*

「文章を書き上げる理由」の獲得

公開日: : ブログ, 書き方・考え方, 知的生産

1.自分のブログを持つ効用を、自分の価値観や考え方に引きつけて、探しだす

こんなエントリを書きました。

現役効果を発揮させるための手段としてのブログ

このエントリで私が書きたかったポイントのひとつは、自分のブログを持つことの効用です。それも、自分のブログを持つ効用を、自分の価値観や考え方に引きつけた視点で捉えることです。

PVを稼いで承認欲求を満たすとか、Google AdSenseやAmazonアソシエイトプログラムでお小遣いを稼ぐとか、日々の行動や考えを記録して自分の人生のログを蓄積するとかは、いずれも、よく言われているブログを持つ効用です。これに対して、「現役効果を発揮させること」がブログを持つ効用だと言われることは、私の知るかぎり、ほとんどありません。しかし、この「現役効果を発揮させること」は、ある価値観や考え方のもとにブログをしている人にとっては、かなり大きな、自分のブログを持つ効用です。

このように、「指摘されることはあまり多くないけれど、ある価値観や考え方を前提とすれば、たしかにそれはブログを持つことの大きな効用になる」という事柄は、きっと、探せばたくさんあるはずです。

そのため、私は、せっかく自分のブログを持つのであれば、広い範囲の事柄から、自分の価値観や考え方に引きつけるようなかたちで、自分のブログを持つ効用を探し出したいと考えています。

2.私にとって、自分のブログを持つ効用の大切なひとつは、「文章を書き上げる理由」の獲得

そこで、自分自身をふり返り、私自身が自分のブログを持つことで得られた効用を探してみたところ、しっくり腑に落ちるひとつの効用を見つけることができました。それは、「文章を書き上げる理由を獲得できたこと」です。

「文章を書き上げる理由」の獲得とはなんなのか、なぜこれがブログを持つ効用になるのか、以下、まとめます。

(1) 「文章を書き上げる理由」の獲得とはなにか?

a.ブログ以前、私は、「文章を書き上げる理由」を持っていなかった

このブログを始めるまで、私は、「文章を書き上げる理由」を持っていませんでした。

このブログを始める前から、私は、それなりの量の文章を日常的に書いていました。日記を書いたり、読んだ本の読書メモを作ったり、自分が進みたい方向を言葉にしてみたりすることは、私にとって、わりと自然な作業でした。

私が日常的に文章を書いていたのは、自分の感情と思考を整理するためです。文章を書くことは、自分の感情と思考を整理するための強力で手軽な手段なので、自分の感情と思考を整理したくなったら、私はそのつど適当に文章を書いてきました。

でも、そのときの私が書いていた文章は、自分の中の感情と思考をそのまま言葉にすることに過ぎませんでした。自分の中の感情や思考に言葉を与えて、感情と思考を整理することができれば、それで目的達成だったからです。

そのため、当時の私にとって、自分の書く文章をひとつのまとまった文章に仕上げることは、関心の対象外でした。そのときの私が書いていた文章は、どこかに公開するための文章でもなく、誰かに何かを届けるための文章でもありません。要するに、誰かに読んでもらうための文章ではなかったのです。

誰かに読んでもらうための文章を書いていたわけではなかったので、当時の私の「文章を書く」という営みからは、文章のメッセージを絞り込んだり、文章の論理構造を整えたり、読み返しや書き直しをしたり、接続詞や文末や語句を試行錯誤をしたり、といった、読み手のために文章を書き上げるための作業が、すっぽりと抜け落ちていました。

つまり、このブログを始める前の私がしていたのは、「文章を書くこと」ではありましたが、「文章を書き上げること」ではありませんでした。そのときの私は、「文章を書く理由」は持っていましたが、「文章を書き上げる理由」は持っていませんでした。

b.ブログを始めたら、「文章を書き上げる理由」を獲得できた

これに対して、このブログを始めることで、私は、「文章を書き上げる理由」を獲得しました。

ブログは、ウェブに開かれています。ウェブに公開された文章は、誰もが読むことができます。ブログに投稿する文章を書くことは、自分以外の誰かに読まれる可能性を持つ文章を書くことです。

自分以外の誰かに読まれる可能性を持つといっても、しょせんは個人ブログです。論文をまとめたり本を執筆したりするほどの厳密さまでは要求されていません。

ただ、そうはいっても、文章に求められる程度の差はあるにせよ、ブログに投稿する文章は、何らかの意味で、「文章を書き上げる」プロセスを終えた後の文章です。文章を書いた人が「ひとまずこれでこの文章は書き上がった」と区切りをつけ、「投稿」ボタンを押さないかぎり、その文章がブログに投稿されることはありません。文章を書いた人によって、自分以外の誰かに読まれる可能性を持つ文章として書き上がった判断されたからこそ、その文章は、ブログに投稿され、ウェブに公開されたわけです。

これを文章を書く側から見れば、ブログに文章を投稿するには、「文章を書く」だけでは足りず、「文章を書き上げる」必要があるということです。感情や思考にただ言葉を与えるだけでは足りず、メッセージを明確にしたり、読み返して書き直したり、論理構造を整えたり、接続詞や言葉を選んだりする作業が必要になります。

このように、自分のブログを持つことは、「文章を書き上げる理由」を与えてくれます。私は、自分のブログを持つことによって、「文章を書き上げる理由」を獲得しました。

(2) なぜ、「文章を書き上げる理由」の獲得が、効用なのか?

このように、自分のブログを持つことで、私は、「文章を書き上げる理由」を獲得しました。しかし、「文章を書き上げる理由」を獲得したことが効用だというのは、どういうことでしょうか。「文章を書き上げる理由」を獲得すると、どんないいことがあるのでしょうか。

ポイントは、次の2つです。

  • a.「文章を書き上げる」ことは、感情と思考を整理するための強力な技である
  • b.「文章を書き上げる理由」がないと、「文章を書き上げる」という技を使うことができない

a.「文章を書き上げる」ことは、感情と思考を整理するための強力な技である

自分の感情や思考に言葉を与えて文章を書けば、自分の感情や思考を整理することができます。感情と思考を整理することは、「文章を書く」ことの大きなメリットです。

文章を書くことで感情と思考を整理するためには大切なのは、感情や思考に言葉を与えることです。感情や思考に言葉を与えれば、感情や思考を言葉で把握して、多少客観的に見ることができます。これに対して、その文章をひとつのまとまった文章へと書き上げることは、必ずしも必須ではありません。感情と思考に何らかの言葉を与えて、感情と思考を客観視することができれば、とりあえず、感情と思考の整理はうまく進みます。

でも、だからといって、まとまった文章を書き上げることにメリットがないかといえば、そうではありません。感情や思考に言葉を与えて生まれた文章の断片を、ひとつのまとまった文章に書き上げていく過程で、感情が落ち着いたり深まったり、思考が結びついたり生まれたり組み立てられたりします。これらも広い意味で、感情と思考の整理といえます。

ここで大切なのは、「文章を書き上げること」による感情と思考の整理のあり方は、単に「文章を書くこと」だけによる感情と思考の整理のあり方とは、かなりちがっている、ということです。感覚的にいえば、「文章を書くこと」による感情と思考の整理は、自分の感情と思考を認識することが中心であるのに対して、「文章を書き上げること」による感情と思考の整理は、あるひとつの感情や思考を他の感情や思考と結びつけて組み立てていくことが中心のような気がします。

「文章を書き上げる」ことによる感情と思考の整理のかたちは、「文章を書く」ことによる感情と思考の整理のかたちと、ちがったものです。「文章を書き上げる」ことで感情と思考を整理すれば、単に「文章を書く」ことだけでは得られないメリットが得られます。

ある意味、「文章を書き上げること」は、自分の感情と思考を整理するための、強力な技だと言えます。

b.「文章を書き上げる理由」がないと、「文章を書き上げること」はできない

ですが、「文章を書き上げる」のは、「文章を書く」よりも、うんと面倒です。

「文章を書く」だけなら、やるべきことは、頭や心に浮かんだ思考や感情を観察して、そこに言葉を与えていくだけです。でも、「文章を書き上げる」ためには、メッセージを明確にしたり、文章の構造を考えたり、比喩や具体例を作ったり、語句や接続詞を推敲したり、何度も読み返して何度も書き直したり、といった作業が必要になります。とにかく手間がかかりますし、くたびれます。

「文章を書き上げる」のはうんと面倒なので、「文章を書き上げる」ためには、それだけ強力な「文章を書き上げる理由」が必要です。強力な「文章を書き上げる理由」がなければ、書きかけの文章のほとんどは、ひとつのまとまった文章へと書き上げられずに終わります。

ということは、「文章を書き上げる」という技を実践できるのは、「文章を書き上げる理由」を持っている人だけです。「文章を書き上げる理由」の獲得は、「文章を書き上げる」という技を実践するための必要条件です。そのため、「文章を書き上げる理由」の獲得は、自分のブログを持つ効用です。

3.私がとくに意識したい、自分のブログを持つ効用

ということで、私は、「自分のブログを持つ効用」として、少なくとも次の2つがあると考えています。

  • 自分の関心を持っているテーマについて、日常的に現役効果を発揮させるという効用
  • 「文章を書き上げる理由」を獲得することで、感情と思考を整理するために「文章を書き上げる」という技を使えるようになるという効用

自分のブログを持つ効用はこれ以外にもたくさんあるとは思うのですが、この2つは私にとってかなり大切な効用です。これからもこの2つの効用を意識しながら、このブログのために文章を書き上げていこうと思います。

スポンサードリンク

関連記事

no image

「起点」「目盛り」「焦点」(Re:発想法と「中心」)

問1:マインドマップとマンダラートには「中心」がある。アウトライナーとKJ法(あるいはこざね法)に

記事を読む

no image

そのときどきの「やりたい」のつまみ食いを、文書の完成へと統合できる_文書作成ツールWorkFlowyの可能性(2)

個人的で主観的な経験なのですが、WorkFlowyで文書を作成するようになってから、文書作成がぐっと

記事を読む

no image

ブログ記事の原稿を書くなら、Evernoteが一番。アイデアを、素早くキャッチし、気長に育てる。

1.Evernoteでブログ原稿を書くと、何がよいか このブログの原稿は、基本的には、すべて私のE

記事を読む

no image

文章を二次元で書く(文章の構造とは何か)

1.文章はほんらい一次元 言葉を発するとき、私たちは、頭に登場する言葉から順番に言葉を発します。言

記事を読む

no image

『7つの習慣』が誇るパワフルな考え方:P/PCバランス

1.『7つの習慣』の魅力は、パワフルな基本となる考え方にある 私は、『7つの習慣』を、すばらしい本だ

記事を読む

no image

最初の1ヶ月と少しを終えた段階で、Google AdSenseとのつきあい方を考える

1.はじめに 2013年5月1日午後4時で、Google AdSense上の2013年4月が終わり

記事を読む

no image

一冊の読書から得る果実を増やすために、読書記事の型を作った

1.読みっぱなしは、もったいない気がしてきた (1) Kindle Paperwhiteを使ったら、

記事を読む

no image

レポート課題に取り組むときの留意点

私は、大学の非常勤講師として学部生向けの講義をひとつ担当しているのですが、その講義の単位認定には試験

記事を読む

no image

粘土のようなアウトライナー、ブロックのようなEvernote。

1.ずっと完成しないで変化し続ける有機体から暫定的な作品群を切り取ること 先日、こんなことを書きまし

記事を読む

no image

私は、こんな道具を使って、文書を作りたい。(その3・「切り出し」による文書作成)

WorkFlowyやUlyssesからヒントを得て、「私は、こんな道具を使って、文書を作りたい。」と

記事を読む

スポンサードリンク

スポンサードリンク

no image
お待たせしました! オフライン対応&起動高速化のHandyFlowy Ver.1.5(iOS)

お待たせしました! なんと、ついに、できちゃいました。オフライン対応&

no image
「ハサミスクリプト for MarsEdit irodrawEdition」をキーボードから使うための導入準備(Mac)

諸事情により、Macの環境を再度設定しています。 ブログ関係の最重要は

no image
AI・BI・PI・BC

AI 『〈インターネット〉の次に来るもの 未来を決める12の法則』を読

no image
[『サピエンス全史』を起点に考える]「それは、サピエンス全体に存在する協力を増やすか?」という評価基準

1.「社会派」に対する私の不信感 (1) 「実存派」と「社会派」 哲学

no image
[『サピエンス全史』を起点に考える]サピエンス全体に存在する協力の量と質は、どのように増えていくのか?

『サピエンス全史』は、大勢で柔軟に協力することがサピエンスの強みだと指

→もっと見る

  • irodraw
    彩郎 @irodraw 
    子育てに没頭中のワーキングパパです。1980年代生まれ、愛知県在住。 好きなことは、子育て、読書、ブログ、家事、デジタルツールいじり。
    このブログは、毎日の暮らしに彩りを加えるために、どんな知恵や情報やデジタルツールがどのように役に立つのか、私が、いろいろと試行錯誤した過程と結果を、形にして発信して蓄積する場です。
    連絡先:irodrawあっとまーくtjsg-kokoro.com

    feedlyへの登録はこちら
    follow us in feedly

    RSSはこちら

    Google+ページ

    Facebookページ

  • 2014年12月
    « 11月   1月 »
    1234567
    891011121314
    15161718192021
    22232425262728
    293031  
PAGE TOP ↑