制限時間がある:ドラクエのレベル上げと現実世界の重要な違い(2)
公開日:
:
最終更新日:2014/03/17
書き方・考え方
目次
1.はじめに
ひとつ前の記事で考えたテーマは、「ドラクエのレベル上げと現実世界の自分育成は、(似ているところもあるけれど、)違うところがあるのではないか」ということです。
現実世界の自分育成を効果的に進めるためには、両者の違いをきちんと押さえておくべきだろう、と感じたため、重要そうな違い、つまり、「ドラクエは対象だけで経験値が決まるけれど、現実世界で経験値を決めるのは対象だけじゃない」という違いについて、考えてみました。
でも、経験値が対象だけで決まるか否か、以外にも、重要な違いがまだいくつも残されているように思います。そのうち、次は、「ドラクエのレベル上げは制限時間がないけれど、現実世界の自分育成は制限時間がある」ということを考えてみます。
2.現実世界では、制限時間がある
(1) ドラクエのレベル上げは、制限時間がない
ドラクエのレベル上げには、制限時間がありません。レベル上げにたくさんの時間を注ぎたいと思えば、好きなだけたくさんの時間を注ぐことができます。
小中学生のころ、私はドラクエ5が特に好きで、何度か繰り返し楽しみました。その何度目かのとき、私は、「子ども時代、ビアンカと一緒にお化け退治をする間に、主人公とビアンカのレベルを20にする」という目標を掲げ、達成しました。
お化け退治のときにレベル20まで上げるには、相当、時間がかかります。現実世界で私がこの目標を達成するために費やした時間は、今ふり返ると、我ながらあきれるほどの長時間です。
でも、それだけたくさんの時間をレベル上げに注ぎ込んでも、ドラクエ内の時間は、ちっとも時間切れになりませんでした。
お化け城のお化けも、主人公の父親も、村の悪ガキも、主人公とビアンカがお化けを退治するのを、ずーっと気長に待っていてくれました。もっといえば、魔王も、世界侵略を待っていてくれました。お化け退治のときに時間を使いすぎたことで、その後、主人公たちが世界を救うことに悪影響が出た、なんてことは、ちっともありませんでした。
ドラクエでは、レベル上げに時間制限がありません。だからこそ、私は、レベル上げに好きなだけ時間を注ぎこむことができます。満足するまで、納得するまで、「これで大丈夫」と安心するまで、存分に、レベル上げに時間を費やすことができます。
(2) 現実世界の自分育成は、制限時間がある
でも、現実世界の自分育成は、こういうわけにはいきません。現実世界の自分育成には、制限時間があります。
ビアンカとのお化け退治が、仮に現実世界のことだとしたら、あまりに過剰なレベル上げをしようとすることは諦めて、お化け退治に必要な限度のレベル上げにとどめておかないと、時間切れになります。パパスの風邪が治っちゃってビアンカとお別れになったり、村の悪ガキがキラーパンサーいじめに飽きるかもしれません。
なぜ、現実世界には時間制限があるのかといえば、次の3つの理由ではないかと思います。
a.本番の時期が決まっている
ひとつめは、レベル上げをする目的自体の時期が決まっていることが多い、ということです。たとえば、受験勉強のためのレベル上げは、試験本番までに終わらせなければいけません。たとえば、試合のためのレベル上げは、試合本番までに終わらせなければいけません。
b.別の人に先を越されるかもしれない
ふたつめは、別の人に先を越されるかもしれない、ということです。万全のビジネスモデルをじっくり育てている間に、別の人が同じようなビジネスモデルで成功してしまうかもしれません。世紀の大発見をじっくりじっくり準備している間に、別の人が華々しく発表してしまうかもしれません。
c.寿命がある
みっつめは、寿命があることです。ドラクエの主人公には寿命がありませんが、私たちには寿命があります。80年しか寿命がないのであれば、ひとつのことに20年も30年もかけてレベル上げをすることは、他のことに影響を与えざるを得ません。
(3) 「これで大丈夫」と確信できなくても、どんどん本番に取り組む
ドラクエのレベル上げと違って、現実世界の自分育成には制限時間があるのであれば、では、どうするとよいのでしょうか。
私が思うのは、「これで大丈夫」と確信できなくても、どんどん本番に取り組む、ということではないかと思います。
ドラクエのレベル上げには制限時間がありません。なので、「ここまでレベル上げをすれば、絶対に全滅しない。」と確信できるほどにレベル上げしてから、盤石の体制を整えて先に進む、という作戦が可能です(これがおもしろいかどうかは別問題)。
でも、現実世界の自分育成には制限時間があります。「ここまで自分を育てれば、絶対に大丈夫。」と確信することを求めていては、いつになっても自分を育てることが終わらなくて、ちっとも本番を経験できません。
安心できるまでレベル上げする、というプレイスタイルが不可能であることを自覚し、多少の不安があっても、どんどん本番に取り組むことが、制限時間のある現実世界で自分を育てる上では、大切なのではないかと感じます。
3.補足:R-styleの「虚構の中の時間」より
R-styleの倉下忠憲さんから、Twitterで、以下のコメントをいただきました。ありがとうございます。
この記事を思い出した→虚構の中の時間 http://t.co/twB5SvoJ2U 制限時間がある:ドラクエのレベル上げと現実世界の重要な違い(2) http://t.co/KDp29sTHY4
— 倉下 忠憲 (@rashita2) 2014, 3月 17
引用されていた記事は、とてもおもしろい記事でした。私がこの記事で何となく考えたことと同じような方向性の問題意識が、もっとおもしろく、もっと端的に表現されています。よろしければ、ぜひご一読を!
でも、現実世界の時計は朝と昼を切り替えるだけでなく、時を前に進めるのだ。スライムばかり倒していたら、レベル99にたどり着く前にこの世が終わってしまう。仮にレベル99になれたとしても、もはや魔王を倒すほどの猶予は残っていないだろう。
この1時間、この30分、この5分に何をするか。
それは、たぶん、私たちが、考えているよりも、大きな、意味を、持っている。
大きな、意味を、持っているのだ。
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