WorkFlowyで、文章となる枠の外に混沌さを排出して、文章を書く
私のしつこいおすすめ活動の成果か、ウェブ経由ではない何人かの知り合いが、WorkFlowyを使い始めてくれました。そのうちの何人かは、WorkFlowyのことをかなり気に入ってくれて、Windowsに「WorkFlowy専用Firefox」を、iPhoneにHandyFlowyを、導入してくれました。感謝。
ただ、彼らは、口をそろえて、「WorkFlowyは、文章を書く道具ではない。」といいます。「WorkFlowyは、アイデアをメモしたり、論理を組み立てたりするには、とても役に立つ。でも、文章の表現を整えるためには、あまりふさわしくない気がする。」とのことです。
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これを聞いた私は、「たしかにそういうところもあるよね。」と思いました。置換や文字数カウント機能を持っていませんし、Enterやカーソル移動、文字選択には癖があります。だから彼らに、「WorkFlowyは文章を書く道具ではない、と考える理由は、どのあたりにあるの?」と、尋ねてみました。
この質問をしたとき、私は、回答として出くるのは、機能不足の問題(置換や文字数カウントがないこと)か癖のある挙動(Enter、カーソル移動、テキスト選択)のいずれかまたは両方だと予想していました。そして、機能不足に対してはアドオン・機能拡張によるカスタマイズを助言し、癖のある挙動に対しては癖を理解するための情報を提供し、「WorkFlowyすげー!」に誘導しようと目論んでいたのでした。
ところが、彼らの回答はちがいました。
「混沌とする。収拾がつかなくなる。」
つまり、
(1) WorkFlowyは、とてもうまくアイデアを広げてくれる。
(2) だから、WorkFlowyで文章を書こうとすると、次々と新しいアイデアを閃き、関連することを思い出す。
(3) そのため、次々と新しいメモが生まる。
(4) たくさんのメモが次々と生まれるので、収拾がつかなくなる。
(5) 結果、文章を完成させるどころか、WorkFlowyのアウトライン内部は、どんどん混沌としていく。
(6) だから、WorkFlowyを文章を書くための道具として使うことは難しい。
というわけです。
これは、かなり本質的な問題です。機能不足や挙動の癖とはちがい、アドオン・機能拡張や情報では、なんともなりません。
そして逆に、彼らから、「なぜ、WorkFlowyで文章を書いても、収拾がつかなくならないのか?」と質問されました。彼らは、WorkFlowyのアウトラインを混沌とさせないためのコツを求めていました。
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「なぜ、WorkFlowyで文章を書いても、収集がつかなくならないのか?」「WorkFlowyのアウトラインを混沌とさせないためのコツは何か?」
少し考えて、「この質問はちょっとちがう。」と思いました。なぜなら、私も、WorkFlowyで文章を書いていると、収拾がつかなくなるからです。次々と新しいアイデアを閃き、次々と関連することを思い出すため、たくさんの新しいメモが生まれて、収拾がつかなくなり、WorkFlowyアウトラインは混沌としていきます。
それでも、私は、実際に、WorkFlowyで文章を書いています。ブログに公開したものだけでも、200個を超えますので、ちょっとした数です。混沌としたWorkFlowyのアウトラインから、現に、これだけの文章を書いてきました。つまり、私は、WorkFlowyのアウトラインが混沌としても、困っていません。
だから、ここで考えるべき質問は、「なぜ、収拾がつかず混沌としていくWorkFlowyのアウトラインで、文章を書き上げることができるのか?」です。「WorkFlowyのアウトラインを混沌とさせないためのコツ」ではなく、「混沌としていくWorkFlowyのアウトラインから秩序を備えた文章を書き上げるためのコツ」こそが、求められています。
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「なぜ、収拾がつかず混沌としていくWorkFlowyのアウトラインで、文章を書き上げることができるのか?」「混沌としていくWorkFlowyのアウトラインから秩序を備えた文章を書き上げるためのコツは何か?」
私の答えは、「文章となる枠の外に混沌さを排出する」です。
WorkFlowyで文章を書こうとすると、WorkFlowyのアウトラインは混沌としていきます。これは、WorkFlowyを使うとたくさんのアイデアを閃くことの裏側であり、決して殲滅すべき事象ではありません。
そこで、視点を切り替える必要があります。大切なのは、あるひとつの文章を書き上げることであって、WorkFlowyのアウトライン全体の秩序を整えることではありません。WorkFlowyのアウトライン全体の秩序がどれほど混沌となっていっても、ひとつの文章に相当する範囲の秩序を作品といえるほどまで高めることができれば、それで何も困りません。
だから、WorkFlowyのアウトラインの中に、文章となる枠を仮に設けて、文章を完成させるために不要な部分を、どんどん枠の外に出します。すると、混沌さが枠の外に排出され、枠の外の秩序が崩れていく反面、枠の内側の秩序は高まります。このプロセスを続けていけば、いずれ、枠の内側がひとつの作品といえるほどまで高まりますので、このタイミングで、枠の内側をひとつの文章として切り出します。こうして、混沌としたWorkFlowyのアウトラインから文章を書き上げることができるわけです。
これが、「文章になる枠の外に、混沌さを排出する、という文章の書き方」です。
そして、WorkFlowyは、こんな書き方をするために必要な機能と枠組みを、理想的な形で備えています。
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WorkFlowyで文章を書こうとすると、広がる思考に収拾がつかず、アウトライン全体は混沌としていきます。でも、アウトラン全体の中に秩序ある一部分が育ち、その一部分が作品として結実します。
こんな書き方ができるのは、WorkFlowyの基本的な枠組みと機能のおかげです。だから、私は、WorkFlowyのことを、文章を書くための優れた道具だと考えています。
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