「枠の外に混沌さを排出することによって、内部の秩序を高める」という動きは、日常の中に、当たり前のように存在する。
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単純作業に心を込める
先日、これを書きました。
「個人のための知的生産システム」内部の秩序を維持するための、2つのアプローチ
この記事で書いたポイントのひとつは、「枠の外に混沌さを排出する」というアプローチによって、「個人のための知的生産システム」内部の秩序を高めることができる、ということです。
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話は変わりますが、このまえの連休、我が家は家族旅行に出かけました。
とても楽しかったのですが、子連れ旅行だったこともあり、しばしば、何かとぐちゃぐちゃな状態になりました。
たとえば、移動中の車内。鼻水が出たり、お茶がこぼれたりするたび、ゴミが増えます。たとえば、ホテルの夕食ビュッフェ。料理のために使ったお皿、手や口を拭く使い捨てのおてふき、子供用の紙エプロンなどで、テーブルの上はあっというまに雑然となります。
でも、こんなぐちゃぐちゃも、そのたびに、なんとかなります。
たとえば、車内で増えたゴミは、ホテルに到着して車から降りるタイミングで、全部まとめてビニール袋に入れて車内から持ちだし、ビニール袋ごとホテルのゴミ箱に捨てました。
たとえば、夕食ビュッフェの雑然としたテーブルは、食べ終わったお皿を積み重ね、使い終えたおてふきやエプロンをお皿の上に積んでおいたら、ホテルの方が全部まとめて回収してくださいました。
おかげで、私たちは、朝にはいい気持ちで車に乗り込んで出発できましたし、料理を食べ終えた後には新たな気持ちでデザートを取りに行くことができました。
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いずれも、子連れの家族旅行としてはすごく当たり前の出来事です。ですが、よく見てみると、ここにも、「枠の外に混沌さを排出する」という動きがあります。
車という枠の外にゴミという混沌さを排出することで、車内の秩序を回復する。
テーブルの上という枠の外に、食べ終わったお皿や使い終わったおてふきという混沌さを排出することで、テーブルの上の秩序を回復する。
どちらも、「枠の外に混沌さを排出することによって、内部の秩序を高める」という動きです。
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「枠の外に混沌さを排出することによって、内部の秩序を高める」ということ。個人的には、これはかなり大きな大発見でした。
以前の私は、内部の秩序を高めるためには、最初から混沌さが発生することがないように、全体の秩序を念頭に置いて、計画的にひとつひとつ組み立てていかなければいけない、と考えていました。混沌さは発生させるべきではない悪だ、と思っていたわけです。
でも、「枠の外に混沌さを排出する」というアプローチは、ちがいます。混沌さの発生自体は織り込み済みにして、発生した混沌さをどんどん枠の外に排出し続けることを重視します。そして、混沌さを枠の外に排出することを続ける集積として、少しずつ、枠の内部の秩序を高めます。
混沌さに対する発想が根本的にちがいます。この発想の転換に、私は革命的なものを感じ、大げさではありますが、ひとつのパラダイムシフトだと考えていました。
ところが、私にとってのパラダイムシフトだった「枠の外に混沌さを排出することによって、内部の秩序を高める」という動きは、よく見てみれば、実は、日常の中のいろいろなところに当たり前のように存在しています。
そんなことに気づいた家族旅行でした。
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