でも、タスクリストに書いてあるとおりにやらなくても、2日は余裕があります。この2日の余裕のおかげで、タスクリストのとおりにやらなくても、直ちには、致命的な事態にはなりません。つまり、「タスクリストに書いてあることをやらないと、酷い目に遭う」の条件は満たしません。
すると、ついつい、「多少なら、タスクリストのとおりにやらなくても酷い目には遭わないや」と考えてしまいがちです。こうなると、タスクリストが教えてくれる締切りの重み付けが減ってしまいます。
これが、タスクリストがオオカミ少年になっているような状態です。タスクリストは、オオカミ少年になると、力を失います。「タスクリストに書いてあることをやらないと、酷い目に遭う」の条件を大切にして、タスクリストをオオカミ少年にしないことが大切です。
(4) 個別具体的なタスクがつながる先を「見える化」してくれるタスクリスト
第4に、個別具体的なタスクがつながる先を「見える化」してくれることです。
第1の条件で、私は、自分の具体的な行動をリストにしてくれるタスクリストが、タスクの実行を助けてくれる、と書きました。
たしかに、自分の具体的な行動をリストにしたタスクリストは、ひとつひとつのタスクを実行するハードルを下げてくれます。小さな一歩を踏み出すのは簡単なので、タスクを具体的な行動に分解することは、その一歩を踏み出す助けになります。
でも、他方で、タスクを個別具体的な行動に分解すると、何のためにタスクに取り組むのか、そのタスクが何につながっているのか、が見にくくなります。個別具体的な行動に分けることで、タスクの意義や目的を見失ってしまうことにもなりかねません。
タスクの意義や目的は、タスクを実行するやる気の源泉です。タスクの意義や目的を見失うと、タスクを実行するやる気やモチベーションも見失ってしまうこともあります。
この問題にも、タスクリストで対応できます。その個別具体的なタスクが、どんな意義や目的につながるのかを、タスクリストで可視化します。つまり、個別具体的なタスクがつながる先を「見える化」してくれるタスクリストです。
すべてのタスクは、何らかの案件に属しています。そこで、タスクに案件を登録すれば、そのタスクがどの案件につながるかがわかります。
一定割合のタスクは、自分の夢や価値観やミッションにまっすぐつながっています。そこで、タスクに夢や価値観やミッションを登録すれば、そのタスクを完了にすることで、自分の夢や価値観やミッションが少しずつ実現されることを、「見える化」できます。
(5) やったことを残してくれるタスクリスト
第5に、自分がやったことを残してくれるタスクリストです。
タスクリストは、自分がこれからやるべき行動をリストにしたものです。この意味で、タスクリストは、これからの未来のために存在します。
でも、タスクリストには、自分がこれまでに実行した行動も記録されます。この意味で、タスクリストは、これまでの過去のためのものでもあります。
そして、自分が実行したタスクを記録したタスクリストは、タスクを実行するやる気を高めてくれます。
ひとつは、「自分はこれだけの達成をしたぞ」と、自分が達成することをふり返ることができるからです。特に、ちょっと元気がないときなどに、自分を励ましてくれます。
もうひとつは、実行したタスクのリストが残ること自体のうれしさです。概して、私は、何かが残るタスクの方がやる気になります。そして、仮に何も残らないタスクをするとしても、タスクリストに自分がこのタスクを実行したという記録が残ると思うだけで、多少、やる気が湧いてきます。
そのため、自分がやったことをきちんと残してくれるタスクリストは、「タスクの実行」を助けてくれます。
(掘り下げました。→「やれば残る」から、やる気になる。(ToodledoとEvernoteによる「タスクの実行」のやる気を出すシステム))
3.「自分の「タスクの実行」を助けてくれるタスクリストの条件は何か?」と自分に問うこと
ここに書いた5つの条件は、私が、自分の性格や好みを考えて、どんなタスクリストだと、タスクを実行するやる気が出てくるだろうか、という観点で考えたものに過ぎません。そのため、誰にでも当てはまるものではないでしょう。
でも、これを考えてみて感じるのは、この作業自体は、誰にとっても効果があるんじゃないか、ということです。「自分の「タスクの実行」を助けてくれるタスクリストの条件は何か?」と自分に問うこと。これは、タスクを扱うシステムを考える上で、いろんなヒントを与えてくれます。
(なお、Toodledoで具体化すると、こんな感じです。→Toodledoを、「タスクの実行」のためのシステムへと、進化させる)
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