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Evernoteを捉えるメタファー

公開日: : Evernote

1.Evernoteをメタファーで捉える

(1) Evernoteをどんなメタファーで捉えるか

a.Evernoteは、自由なツール

Evernoteの特徴のひとつは、自由さにあります。

Evernoteは、いろんなデータをたくさん保存することができ、保存したデータをいろんな形で整理したり検索したりすることができます。でも、Evernoteは、「正しい使い方」を示しません。Evernoteは、ユーザーに、幅広い使い方を許容します。

『Evernote「超」知的生産術』は、Evernoteを「多目的カード」だと評しています。

Evernoteはまさにこの「多目的カード」です。シンプルな構成と使用方法にあらかじめ枠の設定されていないデジタル情報管理ツールはいままで無かったでしょう。

『Evernote「超」知的生産術』p.316

b.Evernoteを説明するために、メタファーを使う

Evernoteは、使い方の点でユーザーを制約しない、自由なツールです。でも、このことは、Evernoteがどんなツールなのかを言葉で説明することを、困難にします。

そのため、多くの人は、「Evernoteってなに?」という問いに答えるために、メタファーを使います。

(a) Evernote社による「第2の脳」

たとえば、Evernote社は、Evernoteを、「第2の脳」というメタファーで捉えます。

Evernoteを、みなさんの一生の記憶を保つための第2の脳にしたいので、そのためには大きく強く独立した会社を作るのが一番です。Evernote にはもともと(企業としての)出口戦略があったことはありません。永遠に優れた会社を作りたいのですから「出口」はいらないのです。私たちのゴールは、100年後もEvernoteがみなさんに愛されることです。

Evernote日本語版ブログ | すべてを記憶する | Evernoteより)

Evernote社は、Evernoteを「すべてを記憶する」「第2の脳」だと捉えます。このメタファーは、幅広い形式のデータを、ほぼ無制限に、保存し続けることができる、というEvernoteの特徴を表現しています。

(b) 紙のメタファー

多くの本やブログで紹介されているのは、紙のメタファーです。Evernoteがデータを保存する単位は「ノート」であり、「ノート」をまとめるのが「ノートブック」、そして「ノート」に「タグ」をつけることができます。この設計は、紙のメタファーで捉えるのが自然です。

また、Evernoteを情報カードシステムのように捉える(1つの「ノート」を1枚の情報カードのように考え、「ノートブック」をカードボックスのように使う、など)のも、紙のメタファーでEvernoteを捉えることの一例です。

(2) 価値を拡大するメタファー

Evernoteをメタファーで捉えることは、単に、「Evernoteってなに?」という問いに答えることを超えた意味があります。それは、どんなメタファーでEvernoteを捉えるかによって、Evernoteから得られる価値を増やすことができるかもしれない、ということです。

物事をメタファーで捉えることの効果のひとつは、発想が促されることです。

Evernoteをメタファーで捉えると、Evernoteの使い方についての発想が促され、いろんな使い方を思いつきます。それによって、それまでとは違った価値を、Evernoteから得ることができるようになるかもしれません。

たとえば、Evernoteを「第2の脳」というメタファーで捉えるか、「ルーズリーフ・バインダ・本棚・付箋」といった紙のメタファーで捉えるかによって、Evernoteをどのように使うかの発想が変わります。また、同じ紙のメタファーにしても、キャンパスノートのように捉えるか、ルーズリーフのように捉えるか、さらに進んで京大カードを中心とする「情報カードシステム」のように捉えるかによって、Evernoteをどのように使うかの発想が変わります。そして、それによって、Evernoteから得られる価値も変わります。

Evernoteを捉えるメタファーを変えれば、Evernoteの使い方が変わります。Evernoteの使い方が変われば、Evernoteから得られる価値が変わります。

メタファーを変えることで、Evernoteから得られる価値が変わった、ということは、私自身の実体験でもあります。私自身は、Evernoteを捉えるメタファーを変えたことで、Evernoteから得られる価値が大きく増えました。

そこで、Evernoteを捉えるメタファーとEvernoteから得られる価値の関係を考察するための一材料として、私がEvernoteを捉える3つのメタファーをご紹介します。それは、畑、地層、大きな引き出し、の3つです。

2.Evernoteからの価値を拡大した3つのメタファー

(1) 畑 → Evernoteで文章や思考を「育てる」

ひとつめは、畑です。耕して、種をまいて、水やりをして、収穫をする、あの畑です。Evernoteを畑のメタファーで捉えるとは、どういうことでしょうか。

多くの場合、Evernoteは、いろんな情報を保存するためのツールとして、把握されています。Evernote社による「すべてを記憶する第2の脳」も、「記憶」なので、強調されているのは情報の保存です。

しかし、Evernoteは、ノートに書き加えたり、修正したり、といったノート編集が、とても得意です。たとえば、Evernoteに保存したウェブクリップにテキストを書き加えたり、一部だけを抜き出したり、といったことが、難なく実現できます。

そのため、Evernoteに保存した情報は、Evernote内で編集し、情報の価値を上げていくことができます。そして、このように、Evernoteに保存した情報の価値を上げていく、という使い方をすると、単にEvernoteを情報をそのまま保管する場所として使うよりも、Evernoteから得られる価値が、ぐんと増えます。

Evernoteを畑のメタファーで捉えると、この、Evernotに保存した情報の価値を上げていく、ということを意識することができます。Evernoteという畑に、アイデアの種をまき、編集という水やりをして、まとまった思考や文章という果実を収穫するわけです。

Evernoteを畑というメタファーで捉えることによって、Evernoteで文章や思考を「育てる」ことができます。

Evernote×ブログ記事。すき間時間を活用してブログ記事を栽培する方法

Evernote×思考。Evernoteで、考えを捕まえ、育て、寝かせる。

文章を書くツールとしてEvernoteを使うことのメリット テキストデータのポケットひとつ原則

なお、畑のメタファーは、『Evernoteとアナログノートによるハイブリッド発想術』にも書かれていました。

ここでのメタファーは、Evernote自体を捉えるものというよりも、広く発想のプロセス全体を捉えるものとして提示されています。でも、基本的な方向性は共通します。畑というメタファーを活用するためには、参考になる記載がたくさんありますので、よろしければご一読を。

(2) 地層 → Evernote内を「発掘する」

ふたつめは、地層です。

これは、まさに、『Evernoteとアナログノートによるハイブリッド発想術』で紹介されていたメタファーです。

アイデアの「畑」と「地層」:『ハイブリッド発想術』読書メモ(「なぜ、私は、思考するツールとして、Evernoteを使うのか」番外編)

化石燃料も埋まっているだけでは意味がなく、それらを掘り出して使う必要があるように、自分の記憶や体験も忘れてしまったままでは、あまり意味を成しません。知識・情報・体験を蓄えて、それを「掘り出せる」状態にしておくことで、役立てることができます。

必要な時に、昔の自分の体験を引き出せるようにしておくこと。これが「アイデア地層」作りです。表現を変えれば、過去の自分を味方にするための方法と言えるかもしれません。

『ハイブリッド発想術』より

Evernoteにいろんな情報を保存することは簡単です。でも、保存するだけではあまり意味がありません。Evernoteに保存した情報は、そこから何らかの価値を生み出してこそ、意味があります。

このために役立つメタファーが、地層です。

長年Evernoteを使い続けていれば、それだけ、Evernoteにはいろんな情報が保存されています。しかも、Evernoteに保存された情報は、Evernoteの機能によって、作成日や更新日という時間軸の要素が自動的に付与されます。そのため、Evernoteなら、Evernoteに保存したたくさんの情報を、時系列でたどる、ということを実現できます。

見方によっては、これは、地層です。Evernoteの中に、自分が関わった情報の地層ができている、と言えます。

Evernoteを地層のメタファーで捉えることには、2つの意味があります。

ひとつは、「発掘する」という姿勢です。Evernoteに保存してから長い時間が経過した情報は、地層の深いところに蓄えられています。そこから価値を引き出すためには、地層を「発掘する」ことが必要です。Evernoteを「発掘する」という姿勢でEvernoteと接することは、Evernoteからより多くの価値を引き出すことを可能にします。

もうひとつは、Evernoteの中の地層に対する責任の感覚です。自分のEvernoteの中の地層は、自分のEvernoteの使い方をそのまま反映します。Evernoteを地層と捉えると、自分のEvernoteの使い方が、そのまま、自分のEvernoteの中に地層を作る、ということに気づかされます。ここから、Evernoteの中に生成される地層に対する責任の感覚が生じて、自分のEvernoteの使い方に対する自覚が促されます。

(3) 大きな引き出し → 「しまう」と「響く」

みっつめは、大きな引き出しです。

「大きな引き出し」は、恩田陸さんの連作短編集『光の帝国』の最初に収録されている短編です。

主人公の春田家の皆さんは、驚異的な記憶力を持っていて、膨大な書物や音楽、人の話を、そのまますべて記憶することができます。春田家の皆さんは、書物に記された物語や人が語る物語をまるごと記憶することを、「大きな引き出し」に「しまう」と表現します。そして、「大きな引き出し」に「しまわれた」物語たちは、あるとき、「響き」ます。

「しまう」と「響く」

私は、本を読んだり音楽を聴いたりすることが好きなので、春田家の皆さんの「大きな引き出し」を、うらやましく感じていました。しかし、Evernoteを使い始めて、Evernoteが私にとっての「大きな引き出し」なんだと感じました。

その後、私は、Evernoteを、「大きな引き出し」のメタファーで捉えています。

Evernoteを「大きな引き出し」のメタファーで捉えるようになって、私は、Evernoteの中に、自分にとっての大切な体験を「しまう」ことを、より自然にできるようになりました。

さらに、Evernoteを「大きな引き出し」のメタファーで捉えるようになって、私は、Evernoteの中に「しまった」自分の体験が、ひょんなところで顔を出して、そこから新しい価値を生み出す、というような状況に、よく遭遇するようになりました。つまり、Evernoteにしまわれた体験が、しばしば、「響き」ました。

Evernoteを「大きな引き出し」と捉えると、Evernoteにいろんなものを「しまう」ことが促され、また、Evernoteに「しまった」いろんな体験が、しばしば「響く」ようになります。

Evernoteは「大きな引き出し」。「しまう」と「響く」

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