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『サピエンス全史』からブロックチェーンへ

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1.『サピエンス全史』

2016年も、たくさんのよい本と出会うことができました。多くの本は、Twitterでゆるやかにつながる方々との縁によって発見し、Kindleで読みました。また、ブログに書く可能性を感じながら読んだことで、より多くの収穫を得ることができました。今年の読書も、TwitterとKindle(Amazon)とブログから、たくさん与えられたように思います。

さて、そんな2016年に読んだ本たちの中で特別な一冊はなにかといえば、『サピエンス全史』です。倉下忠憲さんが、『サピエンス全史(上)』を読み終わったとたんに『サピエンス全史(下)』を購入したことをTwitterでつぶやいていたのですが、それをるうさんが引用した次のTweetから、私はこの本の存在を知りました。

即、Kindleで購入し、以後、今日に至るまで、少しずつ読み続けています。

スケールの大きな本です。何度か通読しましたが、そのたびに、いろんなことを考えます。なかでも、今、私が強い関心を持っているのは、信頼です。

たとえば、「第10章 最強の征服者、貨幣」の中に、次のような記述があります。

人々が進んでそういうことをするのは、自分たちの集合的想像の産物を、彼らが信頼しているときだ。信頼こそ、あらゆる種類の貨幣を生み出す際の原材料にほかならない。

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したがって、貨幣は相互信頼の制度であり、しかも、ただの相互信頼の制度ではない。これまで考案されたもののうちで、貨幣は最も普遍的で、最も効率的な相互信頼の制度なのだ。

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また、「第16章 拡大するパイという資本主義のマジック」には、こんな一節があります。

人類は何千年もの間、この袋小路にはまっていた。その結果、経済は停滞したままだった。そして近代に入ってようやく、この罠から逃れる方法が見つかった。将来への信頼に基づく、新たな制度が登場したのだ。この制度では、人々は想像上の財、つまり現在はまだ存在していない財を特別な種類のお金に換えることに同意し、それを「信用」と呼ぶようになった。この信用に基づく経済活動によって、私たちは将来のお金で現在を築くことができるようになった。信用という考え方は、私たちの将来の資力が現在の資力とは比べ物にならないほど豊かになるという想定の上に成り立っている。将来の収入を使って、現時点でものを生み出せれば、新たな素晴らしい機会が無数に開かれる。

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社会の中で貨幣や資本主義が果たしている役割を、信頼という観点から、明快に説明されています。これまで私は、貨幣や資本主義や経済を、信頼という観点から自覚的に考えたことがなかった気がします。物事の味方がくるりとひっくり返るような感覚を覚えました。

そもそも、『サピエンス全史』は、サピエンスが最強の座に上り詰めることができた要因を、「無数の赤の他人と著しく柔軟な形で協力できる」ことに求めています。

ところがサピエンスは、無数の赤の他人と著しく柔軟な形で協力できる。だからこそサピエンスが世界を支配し、アリは私たちの残り物を食べ、チンパンジーは動物園や研究室に閉じ込められているのだ。

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貨幣や資本主義についての記述は、サピエンス全体の中に張り巡らされた信頼のネットワークが、サピエンスが「無数の赤の他人と著しく柔軟な形で協力できる」ことを可能にしている、と論じているのだと私は理解しているのですが、この道すじは、とても腑に落ちるものでした。

『サピエンス全史』を読むと、サピエンスのこれまでが、長大なボリュームで自分の中に流れ込んできます。そして、ここから自然と、サピエンスのこれからを考えます。「サピエンスは、これから、どのように変化していくのだろうか」という問いです。

この問いは、帝国、宗教、幸福など、本書が扱うたくさんの対象それぞれについて考えることができます。信頼についても同じです。

これまでのサピエンスは、信頼を増やしてきました。大きな傾向として、サピエンス全体の中に存在する信頼の総量が増えてきたことは明らかです。

では、これからのサピエンスの、信頼についての変化は、どのようなものになるのでしょうか。

直感的には、もっと増えるんだろうな、と思います。それも、これまでとは異次元のペースで増えるような気がします。サピエンス全体の中に存在する信頼の総量はどんどん増えていき、それにともなって、サピエンスの「無数の赤の他人と著しく柔軟な形で協力できる」という強みも、強化され続けていくんじゃないかと感じます。

根拠のない楽観論かもしれません。でも、ここ数年間で、インターネットやウェブを通じて自分自身が体験してきたもろもろから、私は、「この世の中は、無数の赤の他人を信頼しやすい方向に進んでいる」と確信しています。

この傾向を促しているのは、おそらく、インターネットやウェブを支えるテクノロジーです。たとえば、HandyFlowyとMemoFlowyという2つのアプリは、こんな傾向やテクノロジーが存在することを示すひとつの具体例ではないかと思います。

『サピエンス全史』を読みながら、サピエンス全体に存在する信頼の総量が増えていく傾向のようなものを感じて、私は、これからのサピエンスのことがもっともっと楽しみになりました。

2.ブロックチェーン

さて、話は変わります。

ブロックチェーンって、ご存知でしょうか。ビットコインを提唱した「ナカモトサトシ論文」によってはじめて世に出たアイデアで、ビットコインを支えるテクノロジーです。連続するデジタル署名のチェーンをネットワークで共有することで、中央機関の存在を前提とすることなく、信用できる取引を実現します。

私がブロックチェーンの仕組み(のごく初歩的なところ)を知ったのは、つい1ヶ月ほど前です。正確な仕組みはまだまだ全然理解しきれていませんが、ごく初歩的なところをのぞいただけで、思わず、「これはすごい」とため息が出ました。

ブロックチェーンは、ビットコインを支えるテクノロジーです。でも、ビットコインにしか使えないテクノロジーではありません。

ビットコインにおいてブロックチェーンが果たしている役割は、ビットコイン取引の信用性たを裏付けることです。中央を持たないネットワーク全体でブロックチェーンを共有することで、第三者機関なしに取引の信用性を裏付けることができます。

この機能は、ビットコインの取引だけに限られるわけではありません。ブロックチェーンは、信頼のための汎用的なテクノロジーになりえます。

特定の相手との関係における信頼が十分でないとき、私が感じる不安は、次の2つです。

  • 私は、この相手を、信頼してもよいのだろうか?
  • 私は、この相手から、信頼されることができるのだろうか?

これに対して、その相手との関係にブロックチェーンを適用できれば、

  • 私は、この相手を、信頼してもよい(ことをブロックチェーンによって確認できる)
  • 私は、この相手から、信頼されることができる(だけの裏付けをブロックチェーンによって明らかにできる)

ということになります。

多くの場面で、ブロックチェーンは、こんな2つの不安を解消できる可能性を持ちます。

『サピエンス全史』を読んで、私は、サピエンス全体の中に存在する信頼の総量がもっともっと増えるとよい、と願いました。と同時に、サピエンス全体の中に存在する信頼の総量は、これからもっと増えるはずだと感じました。

ブロックチェーンは、そんな感覚を具体的な形にしてくれた存在です。ブロックチェーンが貨幣や資本主義を超える信頼のネットワークを生み出すことによって、サピエンス全体に存在する信頼の総量が、これから爆発的に拡大していくといいなと思っています。

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