書評エントリの分類
目次
1.書評エントリの分類を考える
(1) じぶん史上最強の読書術は、書評エントリを書くこと
私がこのブログに書く文章は、かなりの程度、私が読んだ本に関連しています。読んだ本の内容をストレートに紹介することもあれば、本を読んだときに考えたことや思いついたことをまとめる中で本を紹介することもあります。
これらの文章は、広い意味で、書評エントリの一種です。
私にとって、読んだ本に関連する文章をブログに書くこと、つまり、書評エントリを書くことは、とても大切な行動です。「じぶん史上最強の読書術は、書評エントリを書くことである。」と言っても過言ではありません。
しかし、書評エントリとても重要だと考えているわりには、これまでの私は、書評エントリを、なんとなく書いていたような気がします。今後も書評エントリを大切にしていきたいと思いますので、このあたりで腰を据えて、書評エントリとのつきあい方を、ゆっくり考えてみます。
(2) 書評エントリを分類してみる
どこから考えようかなと少し考えた結果、分類から始めることにしました。書評エントリを分類してみます。
一般に、思いつきで分類するよりも、分類基準を設定して分類するほうが、安定してよい分類に辿りつくことができるように思います。とりわけ、2つに分ける基準を2つ設定する、2×2で分類すると、よい分類になりやすいです。
そこで、今回は、次の2つの基準にしてみました。
- (1) 書評の目的の軸。「本を読んでもらうこと」なのか「本を読まずに済ますこと」なのか。
- (2) 書評が書評の読み手に与える影響の軸。書評が促した行動が、書評の読み手にとって、プラスの影響を与えたのか、マイナスの影響を与えたのか。
以下、この2つを順番に見ていきます。
2.書評エントリを分類する2つの軸
(1) 書評の目的:「本を読んでもらうこと」vs「本を読まずに済ますこと」
書評とは、何らかの本を対象にした論評です。書評には、必ず、対象となる本があります。
この対象となる本との関係での書評の目的を考えてみると、ひとくちに書評と言っても、その中には、まったく反対の2つの目的を持つものが存在します。
一方に、「対象となる本を読んでもらうこと」を目的とする書評が存在します。この書評は、「この本はよい本なので、ぜひ読んでください。」という文章です。
書評なのだから、対象となる本を読んでもらうことを目的とするのは当然だ、と思われるかもしれません。でも、そういうわけでもありません。書評のもう一方には、「対象となる本を読まずに済ますこと」を目的とする書評もあるからです。
「対象となる本を読まずに済ますこと」を目的とする、とは、どういうことでしょうか。
ぱっと思いつくのは、「この本はしょうもないから、読まなくてよい。」という書評です。でも、それだけではありません。「あなたの代わりに、私がこの本を読みました。ポイントを教えましょう。」という書評もあります。つまり、書評の読者が本そのものを読む手間と時間を省略できるように、本のポイントを短く要約するものです。
このように、書評には、「本を読んでもらうこと」を目的とする書評と、「本を読まずに済ますこと」を目的とする書評があります。これが、第1の分類基準です。
(2) 書評が生み出す影響:プラスの影響vsマイナスの影響
ふたつめの分類基準は、書評が書評の読者に生み出す影響です。
書評が書かれるのは、その書評を読んだ人に、何らかの行動を促すためです。典型的には、「書評を読んで、その本を読む」という行動と、「書評を読んで、その本を読まずに済ます」という行動が考えられます。
仮に、書評を読んだ人が、書評に促されて何らかの行動をとったとして、その行動は、その人にとって、どんな影響を生み出したのか。これが、ふたつめの分類基準です。書評が促した行動が、プラスの影響を生み出したのか、マイナスの影響を生み出したのか。
ひとつめの分類基準の二つに分けて、考えてみます。
a.「その本を読んでもらうための書評」→「その本を読んでもらう」の場合
まず、「その本を読んでもらうための書評」を書いて、「その本を読んでもらう」という行動を促すことができた場合を考えます。
この場合、書評を読んだ人は、実際にその本を読んだのですから、その人に生じた影響がプラスなのかマイナスなのかは、その本を読んだその人の感想や納得感をベースに考えることにします。つまり、「読んでよかった」ならプラスの影響、「読むんじゃなかった」ならマイナスの影響です。
となると、書評を読んだ人が、「この本を読んでよかった」と思ってくれたなら、これは、プラスの影響を生み出した場合です。反対に、書評を読んだ人に、「こんな本、読むんじゃなかった」と思わせてしまったなら、これは、マイナスの影響を生み出した場合です。
b.「その本を読まずに済ますための書評」→「その本を読まずに済ます」の場合
次に、「その本を読まずに済ますための書評」を書いて、「その本を読まずに済ます」という行動を促すことができた場合を考えます。
この場合は、書評を読んだ人は、その本を読まずに済ませたので、生じた影響がプラスなのかマイナスなのかは、なかなか難しい問題です。とりあえず、次のように考えました。
(a) コストパフォーマンス
まず、コストパフォーマンスの問題です。書評を読むよりも、本そのものを読む方が、コストパフォーマンスが悪いなら、書評を読むことでその本を読まずに済ませたとしても、本末転倒です。
たとえば、読むのに1時間かかり、読むと100の収穫を得られる本があるとします。このとき、この本を読まずに済ますための書評が、読むのに30分かかり、読んでも30の収穫しか得られないのだとしたら、この書評を読むのは、むしろ時間の無駄です。倍の時間をかけて、本そのものを読んだほうがコストパフォーマンスがよいからです。
(b) コストパフォーマンスを超える力を持つ本
このように、読まずに済ますための書評にとって、コストパフォーマンスはわりと重要なのですが、でも、私は、それだけではないと感じています。というのは、世の中には大きな力を持つ本が存在していて、それら大きな力を持つ本は、その本そのものを読む方がよい、と考えるからです。いくらすぐれた書評があって、その書評のほうがコストパフォーマンスがよいとしても、本そのものを読んだほうがよい本は、存在します。
たとえば、読むのに10時間かかり、読むと10000の収穫を得られる本があるとします。すごい力を持つ本です。このとき、この本のすごく優れた書評があって、その書評は30分で読めて、1000の収穫を得られるとします。コストパフォーマンスで言えば、書評を読むほうが合理的です。でも、読むと10000の収穫を得られるすごい本は、やっぱり、その本そのものを読むほうがよいと、私は思います。
そのため、仮に、読まずに済ますことを目的とする書評が、その書評を読んだ人に、コストパフォーマンスを超える力を持つすごい本を読まずに済ます、という行動を促してしまったなら、その書評は、マイナスの影響を生み出してしまったのではないかと、私は考えています。
(c) 読まずに済ます場合のプラスとマイナス
まとめると、「その本を読まずに済ますための書評」を書いて、「その本を読まずに済ます」という行動を促すことができた場合は、
- プラスの影響を生み出したのは、
- 「本を読むよりも、書評を読むほうが、コストパフォーマンスが高い。」(かつ)
- 「本そのものが、コストパフォーマンスを超える力を持っていない。」
- マイナスの影響を生み出したのは、
- 「書評を読むよりも、本を読むほう、コストパフォーマンスが高い。」(または)
- 「本そのものが、コストパフォーマンスを超える力を持っている。その本そのものを読むべき。」
です。
3.まとめ
以上の2つの分類基準を、マトリクスでまとめます。2×2で、4つに書評エントリを分類することができました。
| その本を読んでもらうことを目的とする書評 | その本を読まずに済ますことを目的とする書評 | |
| 促した行動が、その人にプラスの影響を生み出す | 「読んでよかった。」 | ・本を読むよりも、書評を読むほうが、コストパフォーマンスが高い。 かつ ・本そのものが、コストパフォーマンスを超える力を持っていない。 |
| 促した行動が、その人にマイナスの影響を生み出す | 「読むんじゃなかった。」 | ・書評を読むよりも、本を読むほう、コストパフォーマンスが高い。 または ・本そのものが、コストパフォーマンスを超える力を持っている。その本そのものを読むべき。 |
書評の分類を考えることは、これでおしまいですが、最後にひとつ、「では、自分はどの書評を書きたいのか。」を自問自答してみます。この2つの分類基準によって4つに分類された書評エントリのうち、私はどんな書評を書きたいのか。
結論だけ書けば、「その本を読んでもらうこと」を目的とし、「促した行動が、その人にプラスの影響を生み出す」書評です。書評を読んだ人が、その本を読みたくなって、その本を読んでくれて、しかも、「読んでよかった」と思ってくれる、そんな書評です。
なぜ、こんな書評を書きたいのか、それは、また別の機会に考えてみます。
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