マルチタスク型とシングルタスク型、どちらがより生産的か?
公開日:
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最終更新日:2013/06/11
仕事の方法論
目次
1.問題意識~マルチタスク型とシングルタスク型、どちらの方がよいのか?~
(1) マルチタスク型とシングルタスク型
複数のプロジェクトを抱えている場合の仕事の進め方を、マルチタスク型とシングルタスク型に分けることができます。
マルチタスク型は、複数のプロジェクトを、少しずつ同時並行で進めます。シングルタスク型は、ひとつのプロジェクトに集中し、まずは、そのプロジェクトのために必要なタスクを集中的に片付けます。ひとつのプロジェクトが終わったら、次のプロジェクトに移ります。
このふたつの仕事の進め方のうち、どちらがよいのでしょうか。
(2) 具体例で考える、マルチタスク型とシングルタスク型
具体的に考えるために、以下の具体例を使います。
a.具体例
ある人が、プロジェクトAとプロジェクトBとプロジェクトCを抱えているとします。
プロジェクトAを完成させるには、A1~A3という3つのタスクを片付ける必要があり、プロジェクトBを完成させるには、B1~B3という3つのタスクを片付ける必要があり、プロジェクトCを完成させるためには、C1~C3という3つのタスクを片付ける必要があります。
A1~A3は、A1→A2→A3という順序で片付ける必要があります。B1~B3とC1~C3も同じです。A1~A3とB1~B3とC1~C3の間には、このような依存関係はなにもありません。
A1~A3、B1~B3、C1~C3という9個のタスクは、それぞれのタスクを片付けるために、1日かかります。
プロジェクト完成の締切りは、プロジェクトAも、プロジェクトBも、プロジェクトCも、9日後です。
b.マルチタスク型の多助くんの場合
マルチタスク型の多助くんは、次のような進め方をします。
多助くんは、とりあえず、A1、B1、C1に取りかかります。今できることは、今のうちにやっておく、というのが、マルチタスク型の多助くんの基本方針です。A1とB1とC1は、すべて今できることなので、全部に手をつけます。
多助くんは、その後も、A系列のタスクと、B系列のタスクと、C系列のタスクを、同時並行で進めます。
そして、A系列、B系列、C系列のタスクを同時並行で進めていき、最終的に、プロジェクトAとプロジェクトBとプロジェクトCを、締め切り日の9日目に仕上げます。
c.シングルタスク型の一樹くんの場合
シングルタスク型の一樹くんは、次のような進め方をします。
一樹くんは、まず完成させるプロジェクトをひとつ決めて、当面はそのプロジェクトに集中します。たとえば、プロジェクトAを完成させることに決めたら、まずはプロジェクトAに集中します。
そして、プロジェクトAを完成させるため、タスクA1→タスクA2→タスクA3という順序でタスクを片付け、プロジェクトAを完成させます。タスクA1に1日、タスクA2に1日、タスクA3に1日かかりますので、プロジェクトAを完成させるまでに3日を使います。
プロジェクトAが完成するまで、プロジェクトBのタスクと、プロジェクトCのタスクには、手をつけません。いわば放置状態です。
プロジェクトAが完成したら、次のプロジェクト、たとえばプロジェクトBに移ります。
一樹くんは、このように、3日目にひとつめのプロジェクトを完成させ、6日目にふたつめのプロジェクトを完成させ、9日目にみっつめのプロジェクトを完成させる、という方法で、3つのプロジェクトを完成させます。
2.プロジェクトマネジメントの理論は、マルチタスク型よりシングルタスク型の方がよい、と結論づける
(1) 理論は、シングルタスク型がよい、と結論づけているらしい
プロジェクトマネジメントの本を読んだところ、プロジェクトマネジメントの理論は、マルチタスク型よりもシングルタスク型の方がよい、と結論づけているそうです。理由は3つあって、(i)リードタイムが短くなる、(ii)段取りに必要な時間が減る、(iii)ひとつに集中した方が効果が上がる、というものです。
これを具体例で説明すると、以下の通りになります。
(2) 具体例で説明する、シングルタスク型のメリット
a.メリット(i) リードタイムが短くなる
(a) 多助くんと一樹くん
リードタイムとは、プロジェクトを受注してからプロジェクトを完成させるまでの期間です。
多助くんのリードタイムは、プロジェクトAも、プロジェクトBも、プロジェクトCも、9日間です。締切り9日間のプロジェクトだったので、リードタイム9日間は合格ラインではあります。
他方で、一樹くんのリードタイムは、プロジェクトA→プロジェクトB→プロジェクトCの順で取り組んだなら、プロジェクトAが3日間、プロジェクトBが6日間、プロジェクトCが9日間です。いずれのプロジェクトも締切り9日間のプロジェクトですが、プロジェクトAは締切りの3分の1の期間である3日間で完成しているので、とても早いと言えます。プロジェクトBも、締切りまで3日を残す時期に完成しているので、早いです。プロジェクトCは、締め切り日に完成していますので、特に早くはないですが、合格ラインです。
多助くんと一樹くんの仕事の力に、差はありません。プロジェクトを片付けるための所要時間も同じだと仮定しています。それなのに、マルチタスク型の多助くんは3つのプロジェクト全部のリードタイムが9日間なのに、シングルタスク型の一樹くんのリードタイムは、3日と6日と9日です。平均を取れば、多助くんがリードタイム9日間、一樹くんがリードタイム6日間です。一樹くんの方が、1.5倍も仕事が速いと評価されるのではないかと思います。
(b) シングルタスク型のメリット
シングルタスク型は、プロジェクトのリードタイムの平均が短くなります。
リードタイムが短くなれば、「仕事が速い」と評価されます。また、プロジェクトの対価をより速く得ることができます。
b.メリット(ii) 段取りに必要な時間が減る
(a) 多助くんと一樹くん
ひとつのプロジェクトに関わるタスクを行っているときに、別のプロジェクトに関わるタスクに切り替えるためには、タスク切り替えのための段取り作業が必要になります。パソコン上で開くファイルを切り替えたり、参照する書類を机の上に出したり、頭を切り換えたりする必要があります。
多助くんは、マルチタスク型なので、一日の間に、プロジェクトAのタスクも、プロジェクトBのタスクも、プロジェクトCのタスクも、やります。そうすると、自然と、1日の中で、タスクA-1→タスクB-1への切替えや、タスクB-2→タスクC-2への切替えなどの作業が必要になります。その分、書類を出し入れしたり、パソコン上で開くファイルを変えたり、別のプロジェクトのために頭を切り換えたりする必要が生じます。
これに対して、一樹くんは、最初の3日間はプロジェクトAのことばかりやり、次の3日間はプロジェクトBのことばかりやり、最後の3日間はプロジェクトCのことばかりやっているので、段取りに必要な時間は、それほど多くありません。同じ書類を3日間ずっと机の上に置いておくことも可能です。
この差は、ひとつのタスクを片付ける所要時間に反映されます。多助くんは、ひとつのタスクから別のタスクに切り替える段取り時間がかかるので、本来は1日で終わるはずのひとつのタスクを完了させるために、1日+αの時間が必要になります。その結果、締切りである9日間で3つのプロジェクト全部を終えるには、多少無理する必要があります。
(b) シングルタスク型のメリット
シングルタスク型は、あるタスクから別のタスクに切り替えるための段取りが少ないです。そのため、この段取りのために必要な時間がありません。
c.メリット(iii) ひとつに集中した方が効果が上がる
(a) 多助くんと一樹くん
ひとつのプロジェクトのことばかりやっていると、そのプロジェクトに精通でき、集中でき、効果が上がります。
多助くんは、同時に複数のプロジェクトのタスクを進めます。これに対して、一樹くんは、3日間は、ひとつのプロジェクトに集中して、ひとつのプロジェクトに、朝から晩まで取り組んでいます。
これによって、多助くんに比べて、一樹くんは、進めているそのプロジェクトに対する集中度が増し、その結果、成果が上がります。
同じ納期で納品した成果物の質は、一樹くんの方が上になる可能性が高いです。
(b) シングルタスク型のメリット
シングルタスク型で取り組めば、現在進行形で取り組んでいるプロジェクトに対する集中度が増します。集中度が増せば、成果物の質も上がります。
3.現実を、理論に従わせた方がよいのだろうか
このように、プロジェクトマネジメントの理論は、シングルタスク型の方がよい、と結論づけるようです。
これに対して、私自身の仕事の進め方は、かんりマルチタスク型です。そのため、プロジェクトマネジメントの理論を活用して、もう少しシングルタスク型に移行した方がよいのかなあ、と考えています。
マルチタスク型のメリットをもう少し考察して、それでもシングルタスク型の方がよい、という結論に至ったら、できる限りシングルタスク型を取り入れて仕事をするようにしたいと思っています。
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