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クラウドに上げない方がよい情報の範囲と、Evernoteのローカルノートブックの可能性

公開日: : Evernote

1.どの資格で預かったかによって、クラウドに上げない方がよい情報を線引きする

(1) 問題の背景

先日、大学講師として、Evernoteをこんな風に使ってます、ということを書きました。

Evernote×大学の講義(2) 講師という立場で、Evernoteをどう使っているか

この中で、自分の講義を自己評価するための材料として、受講生が書いたレポートを、Evernoteに蓄積してます、ということを書きました。受講生が書いたレポートは、自分の講義が受講生に届いたか、を判断するための大切な資料なので、Evernoteに蓄積する価値があります、ということです。

これに対して、るうさん(@ruu_embo)から、Twitter上で、こんなご指摘をいただきました。

確かにそうだなと、ハッとさせられました。

受講生の成績は個人情報っぽいのでEvernoteに入れることはしていなかったのですが、受講生が書いたレポート自体も、受講生の情報です。

Evernoteを育てることに熱中するあまり、クラウドに上げない方がよい情報を線引きする感覚が、ちょっと甘くなっていたかもしれません。

(2) 自分なりの指針

a.「私個人でない資格で預かった情報は、クラウドに上げない」

どの範囲の情報をクラウドに上げてよいか、という問題は、むずかしい問題です。でも、GmailやEvernoteを自分の活動に活用するなら、避けては通れない問題です。そのため、自分なりの指針を考えておく方がよさそうです。

そこで立てた私なりの指針は、「私個人ではない資格で預かった情報は、クラウドに上げない」というものです。

(私個人の資格で預かった情報については、その都度、判断することにします。)

b.ヒントをいただいて、指針を立てた

この指針を立てるにあたって、今回のるうさんのご指摘から、大きなヒントをいただきました。「残念ながら学生のレポートや成績をWebベースのシステムにあげるのに難色を示す施設もあると思うので」という部分です。

ポイントは、「施設が」難色を示す、ということ。今回のケースでは、「大学が」です。

私が個人としてEvernoteを使うことに、なんで大学が難色を示す可能性があるかと言えば、大学講師として私がすることは、私個人の資格での行動ではなくて、大学講師という資格での行動だからです。

私が、私個人の資格でやっていることについては、責任を持たなきゃいけないのは私です。でも、これは同時に、私が責任を持つことができる、ということを意味します。

他方で、私が大学講師という資格でやっていることについては、何かあったときの責任は私が追うべきなのですが、私個人が責任を持てばそれで終わり、というわけにはいきません。大学講師という資格で私が何かをやらかしたら、大学にも責任が生じる可能性があります。私個人の資格ではない資格で何かをした場合、そこから発生する責任は、私個人だけでは持ちきれないわけです。

そのため、「私個人ではない資格で預かった情報は、クラウドには上げない」という指針を立てました。

c.受講生のレポートは、クラウドに上げないことにする

この指針に従えば、受講生のレポートは、クラウドに上げない情報です。

なぜなら、受講生のレポートは、受講生が、大学の講義の単位認定を受けるため、大学講師という資格としての私に提出したものです。とすれば、受講生のレポートは、私個人ではない資格で預かった情報だからです。

そこで、受講生のレポートをクラウドに上げることは、やめました。

2.Evernoteのローカルノートブック

(1) クラウドに上げない情報を、Evernoteのシステムに組み込むための選択肢としての、ローカルノートブック

どのような指針であれ、クラウドに上げない情報の指針を設定すれば、Evernoteのサーバーに保存できない情報が出てきます。そこで、Evernoteのサーバーに保存できない情報をどうするか、という問題が発生します。

ひとつの選択肢は、Evernoteでそのような情報を管理しない、そのような情報は別のシステムで管理する、というものです。

これに対して、Evernoteのサーバーに上げずに、Evernoteで管理する、という選択肢もあります。るうさんもツイートで述べていたように、それは、ローカルノートブックを使う、という方法です。

Evernoteは、ローカルノートブックという機能を持っています。ローカルノートブックは、Evernoteのサーバーと同期されないノートブックです。このノートブックに入っているノートは、そのコンピュータだけに存在します。クラウド上には上がりません。

「ローカルノートブックとは、作成されたコンピューターのみに存在するノートブックです。Windows、Mac および Web 上で作成された Evernote の新規ノートブックは、初期設定ではすべての Evernote の入ったコンピュータとデバイスで同期されますが、ローカルノートブックは同期されません。新規ノートブック作成時、ノートブックの種類をローカルノートブックに設定できます。作成後にノートブックの種類を変更することはできませんのでご注意下さい。」

Evernote ナレッジベース | Evernote

クラウドに上げない情報をEvernoteに保存するためには、ローカルノートブックの中に保存すればOKです。

参考

Evernote無料ユーザーなら絶対知っておくべきローカルノートブック機能

(2) ローカルノートブックの動き方

ローカルノートブックの動き方には、いくつか覚えておくとよいことがあります。

a.ローカルノートブック内のノートも、検索対象になる

ローカルノートブックを保存してあるパソコンのEvernoteクライアントからの検索なら、ローカルノートブックに保存してあるノートも、検索の対象になります。検索にヒットしたノートがローカルノートブックに保存されたノートであっても、普通のノートブックに保存されたノートであっても、同じように表示されます。

b.普通のノートブックとローカルノートブックを一緒のスタックにすることはできる

ローカルノートブックは、普通のノートブックと一緒のスタックにまとめることができます。こうしてできたスタックを選択すれば、そこに表示されるノートは、スタック下にあるノートブック(ローカルノートブックと普通のノートブック)両方に保存されているノートです。

c.「すべてのノート」に、区別なく並ぶ

ローカルノートブックに保存されているノートも、普通のノートブックに保存されているノートも、「すべてのノート」のビューにすれば、区別なく並びます。

e.「関連するノート」機能が使えない

ここまで3つは、(ローカルノートブックを保存してあるパソコンから使うかぎり、)ローカルノートブックに保存してあるノートも、普通のノートブックに保存してあるノートも、どちらでも変わりがないことでした。

でも、ローカルノートブックに保存してあるノートなのか、普通のノートブックに保存してあるノートなのかによって、動き方が変わる点があります。それは、「関連するノート」です。「関連するノート」機能は、Evernoteのサーバーが処理している機能なので、ローカルノートブックはこの機能を使えないのです。

具体的には、次の2点です。

  1. ローカルノートブックに保存してあるノートを開いても、「関連するノート」が表示されない
  2. ローカルノートブックに保存してあるノートは、「関連するノート」として表示される対象にならない

(3) ローカルノートブックから価値を引き出すための条件は、母艦が決まっていること

このように、ローカルノートブックに保存してあるノートが、普通のノートブックに保存してあるノートとちがうのは、要するに、「関連するノート」機能だけです。とすれば、「関連するノート」機能を重視しないのであれば、ローカルノートブックであろうが、普通のノートブックであろうが、どちらでもよいことになります。

ということは、母艦が決まっている人、つまり、Evernoteを使うメインのパソコンが決まっている人なら、そのパソコンにローカルノートブックを作れば、ローカルノートブックであることをそれほど意識せずに、便利にEvernoteを使える、ということです。

(4) ローカルノートブックでも、Evernoteを使う意味がある

Evernoteの特徴は、クラウドだということです。これに対して、ローカルノートブックは、データをクラウドに上げずに、手元のパソコンだけにデータを保存します。この用途は、Evernoteの特徴であるクラウドと関係ないので、Evernoteの本領をぜんぜん発揮できていないようにも思えます。ローカルノートブックを使ってまでEvernoteを使うことに、なにか意味があるのでしょうか。

私は、あるのではないかと思っています。クラウドであることは、Evernoteの特徴ではありますが、唯一の強みではありません。Evernoteには、他にも、こんな強みがあります。

  • ノート、ノートブック、タグという機能で、あらゆる電子データを保存できる
  • 強力な検索機能で、Evernoteに保存した情報をかなり自由に引き出すことができる
  • あるひとつのノートから別のノートへと簡単に移動できる
  • 「ノートを保存する」という動作をする必要がない
  • ウェブクリップやフォルダインポートなど、いろんな方法でEvernoteに情報を追加できる
  • 膨大な数のノートを保存しても、動作があんまり重くならない

特に、ひとつのノートから別のノートへと簡単に移動できることと、「ノートを保存する」という動作をする必要がないことは、Evernoteで文章をどんどん書くには、すごくありがたい機能です。

Evernoteのこれらの強みは、これらだけで、Evernoteを十分に強力な知的生産システムにしてくれます。クラウドというEvernoteの重要な特徴を使わなくても、Evernoteを使う意味は、十分にあります。

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