[『サピエンス全史』を起点に考える]都市を基本単位として生きることで、グローバル帝国に参加する。
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単純作業に心を込める
1.グローバル帝国に参加するには?
『サピエンス全史』の中に、「グローバル帝国」という記述が出てきます。
概要、
- 人類は統一に向かっている。
- 人類の統一を推し進める存在のひとつが帝国だが、現代の帝国は、国家を超えたグローバル帝国である。
- 今、世界中の人たちが、グローバル帝国からの呼びかけを受け、多くの人がグローバル帝国を選択している。
というようなことが書いてありました。
最初に読んだとき、私はこの「グローバル帝国」が全然ピンと来ませんでした。でも、なにやら大事そうなことでしたので、じっくりと考えてみました。
そして、とりあえずですが、「国家という単位を特別視しない」ということにたどり着きました。
ざっくりいえば、国家という単位を特別な単位だとは考えずに、物事を考えたり判断したりする、ということなのではないかと思います。場所の単位は階層的なのですが、少し前までの社会は、国という単位を特別な単位として扱っていました。でも、グローバル帝国を選ぶサピエンスたちは、国という単位を、国ではない他の単位(たとえば、行政区画、都市圏、州、(アジアなどの)地域、全世界)よりも特別な単位だとは考えません。
●
個人的に、「グローバル帝国からの呼びかけに応える」ということについて、わりと魅力を感じます。機会があれば、「グローバル帝国に参加する」生き方をしてみたい。
ところが、「国家という単位を特別視しない」というと、まずは国家を超えた大きなスケールで生きること、たとえば、世界を股にかけて事業を展開するとか、世界中にいる友達と交流するとか、来年カナダに引っ越して10年後くらいにはフィンランドに移住するとか、シンガポールの永住権を取得するとかが思い浮かぶのですが、いかんせん、こんな諸々と自分の生活との結びつきは、全然ピンときません。私は旅行以外で海外に行ったことがなく、日本国外での総滞在日数はせいぜい1か月くらいですし、まともに使える言語は日本語だけです。日本国内にどっぷりと浸かって生きています。
だから、逆方向を考えてみます。つまり、国家よりも小さな単位を基本として物事を把握する、という戦略です。もっとも、個人単位や家族単位も国家よりも小さな単位ではありますが、わたし個人や我が家を単位にして世界レベルの物事を考えるのも、国家を超えたスケールと同じくらい、よくわかりません。そこで、都市単位です。
つまり、私が自分自身の生き方として模索したい「グローバル帝国からの呼びかけに応え、グローバル帝国に参加する」ための戦略は、国家という単位を特別視せず、国家よりも小さな単位である都市を基本として物事を考える、というあり方です。これなら、自分自身の今後の人生イメージとしてそれなりに実感が湧きますし、空中戦ではない地に足のついた思考になりそうな気がします。
2.『クリエイティブ都市論』を読む
そこで、都市単位で世界を把握する参考になりそうな本を、Kindleストアで探してみたところ、よさそうな本を見つけました。リチャード・フロリダ著の『クリエイティブ都市論』です。
『クリエイティブ都市論』は、「どこに」住むかという選択が人生のあらゆる側面に対して大きな影響を及ぼすことを指摘します。
職業やキャリアの選択、あるいは伴侶を見つけることが人生にとってどれだけ重要か、私たちのだれもが認識している。すなわち「何を」「だれと」行うかという選択だ。
そのうえで第三の大きな選択となるのは、私たち自身と家族が「どこに」住むかということである。
この第三の決断は、人生のあらゆる側面に対して重大かつ長期的な影響をおよぼす。否、住む場所こそ職業的成功や仕事上の人脈から、幸福感や快適な暮らしに至るまでの全てを決定するのである。
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そして、今の世界が、国よりもむしろ都市を単位として動いていることを指摘します。(ただし、同書が基礎単位と主張するのは、都市よりも大きな「メガ地域」です。)
これは現代の基本的な経済単位である「メガ地域」の台頭という、グローバル化による世界経済の構造変化を象徴しているのだ。
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メガ地域は、クリエイティブな人が集積することによって、世界の科学業績やイノベーションの大部分を生み出します。そして、これらを通じて、世界を牽引します。
そこでは人々の創造性が最大限に活用され、世界的な科学業績やイノベーションの大部分を生み出している。
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しかし実際には、交易、商取引、イノベーションといった経済活動は常に都市から生まれてきた。そして今日ではメガ地域が経済の成長と発展の中心的な原動力となっている。
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都市単位で世界を見ることは、国単位で世界を見ることよりも、よりうまく世界を説明します。たとえば、アダム・スミスの分業論や、リカードの比較優位論も、国家単位よりも都市単位の方が、より現実をうまく説明する、というわけです。
「国家という単位を特別視せず、都市単位で考える」という戦略で生きるには、まさにピッタリの本ではありませんか!
●
もっとも、『クリエイティブ都市論』が基礎単位とするのは、都市よりも大きな「メガ地域」です。日本で言えば、「広域東京圏」「大阪=名古屋」「広域札幌」「九州北部」の4つが「メガ地域」なので、私たちがイメージする都市よりも、ずいぶんと大きな範囲になります。
日本には四つのメガ地域があり、そのうちの二つは世界最大級の規模を誇る。
「広域東京圏」の人口は五五〇〇万人、LRPは二・五兆ドルで世界ナンバーワンである。ここは金融やデザイン、ハイテクの分野で世界を牽引している。
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日本の第二のメガ地域は大阪から名古屋にかけた「大阪=名古屋」で、三六〇〇万人もの人々が一・四兆ドルのLRPを産出する。この地域が得意とするのは、ハイテク関係のイノベーションと製造業で、自動車から最先端のエレクトロニクスまで網羅している。
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名古屋で生まれ育ち、関西でも比較的長く生活していた経験からすると、「大阪=名古屋」という枠組みで関西から名古屋までを一括りで捉える視点には新鮮さを感じるのですが、たしかに、地理的な距離からすれば、名古屋は大阪とセットで考えたほうがよいのかもしれません。
もっとも、日本における4つのメガ地域は、互いにそれほど遠く離れていません。また、交通網も整っており、たとえば大阪=名古屋=東京は、完全に日帰り圏内です。そこで、4つまとめてひとつのメガ地域と捉えることもできるのではないか、とも感じます。
『クリエイティブ都市論』も、基本的には同趣旨です。
日本の場合、メガ地域の境界線がはっきりしなくなってきている。世界初の統合された「スーパー・メガ地域」への道を歩み始めているのかもしれない。すなわち地理的に重なり合い、人口一億人以上、LRP四・五兆ドルの巨大な単一経済圏が構成されつつあるのだ。
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となると、日本の名古屋に住む私が、国家ではなくメガ地域を基本単位として生きる、というのは、どのような意味を持つのでしょうか。日本という国家の単位と、日本全体のスーパー・メガ地域の単位は、地理的には、だいたい重なります。とすれば、国家単位ではなくメガ地域単位を基本とするといっても、結局同じなのではないでしょうか。
たしかに地理的には同じなのですが、でも、おそらく違いが出てきます。都市単位で物事を考えるときに大切なのは、都市に人が集積することによって生まれるイノベーションや知の進歩です。都市単位を基本として考えることで、自分の身近なところから、知の集積効果を生み出していく、ということにつながるんじゃなかろうかと思います。
3.都市を基本単位として、グローバル帝国に参加する
さて、今考えているのは、私が「グローバル帝国に参加する」という生き方をするための戦略でした。
もう少し具体的にいえば、「名古屋という日本の田舎都市で、ワーキングパパとして家族と一緒に平和な毎日を送り続けながら、無理なく自然にグローバル帝国に参加するには、どうしたらいいだろうか?」という、少々虫の良すぎる問いが、ここでのテーマです。
日本という国家の枠にとらわれず、全世界でビジネスをする生き方には、あんまり現実感を感じません。でも、国家よりも小さな都市を基本単位とする生き方には、可能性を感じます。
となると、都市を基本単位として、具体的にどんなことをしていくのかが重要です。
『クリエイティブ都市論』によれば、都市の力は、クリエイティブな人のクリエイティブなところが集積することから生まれるイノベーションや知の進歩によって生み出されます。今の生活を大切にすることと連続した将来の中で、自分にどんなことができるのか、試行錯誤してみます。
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