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WorkFlowyを「文章を書き上げるツール」として使うには、どんな課題を解消するとよいか

公開日: : 最終更新日:2016/05/05 WorkFlowy

1.なぜ、「WorkFlowyの役割は、文章の構成を組み立てるところまで」なのか?

ウェブ上に存在するWorkFlowyについての日本語情報を継続的にフォローすることが、最近の私の研究テーマのひとつです。

Tak.さんの『アウトライン・プロセッシング入門』以降、WorkFlowyについての日本語情報は、日々、ウェブ上に新しく生まれています。Googleアラートから届くいろんな人のいろんなWorkFlowyの使い方を、私は、日々、楽しんでいます。

きちんと分析したわけではないのですが、いろんな人の使い方をざーっと眺めていると、代表的な使い方のひとつは、「文章を書くこと」です。多くの方が、文章を書くためにWorkFlowyを使っています。

ですが、これもきちんと分析したわけではないのですが、そのうちの大部分の方は、文章を書き上げる最後の段階までWorkFlowyを使っているわけではありません。最初はWorkFlowyで書き始めるのですが、途中の段階で、Evernoteやテキストエディタなどの別のツールに切り替え、そのツールで文章を書き上げているようです。

つまり、「WorkFlowyの役割は、文章の構成を組み立てるところまで。構成を組み立てた後、文章を書き上げるまでの段階は、WorkFlowyではない別のツールを使う。」という役割分担です。

私にとっても、WorkFlowyの代表的な使い方は、「文章を書くこと」です。

でも、多くの方とはちがい、私にとって、WorkFlowyは、「文章を書き上げる」という段階までを担うツールです。

ここで私が考えてみたいのは、なぜ、多くの方は、「WorkFlowyの役割は、文章の構成を組み立てるところまで。構成を組み立てた後、文章を書き上げるまでの段階は、WorkFlowyではない別のツールを使う。」という役割分担でWorkFlowyを使っているんだろう、ということです。

この問いに対する抽象的な答えは、「文章を書き上げる」という役割のためには、WorkFlowyよりもふさわしいツールが存在するから、です。Evernoteやテキストエディタの方が、WorkFlowyよりも、「文章を書き上げる」には使いやすいから、WorkFlowyではなくEvernoteやテキストエディタで文章を書き上げるわけです。

つまり、「文章を書き上げるツール」としてのWorkFlowyには、Evernoteやテキストエディタと比べて足りないところがある、ということです。逆に言えば、これらの足りないところを解消すれば、WorkFlowyは、「文章を書き上げるツール」として、もっと強力になるかもしれません。

そこで、「文章を書き上げるツール」として見たときの、WorkFlowyの足りないところを考えてみます。

2.なぜ、WorkFlowyは、「文章を書き上げるツール」として、使いにくいのか?

多くの方が、「文章を書き上げるなら、WorkFlowyよりも他のツールの方がいい」と考える理由を、私なりに考えてみたところ、次の4つが浮上しました。

(1) 見た目が「文章」ではなく「リスト」(ブレットの存在)

まず、見た目の問題です。

WorkFlowyの見た目は、「文章」というよりも、「リスト」です。

1行1行の冒頭に「・」印のブレットがついていて、段差になっています。

この見た目は、「文章を書いている」という感じがしません。

見た目の問題なので、感覚的なことかもしれません。でも、見た目の問題は、軽視できません。

(2) 機能が足りない

次に、機能の問題です。

WorkFlowyは、多くの「文章を書くツール」が普通に備えているいくつかの機能を、備えていません。

いくつか例示します。

a.置換機能

WorkFlowyは、置換機能を持っていません。

置換機能は、文章全体の用語を統一するためや、自分の覚えとして書き入れたコメントをまとめて削除するためなどに便利なのですが、WorkFlowyでは使えません。

b.更新履歴

WorkFlowyは、更新履歴を持っていません。

文章を書くことは、行きつ戻りつです。昨日修正したところを元に戻したくなることがよくあります。このとき、「文章を書くツール」が更新履歴を把握してくれていると、簡単に元に戻せるのですが、WorkFlowyではこれができません。

c.校閲機能

WorkFlowyは、校閲機能を持っていません。

スペルチェック機能やコメント機能もありません。

また、文字に色を付けたりマーカーを引いたりすることもできませんので、修正箇所を目立たせるための手段も限定されます。

(3) 入力・選択の挙動に癖がある

それから、入力や選択の挙動の癖です。

WorkFlowyは、テキストを入力したり選択したりする挙動に、わりと強い癖があります。慣れないと、いちいち違和感を感じて、引っかかります。

いくつか例示します。

a.エンターキーの挙動

WorkFlowyのエンターキーは、かなり癖のある挙動をします。

基本的には、「改行=新規トピック作成」です。

しかし、トピックにテキストが入力されているのか否かで、挙動が変わります。

さらに、テキストが入力されているとして、カーソル位置がトピック冒頭なのか、トピックの途中なのか、トピックの末尾なのかでも、挙動が変わります。

WorkFlowyで文章を書くとき、エンターキーはかなり頻繁に使うキーだと思うのですが、このエンターキーの挙動に癖があるため、しばしば戸惑い、違和感を感じます。

b.トピックをまたいだ上下カーソル移動の挙動

上下のカーソル移動の挙動も、癖があります。

上下のカーソル移動でトピックをまたぐと、カーソル位置がトピック冒頭になるのです。通常のテキストエディタとちがうため、慣れないうちは、しばしばカーソル位置を見失います。

c.テキスト選択の挙動

多くのツールでは、Shiftを押したまま上下左右を押すことで、テキストを選択できます。WorkFlowyも同じです。でも、このテキスト選択のルールに、癖があります。

特に、Shiftを押したまま上下を押すことによるテキスト選択です。

たとえば、トピック末尾の行にカーソルがあるときに、Shift+下を押すと、カーソル位置からトピック末尾までを選択します。次のトピックの該当箇所まで、ではありません。この状態でもう一度下を押すと、カーソルが置かれていたトピック(及びその子トピック)全体の選択となります。

テキスト選択は、キーボードから文章を書くために大変重要なのですが、このテキスト選択の挙動に癖があるため、慣れないうちは、しばしば意図していない範囲を選択することになります。

(4) 新規トピック数制限が窮屈

ちょっと別の観点ですが、無料アカウントの新規トピック数制限があると、WorkFlowyを「文章を書き上げるツール」として使うことの、大きな障害になります。

無料アカウントには、標準で1ヶ月250個という新規トピック数制限が設けられています。WorkFlowyは、トピック内での改行ができませんので、(noteを使わない限り、)一度改行するたびに、新しいトピックをひとつ立てることになります。そのため、少し長めの文章を書くと、あっという間に100や200のトピックを消費してしまいます。

250個という制限があると、心理的に窮屈で、自由にのびのびと文章を書くことができません。

これも、WorkFlowyが「文章を書き上げるツール」として使いにくい理由になりえます。

3.WorkFlowyを「文章を書き上げるツール」として使うための、課題解消の道筋

さて、仮に、WorkFlowyが「文章を書き上げるツール」として使いにくい理由が、上に書いた4つだとすると、この4つを解消すれば、WorkFlowyは、もっと使いやすい「文章を書き上げるツール」になります。

そこで、4つそれぞれについて、課題を解消する道筋を描いてみます。

(1) 見た目の課題を解消するには

a.慣れる

見た目の問題は感覚的な問題なので、慣れれば気にならなくなるかもしれません。

書き手が気にしさえしなければ、この問題は問題ではありませんので。

b.Stylishで見た目をカスタマイズする

別のアプローチとしては、アドオンStylishで見た目をカスタマイズする、という方法もあるかもしれません。

ただ、「・」のブレットは、Zoomやメニューという役割を与えられているため、非表示にしてしまうと、操作上の問題が生じるかもしれません。

c.WorkFlowyへの機能追加

OmniFlowという新進気鋭のクラウドアウトライナーは、ブレットを非表示にして、文章のように表示する機能を持っています。

この機能がWorkFlowyに追加されれば、この見た目の課題は根本的に解消されるような気がします。

(2) 機能の課題を解消するには

機能の不足は、別の機能で補うのがよいように思います。

a.置換機能

用語の修正は、検索機能である程度補えるかもしれません。WorkFlowyの検索機能は、検索結果画面のまま書き進めることができます。置換したい用語を検索して、検索結果画面のまま修正をすれば、用語の統一作業ははかどります。手作業ではありますが。

コメントの一括削除は、コメントにnoteを使うのがよいように思います。noteを使えば、noteをExport対象から外しさえすれば(コメントアウトのような感じ)、削除しなくても問題ありません。

b.更新履歴

手動で文章全体を複製することで、更新履歴を残すことができます。

また、削除や修正する部分を一時的に避難させるためのトピックを立てて、削除したり修正したりするかわりに、そのトピックの下に移動させれば、復活させるのも容易です。

『「超」整理法』などで、提唱されていた「子ファイル方式のゴミ箱」に近い役割を果たします。

c.校閲機能

スペルチェックは、ブラウザの機能やアドオンでなんとかなるかもしれません。私自身はあまり使っていないので、研究してません。

コメント機能は、noteで対応可能です。

テキストの一部を色付けしたりして目立たせるためには、太字・イタリック・アンダーラインという3つの書式を活用するのがよいです。デフォルトでは味気ない場合は、Stylishでカスタマイズすれば、3種類のデザインを用意できます。

(3) 入力・選択の挙動の癖の課題を解消するには

入力・選択の挙動は、癖を正確に理解して習熟する、がよいように思います。

エンターキーの挙動も、カーソル移動も、テキスト選択も、慣れないうちは、違和感を感じまくりです。が、慣れてしまうと、かえって便利です。

慣れるためには、挙動を正確に理解した上で、何度もくり返し使うことで習熟するのが早道です。

正確な理解のためにも、これらの挙動を、あらためて丁寧に説明したいなと思っています。

(4) 新規トピック数制限の窮屈さの課題を解消するには

新規トピック数制限の窮屈さは、有料のWorkFlowy Proへのアップグレードが根本解決です。

WorkFlowy Proの説明

4.WorkFlowyを「文章エディタ」へと育てる

私は、もともと、文章を書くことが好きでした。でも、WorkFlowyで文章を書くようになって、文章を書くことが、もっともっと好きになりました。

これからも、WorkFlowyで文章を書くこと、WorkFlowyで文章を書き上げることについて、試行錯誤をくり返し、その結果を文章にまとめていくつもりです。

こうして、WorkFlowyが「文章エディタ」へと育つといいなと思っています。

WorkFlowyは「文章エディタ」になりうるか?(WorkFlowyの生態系を育てる)

プログラマーのエディタのような物書きのエディタ:Word Piece >>by Tak.:So-netブログ

お知らせ

このエントリは、その後、加筆修正などを経て、書籍『クラウド時代の思考ツールWorkFlowy入門』の一部分となりました。

書籍『クラウド時代の思考ツールWorkFlowy入門』の詳細目次と元エントリは、次のとおりです。

『クラウド時代の思考ツールWorkFlowy入門』の詳細目次と元記事の紹介

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