レポート課題に取り組むときの留意点
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書き方・考え方
私は、大学の非常勤講師として学部生向けの講義をひとつ担当しているのですが、その講義の単位認定には試験ではなく、レポート課題を使っています。
試験ではなくレポート課題にしている理由はいくつかありますが、ひとつの理由は、レポート課題に取り組むということを通じて、社会に出てからの仕事に通用しうる何かを掴んでもらいたい、という点にあります。試験よりもレポート課題の方が、社会に出てからの仕事に通じる要素が多いような気がしていますので。
このねらいを達成する助けになればいいなと思い、レポート課題を出したタイミングで、レポート課題にこんなふうに取り組んだらいいんじゃないかなということを書いた文書を、学生に配布しています。
以下、その文書を若干いじったものを、ブログ記事として投稿します。
なお、私が担当してる講義は、文系学部の文系学生向け講義です。そのため、この記事でいうレポート課題というのは、日本語の文章を使って書かれたレポートを想定しています。
目次
1.レポート課題に取り組んでもらう理由
半年間の講義、おつかれさまです。
この講義の単位認定は、出席とレポート課題によって行います。毎回の講義の中でいろんな問題を考えてもらったので、出席だけで単位認定をすることも可能なのですが、あえてレポート課題を出しています。
この理由は、大学を卒業して社会人になってからも、レポート課題のようなものに取り組む機会が、ちょいちょいあるからです。そんなレポート課題のようなものに取り組むときに、どんな姿勢で取り組んだらよいかを考えるひとつのきっかけとして、この講義のレポート課題を使ってもらいたいと思い、レポート課題を出しています。
そのため、この講義のレポート課題に取り組むときは、以下の3つのことに留意してください。レポート課題の採点にあたっては、(内容もまあ一定程度は見ますけれども、)主に以下の3点を重視します。
2.留意してほしい3点
(1) その文書が果たすべき役割を考える
大学の講義で出されるレポート課題も、社会人になってから取り組むであろうレポート課題のようなものも、その文書が果たすべき役割、というものを持っています。そのレポートやレポートのようなものの価値は、その文書が果たすべき役割をどれだけ果たしているか、によって決まります。
文章のよしあしは、いろんな観点から可能です。調査の深さ、わかりやすさ、視点の鋭さ、論理の流れ、おもしろさ、などなど。でも、レポートの価値は、これらのことによって決まるのではなく、そのレポートが果たすべき役割をどれだけ果たしているか、によって決まります。
したがって、レポート課題に取り組む際は、最初に、そのレポートが果たすべき役割を考えてください。
ちなみに、今回取り組んでもらうレポート課題のレポートが果たすべき役割を見抜くのは、簡単です。この文書に私が書いていることから考えてくださいませ。
(2) 絶対守らなければいけないことは、絶対に守る
レポート課題は、通常、提出期限や提出方法、書式や枚数などの指定があります。
こういった諸々は、レポート課題にとって、絶対に守らなければいけない条件です。絶対に守ってください。
どんなに内容がすばらしくても、提出期限を過ぎて提出されたレポートは、採点に値しません。
提出方法を守っていないレポート(Wordの添付ファイルというファイル形式の指定があるのに、PDFファイルで提出されたレポートなど)や、書式指定を守っていないレポート(用紙サイズをA4に指定しているのに、B5で作成したレポート)、枚数制限を超えたレポート(5枚以内なのに、10枚書いてきたレポート)なども、同じです。採点に値しません。
提出期限の重要さは通常理解されていますが、書式指定や枚数制限については、軽く見ている学生がたまにいますので、繰り返し注意しておきます。書式指定や枚数制限があるなら、絶対に守らなければいけません。これらを守らずに、「このレポートは内容がすばらしいんだから、書式指定や枚数制限を守っていないことくらい大目に見てもらえるだろう。」というのは、完全に甘えであって、通用しません。
この講義で出したレポート課題にも、諸々の条件指定がありますので、必ず守ってください。
(3) レポートに構造を付ける
レポートがレポートであるためには、最低限、3つの要素が必要です。第一にテーマ、第二に結論、第三に根拠です。あるテーマについて、何らかの結論を提示した上で、その結論を根拠づけるのが、レポートというものです。
また、レポートがレポートであるためには、根拠がなぜ根拠になるのかが、レポートを読んだ人に伝わらなければいけません。根拠を示しさえすればよいのではなく、根拠がなぜ根拠として結論を支えるのかが、そのレポートを読むだけで理解可能でなければいけません。
このことを実現するためにいちばん大切なのは、レポートに構造を付けることです。
まず、テーマと結論と根拠という構造を作ります。レポートを読むだけで、レポートのテーマが何で、レポートの結論が何で、レポートの根拠がなんなのか、ということが理解可能でなければいけません。
次に、根拠自体にも、内部構造が必要です。根拠として示された諸々が、どのような筋道をたどって結論を支えるのかが、レポートを読むだけで理解しうる状態になっていなければいけません。
レポートに構造を付けるために使える道具は、いろいろあります。
たとえば、
- 文
- 段落
- 項目
- 項目のレベルわけ
- 項目番号
などです。
これらの道具をうまく使って、レポートに構造を付けてください。
(最低限、レポートのテーマが何で、レポートの結論が何で、レポートの根拠がなんなのか、までは読み手に伝わるように書いてください。これは意識しさせすればとても簡単なことなので、ここに全力を注げば、必ず実現可能です。)
3.おわりに:自分を出すべきところに出し、出すべきでないところには出さない
以上、レポート課題に取り組むときに留意する点を3点述べました。繰り返すと、次の3つです。
- そのレポートが果たすべき役割を考える。レポートの価値を決めるのは、どれだけ役割を果たしたか、です。
- 絶対守らなければいけないことは、絶対に守る。書式指定や枚数制限を軽視するのは、甘えであって許されません。
- レポートに構造を付ける。レポートのテーマがどこに書いてあって、レポートの結論がどこに書いてあって、レポートの根拠がどこに書いてあるのか、を誤解なく伝えることまでは、最低限、達成してください。
こうして3つを並べると、「自分を出すな。出題者の意図を汲み取って、要領よく取り組め。」というメッセージとして伝わりそうな気もします。
でも、そうではありません。
私が伝えたいことは、レポート課題に取り組むときに大切なのは、どこに自分を出すのかを自覚的に判断すべき、ということです。自分を出すべきところは、テーマの選び方であったり、結論を導く視点の鋭さであったり、根拠の説得力であったり、そういった部分です。それ以外の点、そもそものレポートの役割をどう捉えるかや、書式や枚数制限や提出方法や、レポートの構造の付け方の点で、自分を出しても、意味がありません。
自分を出すべきところに出し、出すべきでないところには出さない。レポート課題や、レポート課題のようなものに取り組む際は、これが大切ではないかなと、私は思っています。
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