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私は、こんな道具を使って、文書を作りたい。(その2・道具の枠組み)

公開日: : 書き方・考え方

WorkFlowyやUlyssesからヒントを得て、「私は、こんな道具を使って、文書を作りたい。」ということを、多少抽象的に考えています。

前回[私は、こんな道具を使って、文書を作りたい。(その1・抽象的な基本思想編)]は、

  • 1.背景
  • 2.抽象的な基本思想

を書きました。

抽象的な基本思想は、

  • (1) 「ずっと完成しないで変化し続ける有機体」から「暫定的な作品群」を「切り出す」
  • (2) (文書の見た目を整えるのとは独立に、)文書の中に「情報の構造」を構築することだけに集中する
  • (3) 混沌とした全体・秩序ある一部分・情報の出し入れ
  • (4) 「今この瞬間」を扱うことの積み重ねが、結果として過去の蓄積となる
  • (5) 文書作成の「上の階層」と一体的に文書を作成する

というものでした。

今回は、文書作成の道具が備える基本的な枠組みを考えます。

抽象的な基本思想のうち、

  • (1) 「ずっと完成しないで変化し続ける有機体」から「暫定的な作品群」を「切り出す」
  • (2) (文書の見た目を整えるのとは独立に、)文書の中に「情報の構造」を構築することだけに集中する
  • (3) 混沌とした全体・秩序ある一部分・情報の出し入れ

を反映するために、どのような枠組みをとるか、という点に関連します。

3.「私は、こんな道具を使って、文書を作りたい。」の基本的な枠組み

(1) 混沌とした全体としてのシングルライブラリの中に、文書となる一部分を区切る

a.混沌とした全体としてのシングルライブラリ

道具の基本枠組みは、シングルライブラリです。

シングルライブラリは、その道具が扱うすべてのデータをひとつのライブラリで管理します。WorkFlowyとUlyssesはシングルライブラリですし、Evernoteもシングルライブラリです。

Evernote、WorkFlowy、Ulysses、OmniOutliner

このシングルライブラリは、次の3つの意味で、文書作成の全体を扱います。

  • 自分が作成するあらゆる種類の文書をひとつのライブラリで管理する
  • 作成される文書そのものだけでなく、文書作成の「上の階層」も扱う
  • 「今この瞬間」の文書作成作業だけでなく、今後やるべき文書作成のタスクや、過去にやった文書作成のログも、カバーする

これらすべてを含む全体は、十中八九、混沌とします。でも、かまいません。こんな混沌とした全体が、シングルライブラリです。

b.シングルライブラリ全体の中に、文書となる一部分を区切る

文書を完成させるには、その文書の中に「情報の構造」を組み立てる必要があります。しかし、シングルライブラリ全体は混沌としています。そこで、この全体の中に、文書となる一部分を区切る必要があります。

区切り方は、いろいろありえます。たとえば、Evernoteはノートで区切り、Ulyssesはシートで区切り、WorkFlowyはトピックで区切ります。

これらは、大きく分けて、2つの考え方があります。

ひとつは、Evernoteのノート、Ulyssesのシートです。EvernoteのノートとUlyssesのシートは、これらをグルーピングするために別の単位を用います(Evernoteのノートブック、Ulyssesのグループ)。逆にいえば、ひとつの文書を区切るために、特別な単位を用意している、といえます。

これに対して、WorkFlowyのトピックは、トピックをグルーピングするために用いる単位もトピックです。ひとつの文書となる範囲の区切り方との関係で言えば、文書となる一部分を区切るためにも、他と同じ単位を用いている、といえます。

つまり、

  • 文書となる一部分を区切るために、特別な単位を用意する(Evernoteのノート、Ulyssesのシート)
  • 文書となる一部分を区切るためにも、他と同じ単位を用いる(WorkFlowyのトピック)

という2つの考え方です。

では、どちらの考え方がよいでしょうか。

それぞれ一長一短なのですが、WorkFlowy流の「ただひとつの単位で情報を区切り、ひとつの文書を区切る単位も特別扱いしない」という思想は、あるひとつの文書を、

  • その文書よりも小さなたくさんの文書の集合体であると同時に、
  • 他の文書と一緒になって、その文書よりも大きなひとつの文書を構成するひとつの要素でもある

という2つの側面を持つものとして理解します。

WorkFlowyは、文書作成に、どんな革命をもたらすか?

この見方を私は、『アウトライン・プロセッシング入門』から学んだのですが、文書をこのような二面性を持つ存在として捉えると、文書作成という営みが豊かになるような気がしています。だから、私は、WorkFlowy流の「ただひとつの単位で情報を区切る」というあり方を採用したいと考えています。

「情報を区切る単位はトピックだけでいい」というWorkFlowyの思想

c.小括

ということで、私が文書作成に使いたい道具は、

  • 文書作成に関する全体を、シングルライブラリで扱う
  • シングルライブラリ全体における一部分を、文書になる枠で区切る
  • シングルライブラリを区切る単位は、ただ一種類だけ

という枠組みを持っています。

(結局、WorkFlowyそのまんまですね。)

(2) ひとつの文書内部に、どのように「情報の構造」を組み立てるか

私は、文書の見た目を整えることから独立に、文書の中にある「情報の構造」を組み立てることができる道具を使って、文書を作りたいと思っています。

文書の中に「情報の構造」を組み立てるには、どのような方法があるでしょうか。

  • 項目や接続詞などの日本語表現によって構造を作る方法
  • 情報の単位の組み立て方によって構造を作る方法
  • テキストをマークアップすることで構造を作る方法

という3つの方法があるのではないかと思います。ひとつずつ考えてみます。

a.項目や接続詞などの日本語表現によって構造を作る方法

文書の中の「情報の構造」は、日本語表現によって組み立てることもできます。

まず、項目と項目番号です。

次に、接続詞です。

項目・項目番号と接続詞をきちんと使えば、それだけで、文書の中に「情報の構造」を組み立てることができます。

日本語表現によって「情報の構造」を組み立てるために大切なことは、快適に日本語を書くことができることです。だから、文書作成のための道具は、(「情報の構造」の観点からも、)快適に日本語を書ける道具でなければいけません。

b.情報の単位の組み立て方で、構造を作る

情報の単位とは、情報を管理する単位です。Evernoteはノートやノートブックで情報を区切り、Ulyssesはシートやグループで情報を区切り、WorkFlowyはトピックのみによって情報を区切ります。アナログの知的生産技法でいえば、ノート、情報カード、こざねなどが、情報の単位の例です。

情報の単位は、ひとつの文書になる範囲を区切る役割も果たすのですが、同時に、ひとつの文書の中に「情報の構造」を組み立てるための役割も果たします。

たとえば、Ulyssesは、シートを任意の順序で並べ替えて配置できる上、複数のシートをまとめてExportできるので、複数のシートを組み合わせてひとつの文書を作る運用がとてもやりやすいです。そのため、Ulyssesにおけるシートは、(ひとつの文書になる範囲を区切る機能を果たすのと同時に、)ひとつの文書の内部にある「情報の構造」を組み立てるための機能も果たします。

しかし、やはりWorkFlowyのトピックは、別格です。

情報を区切る単位がトピックしか存在しないこともあり、WorkFlowyの場合、ひとつのトピックがひとつの文書と1:1で対応するというケースが、ほとんど考えられません(トピックのnoteをテキストエディタのように使えば、それもありえなくはありませんが、それではWorkFlowyを使う意味がありません)。

そのうえ、トピック群を無限の階層構造に組み立てることができるため、トピックの配置だけで、概念のレベル関係や包含関係・対立関係など、多彩な「情報の構造」を表現できます。

このように、WorkFlowyで文書を作成すると、自然と、トピックの階層構造によって、ひとつの文書の内部にある「情報の構造」を組み立てることになります。

私は、WorkFlowy流の「トピックの配置によって文書内部の「情報の構造」を組み立てる」という方針に可能性を感じています。そこで、情報の単位を組み立てて「情報の構造」を作るために、トピック階層構造を活用したいと思います。

そこで、文書を作成する道具に対しては、思い通りの操作で快適にトピック階層構造を組み立てることができることを期待します。

(トピック階層構造が表現できるのは、階層構造・木構造だけです。次元でいえばせいぜい1.5次元に過ぎず、2次元のマトリクス構造やそれ以上の次元の複雑な構造を表現することはできません。しかし、文書の主要コンテンツである文章は1次元の表現ですし、文書そのものも紙という2次元表現が限界なので、情報の単位を組み立てることによる「情報の構造」の表現という点では、階層構造だけを快適に表現できれば、それで十分です。)

c.マークアップによって、テキストに構造を付与する

「情報の構造」は、文書内部にあるテキストにメタ情報を付与することによっても、組み立てることができます。たとえば、「ここが文書のタイトルです。」「ここが※1に対する注釈です。」といったメタ情報で、テキストをマークアップするわけです。

この方法の典型は、HTMLです。HTMLはマークアップ言語であり、テキストをタグで囲うことで、テキストに情報の構造を付与します。

文書マークアップの基本 – HTML5 入門

HTMLによって付与できる情報の構造は、とても多彩です。また、同じ思想をベースとする、より汎用的な言語であるXMLを用いれば、HTMLよりもさらに複雑な構造を厳密に記述することができ(るような気がし)ます。

HTMLやXMLによるマークアップのために、特別な道具は必要ありません。テキストエディタで十分です。でも、テキストエディタだけでマークアップするのは、よほど慣れていないと大変です。また、マークアップしただけのテキストは、人間が「情報の構造」を直感的に理解するのが難しいため、「情報の構造」の理解を助けてくれる機能があると助かります。

そこで、文書作成の道具に対しては、

  • HTMLやXMLなどを記述することを助けてくれる機能
  • マークアップによって組み立てられた「情報の構造」を理解することを助けてくれる機能

を期待したいところです。

d.小括

というわけで、ひとつの文書内部に「情報の構造」を構築するという観点から、私は、文書作成の道具に対して、

  • 日本語を快適に書ける
    • 日本語表現によって「情報の構造」を組み立てるため
  • トピックを動かし、トピックを階層構造に組み立てることができる
    • 情報の単位によって「情報の構造」を組み立てるため
  • テキストを簡単にマークアップでき、マークアップによって示された「情報の構造」の理解を助けてくれる
    • マークアップによって「情報の構造」を組み立てるため

という3つを期待します。

(続く)

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