*

「なぜ、わかりやすい文章を書けるようになりたいのか」を考えたくなった理由

公開日: : 最終更新日:2014/04/19 書き方・考え方

1.「わかりやすい文章を書けるようになりたい」の「なぜ」を考える

「わかりやすい文章を書けるようになりたい」というのは、私にとって、今も昔も変わらない、大きな願いです。

そのため、私は、「どうすれば」わかりやすい文章を書けるようになるのだろうかという問題意識を持って、本を読んだり、文章の練習をしたりしてきました。また、このブログでも、「どのように」わかりやすい文章を書くか、というテーマで、いくつかの文章を書きました。

でも、最近は、「どのように」も大切だけれど、それよりも、「なぜ」を考えたいと思っています。「なぜ、わかりやすい文章を書けるようになりたいのか」です。

2.きっかけとなった2つの文章

このきっかけは、次の2つの文章に出会ったことです。

(1) 結城浩著『数学文章作法 基礎編』(ちくま学芸文庫)

ひとつは、結城浩著『数学文章作法 基礎編』(ちくま学芸文庫)の、この一節です。

そもそも、あなたが文章を書くのは読者に対してあなたの考えを伝えたいからですね.言い換えれば,あなたは自分の考えを「伝えるに値するものだ」と思っているわけです.おそらくあなたの考えの中には,あなた自身が「なるほど!」と感じたものが含まれているのでしょう.ならば,あなたが感じた「なるほど!」を適切な形で読者に伝えるべきです.そのためには,読者が意欲的に文章を読み続ける配慮が必要です.適切な順序で提示されれば「なるほど!」を生み出す情報であっても,順序が良くなければよく理解されないままに終わってしまいます.『数学文章作法 基礎編』(p.022)

『数学文章作法 基礎編』は、最近、このブログで、しばしば取り上げています。「どのように」わかりやすい文章を書けるようになるかについての、基本を網羅した本です。必ず役に立ちます。

読者のことを考えるって、こういうことだったのか!結城浩著『数学文章作法 基礎編』(ちくま学芸文庫)

自分の考えを正確にわかりやすく伝える文章を書けるようになるために役立つ本のリスト

本書『数学文章作法(さくほう) 基礎編』では、 「正確で読みやすい文章を書く心がけ」 をお話しします。 数式まじりの説明文が題材の中心ですが、 説明文を書く人ならどなたにも役立つ内容です。

書籍『数学文章作法 基礎編』より)

当初、私は、「どのように」を求めてこの本を読みました。でも、ここで引用した記載、特に、「あなたが感じた「なるほど!」を適切な形で読者に伝える」という記載を読んで、「どのように」よりも「なぜ」を考えたいと感じました。

(2) 倉下忠憲さんの「丁寧に書きさえすれば」(ブログ『R-style』)

もうひとつは、「丁寧に書きさえすれば」というブログ記事です。倉下忠憲さんのブログ「R-style」に書かれていた、詩のような文章です。

R-style » 丁寧に書きさえすれば

一部引用します。

形式はどうか 表現はどうか リズムはどうか タイトルはどうか

指さし確認する駅員のように それらをチェックしていく

それが丁寧に書くということ

間違いはないか 読みにくくないか 誰かをひどく傷つけないだろうか

贈り物を包装する店員のように

それらをチェックしていく

それが丁寧に書くということ

読み返せ。何度も何度も読み返せ。

古くから、たびたび言及されている心がけ

決して古びない原理原則 それだけが時を超えるセオリー

R-style » 丁寧に書きさえすればより)

物書きである倉下さんの、文章を書くことに対する姿勢が感じられて、大げさに言えば、衝撃を受けました。この記事の全文ウェブクリップは、今、私のEvernoteのお気に入りに入っています。

この文章を読んで私が感じたのは、倉下さんの、「丁寧に書きたい」という願いです。私は、この倉下さんの願いに共感し、自分も丁寧に書きたいなあ、と感じました。そして、これと同時に、丁寧に書くとはどういうことなんだろう、とか、丁寧に書きたいと願うのは何でだろう、とも感じました。

3.「なぜ」を考えたい2つの理由

この2つの文章に刺激を受けて、「なぜ」を考えたいことの「なぜ」に思いを巡らせてみました。つまり、「なぜ、わかりやすい文章を書けるようになりたいのか」を考えたくなった理由、あるいは、「なぜ、わかりやすい文章を書けるようになりたいのか」を考える目的や意味です。

2つあるかなあと思います。ひとつは功利主義的な理由で、もうひとつは功利主義的ではない理由です。

(1) 「なぜ」が明確になると、目指すべき「わかりやすい文章」の形が明らかになる

功利主義的な理由は、「なぜ」を明確にすることが、わかりやすい文章を書けるようになるために、役に立つ、ということです。

「わかりやすい文章」という目標は、抽象的です。「わかりやすい文章を書けるようになりたい」と念仏のように唱えていても、この抽象的な目標に、どのように近づいたらよいのか、なかなかわかりません。

これに対して、「なぜ、わかりやすい文章を書けるようになりたいのか」を掘り下げれば、自分が目指している「わかりやすい文章」の形が、多少なりとも、はっきりします。抽象的なお題目だった「わかりやすい文章」が、具体的な形をとります。

目標である「わかりやすい文章」の形をはっきりさせることは、わかりやすい文章を書けるようになるために、役に立ちます。

つまり、私は、自分が目標とする「わかりやすい文章」の形をはっきりさせるために、「なぜ、わかりやすい文章を書けるようになりたいのか」を考えたいのです。

(2) 「なぜ」を考えることで、文章を書くということを考えることができる

功利主義的ではない理由は、「なぜ、わかりやすい文章を書けるようになりたいのか」を考えることで、「私にとって、文章を書くということは、どんなことなんだろうか」ということを考えることができる、ということです。

私は、職業的物書きではありません。つまり、文章を書いて生計を立てているわけではありません。でも、私の人生の中で、文章を書くということが占める割合は、けっこう高めです。仕事でも、プライベートでも、毎日それなりのエネルギーと時間を、文章を書くことに費やしています。なので、文章を書くということを考えるのは、私にとって、それなりに大切なことです。

しかし、文章を書くということを考えようと思ったとして、ではいったい何を考えたらいいのかは、よくわかりません。どこから取りかかったらよいか、途方に暮れてしまいます。

これに対して、「なぜ、わかりやすい文章を書けるようになりたいのか」という問いは、文章を書くということを考えるための、よいとっかかりになります。「なぜ、わかりやすい文章を書けるようになりたいのか」を考えるのは、文章を書くということそれ自体を考えるよりも、考えを前に進めやすそうです。また、「なぜ、わかりやすい文章を書けるようになりたいのか」を考えると、必然的に、自分にとって文章を書くという行為がどんな意味を持つのか、ということも考えることができるような気がします。

そんなわけで、「私にとって、文章を書くということは、どんなことなんだろうか」ということを考えるためにも、「なぜ、わかりやすい文章を書けるようになりたいのか」ということを、考えたくなりました。

スポンサードリンク

関連記事

no image

ブログ記事の原稿を書くなら、Evernoteが一番。アイデアを、素早くキャッチし、気長に育てる。

1.Evernoteでブログ原稿を書くと、何がよいか このブログの原稿は、基本的には、すべて私のE

記事を読む

no image

「なぜ」&「どのように」と「説明の尺度」〜『わかりやすく説明する練習をしよう』(1)

1.『わかりやすく説明する練習をしよう』 (1) 『わかりやすく説明する練習をしよう』 『わかり

記事を読む

no image

「自分以外の読み手を想定している&書いたあとで整理する」の領域に位置づけられる、Postach.ioとFargo

1.「自分以外の読み手を想定している&書いたあとで整理する」候補の、Postach.ioとF

記事を読む

no image

Evernoteは、ノートの杭を打つからこそ、思考のツールとして現にうまく機能している。

1.ノートの杭を打つにもかかわらず、Evernoteは、なぜ、思考のツールとして現に機能しているのか

記事を読む

no image

「文章群を書き続ける」という積極的な社会参加のあり方

1.積極的な社会参加へのあこがれと、その実現 大学生の頃から、知的生産にあこがれていました。本を読み

記事を読む

no image

当事者意識を活用する

1.当事者意識とはなにか 「当事者意識」は、私にとって大切なものです。自分にとって大切な領域において

記事を読む

no image

思考の筋道をたどることのできる文章を書くための日本語文章力

1.どんな文章を目指すか 私は、日本語文章力を鍛えたいと考えています。仕事においても、普段の暮らし

記事を読む

no image

読者のことを考えるって、こういうことだったのか!結城浩著『数学文章作法 基礎編』(ちくま学芸文庫)

1.『数学文章作法 基礎編』は、考えを読者に伝えることを目的とする文章を書くための、新定番 (1)

記事を読む

no image

「着想」→「連想」→「整想」という発想の3プロセスと、「いきなり「整想」発想法」

1.『Evernoteとアナログノートによるハイブリッド発想術』の肝は、「整想」をカバーしていること

記事を読む

no image

アナログでの思考を、Evernoteに集め、アウトプットにつなげる

1.はじめに 近頃の私は、しばしば、スターバックスで昼ご飯を食べます。1時間の昼休みをフルに使い、

記事を読む

スポンサードリンク

スポンサードリンク

no image
お待たせしました! オフライン対応&起動高速化のHandyFlowy Ver.1.5(iOS)

お待たせしました! なんと、ついに、できちゃいました。オフライン対応&

no image
「ハサミスクリプト for MarsEdit irodrawEdition」をキーボードから使うための導入準備(Mac)

諸事情により、Macの環境を再度設定しています。 ブログ関係の最重要は

no image
AI・BI・PI・BC

AI 『〈インターネット〉の次に来るもの 未来を決める12の法則』を読

no image
[『サピエンス全史』を起点に考える]「それは、サピエンス全体に存在する協力を増やすか?」という評価基準

1.「社会派」に対する私の不信感 (1) 「実存派」と「社会派」 哲学

no image
[『サピエンス全史』を起点に考える]サピエンス全体に存在する協力の量と質は、どのように増えていくのか?

『サピエンス全史』は、大勢で柔軟に協力することがサピエンスの強みだと指

→もっと見る

  • irodraw
    彩郎 @irodraw 
    子育てに没頭中のワーキングパパです。1980年代生まれ、愛知県在住。 好きなことは、子育て、読書、ブログ、家事、デジタルツールいじり。
    このブログは、毎日の暮らしに彩りを加えるために、どんな知恵や情報やデジタルツールがどのように役に立つのか、私が、いろいろと試行錯誤した過程と結果を、形にして発信して蓄積する場です。
    連絡先:irodrawあっとまーくtjsg-kokoro.com

    feedlyへの登録はこちら
    follow us in feedly

    RSSはこちら

    Google+ページ

    Facebookページ

PAGE TOP ↑