マトリクスという思考ツールの作り方と使い方
公開日:
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最終更新日:2013/11/17
書き方・考え方
目次
1.マトリクスは便利な思考のツール
(1) マトリクスを作って考える
私は、マトリクスを使って考えるのが好きです。
このブログでも、マトリクスを使って考えた過程を記載した記事を、いくつか書きました。
- タスク収納場所マトリクスで、タスクを収納する場所を突き止める;
- 課題とアプローチ×具体的と抽象的のマトリクス
- 子育て(家族)、仕事、ブログ、自分自身、という4領域に分けて、クラウドサービスの活用を整理する
- Toodledoを使う(3) Folder,Star,Status,Context,Tagは、どんな特徴を有するか?
マトリクスとは、「行列」です。行という縦軸と列という横軸をもつ表のことです。
このマトリクス、すごく単純な仕組みなのですが、いろんなことを考えるときに、とても便利なツールです。
(2) 思考のツールとしてのマトリクスの具体例(有名なふたつ)
マトリクスを使った思考がどのように便利なのかは、有名なふたつの具体例を説明するのが早いです。
a.重要度×緊急度のマトリクス(『7つの習慣』)
ひとつは、このマトリクスです。
緊急 | 緊急でない | |
重要 | 第一領域 | 第二領域 |
重要でない | 第三領域 | 第四領域 |
有名な『7つの習慣』に出てくる、とりわけ有名なマトリクスです。縦軸に「重要/重要でない」という2つの行、横軸に「緊急/緊急でない」という2つの列をとって、2×2のマトリクスを作っています。
時間の使い方を4つの領域に分けて理解することによって、第2領域を重視することの大切さを、自然と理解することができます。
b.BCGマトリクス(ボストンコンサルティンググループ)
ふたつめは、このマトリクスです。
マーケットシェア低い | マーケットシェア高い | |
マーケット成長率高い | 問題児 | 花形 |
マーケット成長率低い | 負け犬 | 金のなる木 |
ボストンコンサルティンググループが作ったマトリクスです。縦軸に「マーケットの成長率が高い/低い」という2つの行、横軸に「マーケットシェアが高い/低い」という2つの列をとって、2×2のマトリクスを作っています。
このマトリクスは、通常、自社の製品や事業の位置づけを分析するために使われます。マーケットの成長率が高く、マーケットシェアが低い製品・事業と、マーケットの成長率が低く、マーケットシェアが高い製品・事業とは、自社内での位置づけは、当然異なってしかるべきです。このことを簡単に分析するために、BCGマトリクスは、有用なツールとされています。
2.マトリクスの作り方・使い方
マトリクスを作るのは、簡単です。大きく分けて、以下の3ステップです。
(1) ふたつの軸を設定する
まず、ふたつの軸を設定します(厳密には、ふたつである必要はなく、複数であればよいと思いますが、3つ以上の軸になると、マトリクスを書くのが大変なので、ふたつがよいです)。
上の例では、以下の通りです。
- 7つの習慣:(1)重要度、(2)緊急度
- BCGマトリクス:(1)マーケットの成長率、(2)マーケットシェア
- ToodledoのFields整理:(1)自分で選択肢を作れるか、(2)ひとつのタスクに複数付与できるか
このときの注意点は、ふたつの軸が独立の軸である方が望ましい、ということです。相関性の高い軸をふたつ設定すると、あんまり意味がありません。
たとえば、ブログの成長度合いを分析するときに、(1)PV、(2)Google AdSenseからの収益、というふたつの軸を設定するのは、あんまり意味がありません。PVとGoogle AdSenseからの収益は、相関性が高いので、マトリクスから何らかの知見が得られる可能性が高くありません。
(2) それぞれの軸を2つ以上に分ける(できればMECEに)
次に、設定したふたつの軸を、それぞれ、2つ以上に分けます。
a.2つに分けるのが簡単
数は、2つが簡単です。あまり多く分けすぎると、マスがたくさんできすぎてしまい、分析が大変です。
有名な2つのマトリクスも、それぞれの軸を2つに分けた、2×2のマトリクスです。
b.できればMECEだけど、「漏れなく」にはこだわらなくてよい
分け方は、MECEに分けるのがよい、といわれています。
MECEとは、「漏れなく、ダブりなく」という意味です。「漏れなく」というのは、その分類で、すべての範囲をカバーしている、ということ、「ダブりなく」というのは、両方に属するものが存在しないように、ということです。
ただ、「漏れなく」の点は、それほど強くこだわらなくてもよいと思います。検討したい対象が明らかならば、その対象についての組み合わせがわかればよいのであって、漏れなくであることに、それほど強い要請はないためです。
なお、MECEに分ける、という観点からも、分ける個数は2つがよい、ということにつながります。「●●/●●でない」という2つに分ければ、必ずMECEになります。
(3) できたマスを順番に検討する
軸をふたつ設定して、それぞれの軸を2つ以上に分ければ、2×2以上のマスができます。これで、マトリクスは完成です。
あとは、できたマスを順番に検討します。
『7つの習慣』の重要度・緊急度マトリクスなら、4つの領域それぞれについて、たとえば、以下のようなことを考えればよいです。
- この領域に当てはまる時間の使い方は何だろうか?
- この領域に、自分は今、どれくらいの時間を費やしているだろうか?
- この領域に費やす時間を、今後、自分は、増やしたいだろうか、それとも、減らしたいだろうか?
すべてのマスを順番に考えることによって、マトリクスを使わないで考えるときと比較して、全体を考えることができます。
3.マトリクスは、どんな強みがあるか
マトリクスには、次のふたつの強みがあります。
(1) 網羅的に考えることが、発想を広げる
まず、マトリクスを使うと、網羅的に考えることができます。
考えるためには、まず、考える対象を定める必要があります。考える対象を定める段階で、自分の頭だけを頼りにしていると、無意識に、自分にとってなじみのある対象だけをピックアップしてしまいます。常識やこれまでの経験に縛られた思考になりがちです。
これに対して、マトリクスを作って、できたマスを順番に考えると、無意識に自分が除外していた組み合わせも含めて、網羅的に考えることができます。
たとえば、私は、自分の生き方の領域と自分が愛用しているクラウドサービスとをマトリクスにした結果、Gmailと子育ての組み合わせはあんまり使っていないな、とか、Toodledoをブログに使うにはどうしたらよいだろうか、などの発想を得ることができました。
子育て(家族)、仕事、ブログ、自分自身、という4領域に分けて、クラウドサービスの活用を整理する
(2) 難しいMECEな分類を、簡単に作れる
次に、マトリクスは、MECEな分類を作るための、もっとも簡単な方法です。
MECEな分類は、分類するときの基本です。しかし、漏れなくダブりなくの要請にかなった分類をするのは、とても大変です。
これに対して、マトリクスを作って、それぞれの軸を簡単なMECE(典型的には、「●●/●●でない」)に分ければ、その結果できたマスは、MECEな分類になっています。
たとえば、ToodledoのFieldsを、(1)自分で選択肢を作れる/作れない、(2)ひとつのタスクに複数を付与できる/できない、という2つの軸に分けてマトリクスを作れば、その結果できた4つの領域は、MECEです。したがって、Toodledoが用意しているすべてのFieldsを、この4領域に分類できます。
また、『7つの習慣』の重要度・緊急度マトリクスも、重要度の点でMECE、緊急度の点でMECEなので、できあがった4つの領域もMECEです。
道具を使わないでMECEを作るのはなかなか大変ですが、マトリクスを作れば、わりと難しいMECEな分類を、簡単に作ることができます。
多少複雑なMECEな分類を簡単に作ることができることは、思考をする上で、何かと役に立ちます。
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