[『サピエンス全史』を読む]サピエンスの強みはどこにあるのか?(第1部 認知革命)
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『サピエンス全史』があまりに面白いので、じっくりと時間をかけて、丁寧に読んでいきます。
今回は、「第1部 認知革命」です。
なお、引用はすべて『サピエンス全史 上下合本版』からで、location番号は同書のKindle本によっています。
目次
1.「第1部 認知革命」の概要と、今回の問い
(1) 「第1部 認知革命」の概要
「第1部 認知革命」の章立ては、以下のとおりです。
- 第1章 唯一生き延びた人類種
- 第2章 虚構が協力を可能にした
- 第3章 狩猟採集民の豊かな暮らし
- 第4章 史上最も危険な種
時間軸としては、歴史の始まり(およそ7万年前)から農業革命前夜(およそ1万3000年前)あたりが対象です。
それぞれの章の内容を、簡単に紹介します。
「第1章 唯一生き延びた人類種」
■ 歴史とは何か?
『サピエンス全史』は、「歴史」を、物理学、化学、生物学の次の段階に来るものとして捉えます。
- 物理学:135億年前のビッグバンによる、物質・エネルギー・時間・空間が誕生した以降の物語
- 化学:ビックバンから約30万年後に原子と分子が現れた後の、原子と分子とそれらの相互作用の物語
- 生物学:38億年前の、地球上で特定の分子が結合して生まれた有機体(生物)の物語
- 歴史:7万年前の認知革命後の、人間文化のその後の発展の物語
そしておよそ七万年前、ホモ・サピエンスという種に属する生き物が、なおさら精巧な構造体、すなわち文化を形成し始めた。
そうした人間文化のその後の発展を「歴史」という。
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サピエンスの歴史の道筋、3つの重要な革命によって決まりました。認知革命、農業革命、科学革命です。
歴史の道筋は、三つの重要な革命が決めた。
約七万年前に歴史を始動させた認知革命、
約一万二〇〇〇年前に歴史の流れを加速させた農業革命、
そしてわずか五〇〇年前に始まった科学革命だ。三つ目の科学革命は、歴史に終止符を打ち、何かまったく異なる展開を引き起こす可能性が十分ある。
本書ではこれら三つの革命が、人類をはじめ、この地上の生きとし生けるものにどのような影響を与えてきたのかという物語を綴っていく。
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■ サピエンスは、唯一生き延びた人類種である
現時点で、サピエンスは、唯一の人類種です。しかし、以前はそうではありませんでした。
じつは、約二〇〇万年前から一万年前ごろまで、この世界にはいくつかの人類種が同時に存在していたのだ。
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一〇万年前の地球には、少なくとも六つの異なるヒトの種が暮らしていた。複数の種が存在した過去ではなく、私たちしかいない現在が特異なのであり、ことによると、私たちが犯した罪の証なのかもしれない。ほどなく見るように、私たちサピエンスには、自らの兄弟たちの記憶を抑え込むだけの十分な理由があるからだ。
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■ なぜ、サピエンスが唯一生き延びたのか?
では、サピエンスだけが唯一生き延びた理由は、どこにあるのでしょうか。
サピエンスの成功の秘密は何だったのか?
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『サピエンス全史』は、言語ではないか、という答えを提示します。
激しい議論は今なお尽きないが、最も有力な答えは、その議論を可能にしているものにほかならない。すなわち、ホモ・サピエンスが世界を征服できたのは、何よりも、その比類なき言語のおかげではなかろうか。
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「第2章 虚構が協力を可能にした」
■ 認知革命とは何か?
サピエンス成功の鍵となった言語は、今から7万年前に生じた「認知革命」によって、生まれました。
認知革命とは、サピエンスに生じた、新しい思考と意思疎通の方法の登場のことです。
このように七万年前から三万年前にかけて見られた、新しい思考と意思疎通の方法の登場のことを、「認知革命」という。
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■ サピエンスの言語の、どこが特別なのか?
認知革命によって、サピエンスは、成功の鍵となる言語を手にしました。しかし、サピエンスの言語は、この世で初の言語ではありませんでした。
では、サピエンスの言語の、どこがそこまで特別なのでしょうか?
『サピエンス全史』は、言語の柔軟性や噂話などいくつかのことを説明したあと、もっとも重要な点として、「まったく存在しないものについての情報を伝達する能力」を挙げます。
おそらく、「噂話」説と「川の近くにライオンがいる」説の両方とも妥当なのだろう。
とはいえ、私たちの言語が持つ真に比類ない特徴は、人間やライオンについての情報を伝達する能力ではない。
むしろそれは、まったく存在しないものについての情報を伝達する能力だ。見たことも、触れたことも、匂いを嗅いだこともない、ありとあらゆる種類の存在について話す能力があるのは、私たちの知るかぎりではサピエンスだけだ。
伝説や神話、神々、宗教は、認知革命に伴って初めて現れた。
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すなわち、虚構、すなわち架空の事物について語る能力です。
■ なぜ、虚構が重要なのか?
なぜ、虚構が重要なのでしょうか。2つあります。
大勢で柔軟に協力する
第1に、虚構によって、大勢で柔軟に協力することが可能になります。まったく存在しないものについての情報を伝達することができるからこそ、100人、1000人、10000人、100000人、さらにそれ以上の大勢が、同じ虚構を信じることによって、柔軟に協力することが可能になります。
これは、サピエンス以外の生物にはまったく不可能な、空前の能力でした。
そのような神話は、大勢で柔軟に協力するという空前の能力をサピエンスに与える。
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ゲノムを迂回する
第2に、虚構によって、必要性の変化に応じて迅速に振る舞いを改めることが可能になりました。サピエンスの集団的な行動は言語による虚構に基づいているため、共通に信じる虚構を切り替えれば、集団的な行動自体を改定することができるわけです。
人間どうしの大規模な協力は神話に基づいているので、人々の協力の仕方は、その神話を変えること、つまり別の物語を語ることによって、変更可能なのだ。適切な条件下では、神話はあっという間に現実を変えることができる。
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これに対して、他の生物の振る舞いは、遺伝子によって定められています。サピエンスを除き、遺伝進化を迂回する手段を持つ生命はありません。サピエンスは、まったく存在しないものについての情報を扱える言語を獲得することで、ゲノムを迂回する手段を得たのです。
このように、認知革命以降、ホモ・サピエンスは必要性の変化に応じて迅速に振る舞いを改めることが可能になった。これにより、文化の進化に追い越し車線ができ、遺伝進化の交通渋滞を迂回する道が開けた。ホモ・サピエンスは、この追い越し車線をひた走り、協力するという能力に関して、他のあらゆる人類種や動物種を大きく引き離した。
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「第3章 狩猟採集民の豊かな暮らし」
■ 狩猟採集民の暮らしを理解する意義
第3章は、サピエンスが狩猟採集民だった時期をふり返ります。
なぜ、狩猟採集民だった時期のことを学ぶ必要があるのでしょうか。それは、サピエンスが、これまでのほぼ全歴史を通じて、狩猟採集民だったためです。
私たちの性質や歴史、心理を理解するためには、狩猟採集民だった祖先の頭の中に入り込む必要がある。サピエンスは、種のほぼ全歴史を通じて狩猟採集民だった。
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そのため、狩猟採集民だった時期の環境や暮らしを学べば、サピエンスの思考や感情を理解する上で、多くのヒントが得られます。
隆盛を極める進化心理学の分野では、私たちの現在の社会的特徴や心理的特徴の多くは、農耕以前のこの長い時代に形成されたと言われている。この分野の学者は、私たちの脳と心は今日でさえ狩猟採集生活に適応していると主張する。
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たとえば、『ファスト & スロー』や『仕事に追われない仕事術 マニャーナの法則・完全版』は、このアプローチを採用しています。
■ 原初の豊かな社会とは?
多くの研究者は、狩猟採取民だった時期のサピエンスの社会を、次の3つの理由から、「原初の豊かな社会」だと定義しているそうです。
- 健康に良く多様な食物
- 比較的短い労働時間
- 感染症の少なさ
個々のサピエンスに着目すれば、あながち的外れではありません。他方で、サピエンスという種の全体を見れば、狩猟採集民の社会と現代社会を比較して、狩猟採集民時代の社会の方が豊かだ、ということはできません。
何にせよ、狩猟採集民の時期にサピエンスがどのような物語を生きていたかについて、現代の人類は、それほど多くのことを知っているわけではないそうです。
「第4章 史上最も危険な種」
第4章では、農業革命以前に、サピエンスがどれほど多くの他の種を絶滅させたか、が明らかにされています。
それは、サピエンス移住の第一波は生態学的惨事をもたらし、それは動物界を見舞った悲劇のうちでも、とりわけ規模が大きく、短時間で起こった、というものだ。
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認知革命のころの地球には、体重が五〇キログラムを超える大型の陸上哺乳動物がおよそ二〇〇属生息していた。それが、農業革命のころには、一〇〇属ほどしか残っていなかった。ホモ・サピエンスは、車輪や書記、鉄器を発明するはるか以前に、地球の大型動物のおよそ半数を絶滅に追い込んだのだ。
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(2) 今回の問い
「第1部 認知革命」を読みながら考えたいのは、やはり、この問いです。
サピエンス成功のカギは何か?
つい最近までサバンナの負け組の一員だったサピエンスが、数万年という、物理学〜生物学の時間軸からすればほんの一瞬で、世界を征服するに至ったカギは、どこにあるのでしょうか。
2.『サピエンス全史』の回答
サピエンス成功のカギは何か? 『サピエンス全史』の回答は、虚構を扱える言語、です。
「第2章 虚構が協力を可能にした」には、虚構を扱える言語によって可能になる、2つのことが説明されています。
(1) 大勢で柔軟に協力する
第1に、言語によって、サピエンスは、大勢で柔軟に協力できるようになりました。なぜなら、虚構のおかげで、たんに物事を想像するだけでなく、集団で共通の物事を想像できるようになるためです。
だが虚構のおかげで、私たちはたんに物事を想像するだけではなく、集団でそうできるようになった。
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効力を持つような物語を語ることができれば、厖大な数の人が力を合わせ、共通の目的のために精を出すことが可能になるのです。
効力を持つような物語を語るのは楽ではない。難しいのは、物語を語ること自体ではなく、あらゆる人を納得させ、誰からも信じてもらうことだ。歴史の大半は、どうやって厖大な数の人を納得させ、神、あるいは国民、あるいは有限責任会社にまつわる特定の物語を彼らに信じてもらうかという問題を軸に展開してきた。とはいえ、この試みが成功すると、サピエンスは途方もない力を得る。なぜなら、そのおかげで無数の見知らぬ人どうしが力を合わせ、共通の目的のために精を出すことが可能になるからだ。
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これは、他の生物にはない、空前の能力でした。必要性に応じて、無数の赤の他人と、著しく柔軟に協力できるからです。
そのような神話は、大勢で柔軟に協力するという空前の能力をサピエンスに与える。
アリやミツバチも大勢でいっしょに働けるが、彼らのやり方は融通が利かず、近親者としかうまくいかない。オオカミやチンパンジーはアリよりもはるかに柔軟な形で力を合わせるが、少数のごく親密な個体とでなければ駄目だ。
ところがサピエンスは、無数の赤の他人と著しく柔軟な形で協力できる。だからこそサピエンスが世界を支配し、アリは私たちの残り物を食べ、チンパンジーは動物園や研究室に閉じ込められているのだ。
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国家も、資本主義も、司法制度も、スポーツやゲームも、すべてが、虚構を扱える言語によって可能になりました。
(2) ゲノムを迂回する
第2に、虚構を扱える言語のおかげで、サピエンスは、ゲノムを迂回できるようになりました。
人間どうしの大規模な協力は神話に基づいているので、人々の協力の仕方は、その神話を変えること、つまり別の物語を語ることによって、変更可能なのだ。適切な条件下では、神話はあっという間に現実を変えることができる。
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このように、認知革命以降、ホモ・サピエンスは必要性の変化に応じて迅速に振る舞いを改めることが可能になった。これにより、文化の進化に追い越し車線ができ、遺伝進化の交通渋滞を迂回する道が開けた。ホモ・サピエンスは、この追い越し車線をひた走り、協力するという能力に関して、他のあらゆる人類種や動物種を大きく引き離した。
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集団でひとつの目的のために協力する生物は、サピエンスだけではありません。アリやミツバチ、オオカミやチンパンジーも、複数の個体が共通の目的のために協力することがあります。
しかし、これらの生物による協力の仕方は、基本的には遺伝進化のたまものであり、遺伝子によって大部分が決まっています。
他の社会的な動物の行動は、遺伝子によっておおむね決まっている。
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そのため、遺伝子が変化しない限り、これらの生物の協力行動が変わることはありません。
一般に、遺伝子の突然変異なしには、社会的行動の重大な変化は起こりえない。
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知能の高さはそれほど関係ありません。太古の人類も同じでした。たとえば、ホモ・エレクトスは、200万年近くにわたって、ほぼ同じ石器を使っていたのです。
二〇〇万年前に起こった遺伝子の突然変異のおかげで、ホモ・エレクトスと呼ばれる新しい人類種が現れた。その出現には、新しい石器技術の開発が伴っており、今やその技術は、ホモ・エレクトスの決定的特徴と見なされている。ホモ・エレクトスはその後、新たな遺伝子の突然変異を経験せず、その間ずっと、彼らの石器もほぼ同じままだった──二〇〇万年近くにわたって!
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しかし、認知革命後のサピエンスは違います。サピエンスが行動を改めるために、遺伝子の変化は何ら必要ありません。
それとは対照的に、サピエンスは認知革命以降、自らの振る舞いを素早く変えられるようになり、遺伝子や環境の変化をまったく必要とせずに、新しい行動を後の世代へと伝えていった。
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遺伝子の変化による行動変化と、虚構の改定による行動変化。両者の違いは、必要とされる時間の長さにあります。遺伝子の変化は、何万年や何百万年という時間の長さを必要としますが、言語による虚構の改定は、あっという間です。10年や20年あれば十分ですし、変化の規模や性質によっては、もっと短い期間で足りることだってあり得ます。
言い換えれば、太古の人類の行動パターンが何万年間も不変だったのに対して、サピエンスは社会構造、対人関係の性質、経済活動、その他多くの行動を一〇年あるいは二〇年のうちに一変させることができた。
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ゲノムを迂回できるサピエンスは、他のあらゆる生物種に対して、圧倒的な強みを手にしました。
3.若干の思索
以上が『サピエンス全史』の「第1部 認知革命」の要約です。これを踏まえて、以下、徒然なるままに思考を泳がせてみます。
(1) 同時代の協力と時代を超えた協力
『サピエンス全史』は、言語によってサピエンスが獲得した能力を、
- 大勢で柔軟に協力する
- ゲノムを迂回する
の2つに分けて説明しています。
しかし、この2つは、ひとつの物事の別の側面なのではないかと思います。すなわち、この2つは、どちらも集団で協力する能力のことであり、前者が主に一時点での協力に光を当てているのに対して、後者が時代を超えた協力に光を当てているのではないか、ということです。
- 「大勢で柔軟に協力する」:主に同時代の協力
- 「ゲノムを迂回する」:主に時代を超えた協力
たとえば、今、私は、昼ごはんにシナモンロールを食べています。なぜこんなことができるのかといえば、第1に、小麦農家や酪農家、調理器具製造メーカーや飲食店店員さんなど、この時代を生きている厖大な数のサピエンスが、このシナモンロールに向けて柔軟に協力したためです。これは、主に今の時代の協力に光を当てています。
他方で、100年前の日本には、おそらく、シナモンロールを提供するお店はほとんどなかったのではないかと思います。時が流れ、時代を超えて、食習慣や文化が変化してきたからこそ、今、私は、この2017年の日本で、シナモンロールを食べることができます。これは、主に時代を超えた協力である「ゲノムを迂回する」に光を当てています。
(2) インターネットによって拡大する虚構の力
今、言語の力は、どんどん大きくなっているような気がします。インターネットがあるからです。
とりあえず現時点では、インターネットでやり取りすることができるのは、基本的には、情報だけです。インターネットの力を持ってしても、今ここにあるシナモンロールを、ロンドンや上海に送ることはできません。
以前、私は、これをインターネットの限界のように捉えていました。インターネットでやり取りできるのは、所詮は情報だけだしなあ、という感じです。
でも、『サピエンス全史』を読んで、情報をやり取りできるということの力を、はっきりと自覚しました。情報のやり取りを底上げすれば、その分、サピエンス全体の中に存在する虚構のネットワークが強化されるからです。
ここ数年、インターネットが情報をやり取りする力は、加速度的に強化されています。それは、虚構の力がどんどん大きくなっていることを意味します。インターネットの意味は、認知革命が果たした役割を踏まえることで、一層くっきりするのではないかと感じました。
●
以上のことを、ここ最近の私自身に生じた出来事から考えてみます。
大勢で柔軟に協力することと、インターネット
昨年、私は、『かーそる』という電子雑誌の創刊に関わりました。『かーそる』創刊に至るまでには、たくさんのサピエンスらによる柔軟な協力があります。それは、記事を執筆したサピエンスだけではありません。『かーそる』を提供するプラットフォームであるbccksの運営に関わっているサピエンス、電子書籍データ作成ツールであるでんでんコンバーターに関わっているサピエンス、執筆者の集合場所であるEvernoteや、プロモーションツールでもあるTwitterを支えているサピエンス、さらには、それぞれの執筆者が執筆に使った各種ツールを提供するサピエンスなどなど、数え切れないほどたくさんのサピエンスが、ちょっとずつ協力することで、『かーそる』は誕生しました。
ここで注目したいのは、これらの協力が、ほとんどすべて、インターネットによって可能になった、ということです。
ゲノムを迂回する
ここ数年で、私の読書の方法は、がらりと変わりました。
私はもともと、読書が好きでした。中学生や高校生のころから日常的に図書室に入り浸っていましたし、大学生のころは1日1冊読むことを目標に掲げ、ワンルームマンションの壁一面に本を並べていました。だから、数年前の段階で、自分の読書方法は、ある程度完成している、と思っていました。
が、しかし、その後数年間で、私の読書方法は変わりました。今の読書方法は、ちょうど昨日、アシタノレシピに書いたとおりです。
[私の仕事道具と仕事術]KindleとWorkFlowyによる、価値をつくるための読書術
12歳〜22歳の10年間で培った読書方法が、たったの数年で大きな進化を遂げた、といえます。
この進化は、どのように起きたのでしょうか。
ひとつは、利用できるツールの進化です。具体的には、Kindle、WorkFlowy、kindle.amazon.co.jpを補完するブックマークレットなどがこれに当たります。
もうひとつは、インターネットを通じた情報交換です。具体的には、TwitterによってWorkFlowyなどを愛用する方々と知り合い、倉下忠憲さんによる読書術を学んだり、他の人が実践している読書術を教えてもらったりしたことです。
いずれの点にも、インターネットの発展が大きく寄与しています。
(3) 大きな流れに沿った生き方
『サピエンス全史』「第1部 認知革命」から学んだことは、サピエンスの強みは、虚構を利用して変化し続けることから生まれている、ということです。終わることのない変化の連続こそ、サピエンスの歴史なんだなあと実感しました。
サピエンスが発明した想像上の現実の計り知れない多様性と、そこから生じた行動パターンの多様性はともに、私たちが「文化」と呼ぶものの主要な構成要素だ。いったん登場した文化は、けっして変化と発展をやめなかった。そして、こうした止めようのない変化のことを、私たちは「歴史」と呼ぶ。
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変化することは、認知革命後のサピエンス全体に存在する、大きな流れです。この大きな流れに沿って、自分自身、変化を楽しみながら生きてみたいと思います。
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