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『WorkFlowy文章作法』第1章「2つの原則」(前半「知的生産のフロー」)

公開日: : WorkFlowy, 書き方・考え方

この記事は、『WorkFlowy文章作法』の第1章「2つの原則」のうち、前半の「知的生産のフロー」です。

『WorkFlowy文章作法』は、WorkFlowyで文章を書くための原則と方法を、なるべく淡々としたトーンで記載する連載です。結城浩先生の『数学文章作法』にインスパイアされています。

『WorkFlowy文章作法』の全体構造は、次のとおりです。

  • はじめに
  • 第1章「2つの原則」
  • 第2章「メッセージとその構成要素」
  • 第3章「文章とその構成要素」
  • 第4章「メッセージ群と文章群」
  • 第5章「フロー全体を大切にする」
  • 第6章「自分の全体から、目的に対応した一部分を切り出す」

この記事は、第1章「2つの原則」のうち、主に前半の「知的生産のフロー」を書きます。

  • 第1章「2つの原則」
    • 1.この章で学ぶこと
    • 2.「知的生産のフロー」(この記事、ここまで)
    • 3.「全体から一部分を切り出す」
    • 4.この章で学んだこと

1.この章で学ぶこと

WorkFlowyで文章を書くことには、2つの原則があります。

  • 「知的生産のフロー」
  • 「全体から一部分を切り出す」

の2つです。

WorkFlowyは、文章を書くために使う道具に過ぎません。どんな道具を使っても、文章を書くのはいつもと同じ私であり、あなたです。どんな道具を使っても、文章を書くことが特別なことになるわけではありません。

他方で、WorkFlowyで文章を書くことは、WorkFlowyではない他の道具を使って文章を書くことと、ある意味で本質的なちがいを持っています。このちがいにうまくなじめば、あなたはきっと、WorkFlowyで文章を書くことが好きになると思います。ですが、このちがいにうまくなじめなければ、あなたは文章を書くためにWorkFlowyを使う意義を理解できないのではないかと思います。

そこで、WorkFlowyで文章を書くには、WorkFlowyで文章を書くことの特別さを理解し、その特別さをむしろ活かす必要があります。そのために大切なことが、本章で取り上げる2つの原則です。

この2つの原則は、本書全体を通じてくり返し登場しますので、よろしければ、本章で暗記してしまってください。本章では、この2つの原則のポイントをいくぶん抽象的に説明しますが、本章の抽象的な説明は、本書全体のメッセージを理解することを、きっと助けることでしょう。

2.「知的生産のフロー」

(1) 知的生産はフローである

知的生産とは、「頭をはたらかせて、なにかあたらしいことがら-情報-を、ひとにわかるかたちで提出すること」です。(『知的生産の技術』より)

つまり、かんたんにいえば、知的生産というのは、頭をはたらかせて、なにかあたらしいことがら-情報-を、ひとにわかるかたちで提出することなのだ、くらいにかんがえておけばよいだろう。この場合、知的生産という概念は、一方では知的活動以外のものによる生産の概念に対立し、他方では知的な消費という概念に対立するものとなる。

『知的生産の技術』location 234

「既存の、あるいは新規の、さまざまな情報をもとにして、それに、それぞれの人間の知的情報処理能力を作用させて、そこにあたらしい情報を作りだす作業」が、知的生産です(『知的生産の技術』より)

知的生産とは、知的情報の生産であるといった。既存の、あるいは新規の、さまざまな情報をもとにして、それに、それぞれの人間の知的情報処理能力を作用させて、そこにあたらしい情報をつくりだす作業なのである。

『知的生産の技術』location 259

ここには、情報に関するフローがあります。

  • 既存の、あるいは新規の、さまざまな情報を取り込む(情報のインプット)
  • 取り込んだ情報に知的情報処理能力を作用させる(情報の操作)
  • あたらしい情報をつくりだす(情報のアウトプット)

知的生産とは、情報に関するフローです。このフローの上を情報が流れなければ、知的生産にはなりません。

(2) 文章を書くという知的生産のフロー

文章を書くことは、知的生産の一種です。いちばん典型的な知的生産といってもよいと思います。少なくとも、私にとっては、文章を書くことが最も基本となる知的生産です。

そのため、文章作法(文章を書くことの方法論)を考えるにあたっては、文章を書くことにおける知的生産のフローが、どのような特徴を持つのかを押さえておくことが役に立ちます。

さて、文章を書くという知的生産のフローは、どのような特徴を持つでしょうか。

a.メッセージを他者に届けるためのフロー

第1に、文章を書くという知的生産は、何らかのメッセージを、自分以外の他者に届けるためのものです。文章を書くことそれ自体に価値があるのではなく、文章によって表現したい対象となるメッセージがまずあって、そのメッセージを他者に届けるために、文章を書くことが、文章を書くという知的生産です。

文章を書くことは、メッセージを他者に届けるための知的生産なので、この知的生産の価値を決めるのは、その文章によって、他者にどのようなメッセージがどのように届いたか、です。文章を書くことにおける知的生産のフローの下流には、メッセージを他者に届ける、というプロセスがあるのですが、このプロセスにまで到達したときに、文章を書くという知的生産のフロー全体が、何らかの価値を持つようになります。

文章を書くという知的生産は、メッセージを他者に届けるところまで貫通してはじめて、意味を持ちます。文章を書くという知的生産のフローは、メッセージを他者に届けるためのフローです。

b.メッセージは、最初から明確とは限らない

他方で、文章によって届ける対象であるメッセージは、最初から明確な形でどこかに転がっているとは限りません。むしろ、多くの場合、最初の段階では、メッセージは曖昧で掴みどころがなく、その存在すらよくわかりません。

では、他者に届けるに値するメッセージを明確に掴むには、どうしたらよいでしょうか。ひとつの有効な方法は、文章を書くことです。

つまり、文章を書くことは、メッセージを他者に届けるためのものであると同時に、他者に届けるメッセージを明確に掴むためのものでもあります。

そこで、文章を書くことにおける知的生産のフローは、第2に、文章を書くことを通じて届けるべきメッセージを見出すためのフローでもあります。明確なメッセージの存在を前提として、それを文章で表現するためだけのフローではなく、自分が届けたいメッセージを明確に掴むためのフローでもあるのです。

c.フローは、逆流することもあれば、枝分かれすることも、合流することも、ある

一般に、知的生産のフローは、工場で大量生産の製品を製造するフローとは異なります。工程Aから始まって、順次、工程B、工程C、工程Dを通過して、最終的に製品が完成する、というような、一本道の単純な製造フローではないのです。

では、知的生産のフローは、どんな特徴を持っているのでしょうか。

知的生産のフローの特徴は、次の記事にまとめましたが(「知的生産のフロー」の特徴から、知的生産を担う道具が備えるべき条件を考える)、ここでは、文章を書くことを念頭に置いて、特に強調したい3つの特徴を指摘します。

(a) 逆流することがある

1点目は、逆流することがある、ということです。

文章を書くフローは、一方通行ではありません。

たとえば、全部で5000字の文章を書くとして、今2500字まで書いたとしても、あと残り半分とはいきません。4500字まで書いたところで、これまでに書いたものの大半を修正しなければいけないことに気づき、削除削除で1000字まで戻る、ということは、日常茶飯事です。つまり、逆流があります。

(b) 枝分かれすることがある

2点目は、枝分かれすることがある、ということです

あるテーマで、ひとつの文章を書こうと思い、書き始めるとします。たとえば、「『知的生産の技術』を現代の観点から考え直す」というテーマにしてみましょう。

書き始めてみると、ひとつのテーマをたくさんのテーマに分解できることに気づき、しかも、そのひとつひとつをじっくりと書いてみたくなったりします。たとえば、「『知的生産の技術』に登場する文具を現代のクラウドサービスで置き換えたら?」というテーマと「『知的生産の技術』における「積極的な社会参加」とブログの関係」というテーマに分解したくなり、さらに、前者を「『知的生産の技術』とEvernote」「『知的生産の技術』とWorkFlowy」に分解する、という感じです。

  • 『知的生産の技術』を現代の観点から問い直す
    • 『知的生産の技術』に登場する文具を現代のクラウドサービスで置き換えたら?
      • 『知的生産の技術』とEvernote
      • 『知的生産の技術』とWorkFlowy
    • 『知的生産の技術』における「積極的な社会参加」とブログ

また、『知的生産の技術』だけでなく、別の年代に書かれた別でも、同じテーマで書きたくなるかもしれません。たとえば、『「超」整理法』とかです。すると、こうなります。

  • 『「超」整理法』を現代の観点から問い直す
    • 『「超」整理法』に登場する文具を現代のクラウドサービスで置き換えたら?
      • 『「超」整理法』とEvernote
      • 『「超」整理法』とWorkFlowy
    • 『「超」整理法』における「ポケット一つ原則」とブログ

つまり、あるテーマについて文章を書くことからは、いろんなテーマが派生します。文章を書くという知的生産のフローの形でいえば、これは、フローが枝分かれしていく、ということです。

(c) 合流することがある(別のフローの流用)

3点目は、合流することがある、ということです。

文章を書くというフローは、基本的には、完成品としてイメージされるひとつの文章に向かって進みます。構成を組み立てたり、接続詞で言葉を繋いだり、比喩や具体例を考えたりするのは、その完成品としてイメージしているひとつの文章を完成させるため、です

ですが、そのひとつの文章を完成させるために書いているとき、しばしば、他の文章のために書いた一部分を流用できることに気づくことがあります。こんなことが起きるのは、同じような内容の文章を書くときだけに限られません。小説の感想をクラウドサービスの機能説明の文章に流用したり、大学の講義のために書いた説明をブログ記事に流用することもあります。

ここでは、他の文章を完成させるためのフローが、それとは別の文章を完成させるためのフローへと、合流しています。しかも、あらかじめ予定され、計算された合流ではなく、それぞれの具体的な場面で自然と発生する合流です。

(3) 知的生産のフローの特徴を活かした、文章の書き方

このように、文章を書くという知的生産のフローには、いくつかの特徴を持っています。

文章作法、つまり文章を書くことの方法論は、これらの特徴をうまく活かしたものであることが望まれます。それぞれ考えてみます。

a.文章を書き上げ、公開することに向けて、文章を書く

「メッセージを他者に届けるためのフロー」という特徴との関係では、フローを貫通させる必要があります。

どんなに素晴らしいメッセージを含む文章を書き始めても、その文章を書き上げ、そして他者が読める場所に公開しなければ、メッセージを他者に届けることはできません。文章を書くという知的生産のフローは貫通せず、その書きかけの文章は何らの価値を生まずに、埋没したままです。

ですから、文章作法は、何よりもまず、文章を書き上げ、文章を公開する、というフローの下流を実現することを助けてくれるものであることが望まれます。文章を書くという知的生産のフローを貫通させるためのノウハウこそが、価値を生み出す文章作法です。

この観点からは、次の2つが決定的に大切です。

  • 大量の書きかけの文章群全体を管理すること
  • フローの出口(書き上げて、公開するところ)から、フローをプルすること
(a) 大量の書きかけの文章群全体を管理する

一般に、文章を書き上げることは、大変です。私は経験から痛感するのですが、「これは伝えるに値する!」と確信するよいメッセージが降ってくるのはわりと一瞬のことですが、そのメッセージを他者に届きうる文章の形へと整えるためには、粘り強い作業が要求されます。

そこで、よいメッセージを思いついて、文章を書き始めるのだけれど、その文章を書き上げることができないうちに、次から次へと新しいメッセージが降ってきて、結局、大量の書きかけの文章群がどんどん増えていく、という事態に陥ります。

大量の書きかけの文章群が増え続けると、書き進めたい書きかけの文章を探すことも大変で、「以前に途中まで書いたと思うんだけれど、あの文章は、今、どこに行っちゃったんだろう。」ということもしばしば生じ、結局、大量の書きかけの文章群の大半は、埋没し、眠り続け、多くの場合、二度と日の目を見ません。

知的生産のフローを貫通させるためには、ここをどうにかしなければいけません。

ここで求められるのは、大量の書きかけの文章群全体を管理する仕組みです。

大量の書きかけの文章群全体を管理する仕組みは、少なくとも次の3つの条件をみたす必要があります。

  • 書きかけ文章のポケット一つ原則
    • 書きかけの文章すべてを一箇所に集約する
  • 「ファイルを開く」という操作なしに、書きかけの文章の中身を確認できる
    • もっといえば、「ファイルを開く」という操作なしに、書きかけの文章の中身を編集できる(確認するだけでなく、編集できる)
  • ひとつの文章を複数の文章に分割したり、複数の文章をひとつの文章に統合したりする操作が、それほど大変ではない
    • その文章には必要ない部分を、別の文章へと切除する
    • 複数の文章に共通する上の階層を与えて、ひとつの文章へと組み立てる

Evernoteやアウトライナーで文章を書くことで、大量の書きかけの文章群全体を管理する仕組みを作る

(b) フローの出口(書き上げて、公開するところ)から、フローをプルする

文章を書くという知的生産のフローは、

  • インプット:文章の素材となる情報をインプットする
  • 操作:情報を組み立てて、文章の形にする
  • アウトプット:文章を書き上げ、文章を公開する

という一連のプロセスです。

この一連のプロセスは、時系列でいえば、インプット→操作→アウトプットです。

ですから、この一連の知的生産のフローを流すというと、インプットからの圧力を高めて、アウトプットまで押し出す、というあり方をイメージするのではないかと思います。

しかし、実際問題として、このフローのどこが詰まりやすいのかといえば、圧倒的に、アウトプットです。本やウェブから情報をインプットし、考えることでメッセージを組み立てても、文章を書き上げ、文章を公開する、というアウトプット部分で、流れが悪くなり、滞ります。そして、このように滞った流れは、インプットを増やすなどして、インプット部分の圧力を増やしても、そうそう簡単には改善しません。

では、どうしたらよいでしょうか。

発想の転換が大切です。入口から押すのではなく、出口から引っ張ります。つまり、フローの出口たるアウトプット部分(文章を書き上げ、文章を公開すること)から、プルするのです。

まずはひとつの文章を書き上げ、他者が読める場所に公開します。そうすると、文章を書くという知的生産のフローが、少し流れます。少しだけだとしても、一旦流れ始めたなら、こちらのものです。あとは、この流れを滞らさずに、少しずつスムーズにしていきます。

これが、フローの出口から引っ張る、プル型知的生産のあり方です。

b.メッセージを明確にするために、文章を書く

文章によって届ける対象のメッセージは、最初から明確とは限りません。文章を書くことは、メッセージを明確にするための作業でもあります。

では、メッセージを明確にするために文章を書くなら、どのようなことに気をつけるとよいでしょうか。

一言でいうと、トップダウンとボトムアップを往復することです。『アウトライン・プロセッシング入門』は、これを「シェイク」と呼びます。

トップダウンとボトムアップの往復は、別の見方をすれば、分解と統合の往復です。

前者の分解・トップダウンは、仮説としての「問い・答え・理由」で思考の範囲を区切り、その範囲内を分解して分析していくことによって、メッセージを明確にすることを試みます。

後者の統合・ボトムアップは、「その一部分を含む全体」を思い描き、「ひとつ上の階層」へ上がることで、メッセージの位置づけを考えます。

(a) 仮説としての「問い・答え・理由」で、思考の範囲を区切る(トップダウン型思考)

トップダウン型思考というと、一般的には、まず基本原理を立て、その基本原理からの演繹で思考を進めることを意味するのかもしれません。

しかし、ここでのトップダウン型思考は、厳密な演繹ではありません。では、何がトップダウン型なのかといえば、最初に仮説としてのメッセージを立てて、次に、その仮説としてのメッセージの中身を丁寧に分析する、という手順です。

他者に届けるメッセージは、「問い・答え・理由」という3点セットで考えると、明確になります。「問い」が考えるテーマで、「答え」が自分の結論、「理由」がテーマに対する自分の結論を支える根拠です。

たとえば、「個人が継続的な知的生産に取り組むには、どうしたらよいか?」という問い・テーマに対して、「毎日の生活を流れる思考をWorkFlowyで捉え、文章の形にして、ブログで公開するとよい。」という答え・結論を提示し、「現実の毎日から知的生産が制約されていると考えるよりも、現実の毎日を知的生産の母体として捉えるほうが賢いし、WorkFlowyを使えば、現実にそれは可能だからである。」といった理由・根拠を示すと、ひとつのメッセージになります。

この「問い・答え・理由」という3点セットは、最初はなんとなく思いついた断片的なメッセージに過ぎません。その意味で、仮説です。しかし、なんとなく降ってきたメッセージを、仮説としての「問い・答え・理由」という3点セットにしてから、その3点セットを繋ぐ形で文章を書き上げようとすると、その範囲を丁寧に掘り下げて考えることができます。そして、この過程で、メッセージが明確になります。

つまり、

  • なんとなくメッセージを思いつく
  • 思いついたメッセージを、「問い・答え・理由」の3点セットという仮説に整える
  • 仮説としての「問い・答え・理由」をつなぐ文章を書き上げることで、この「問い・答え・理由」の範囲を丁寧に掘り下げて考える

というプロセスを通じて、メッセージを明確にすることができます。

これが、ここでいうトップダウン型思考です。

(b) 「その一部分を含む全体」を思い描き、「ひとつ上の階層」へと上がる(ボトムアップ型思考)

トップダウンと対になるのは、ボトムアップです。では、ボトムアップ型思考とは、どのような思考でしょうか。

一般的には、具体的あるいは個別的な事象を積み重ね、そこにより抽象的でより一般的な何かを見出すのが、ボトムアップ型思考です。グループにまとめたり、概念の抽象度を上げたり、法則を発見したり、といったものです。演繹と対応する概念でいえば、帰納ですね。

WorkFlowyの階層構造との関係では、「上の階層」や「全体と一部分」が、このボトムアップ型思考の特徴をうまく表現しています。何らかの事象を元にボトムアップ型で思考するとは、すなわち、その事象の「上の階層」を見つけることであり、その事象が一部分として含まれる「全体」を考えることです。

さて、もう少し具体的に考えてみると、ボトムアップ型思考には、つぎの2つのものがあります。

  • 最初に具体例をたくさんリストアップした後、共通する要素や法則を抽出することによって、階層を上がる
  • そのときに考えていることそのものを一部分として含む全体を考えることによって、階層を上がる

たとえば、「個人にとって、本を読むことは、どんな意味を持つのか?」というテーマを考えるとします。

前者の、具体例をリストアップするところからのボトムアップ型思考で考えるなら、まず、本を読むということに関する具体的で個別的なことをたくさんリストアップして、次に、それらの共通項を抽出したり、具体例をひとつの筋に組み立てたり、といった作業をすることになります。

後者の、そのときに考えていることそのものを一部分として含む全体を考えるなら、「個人にとって、本を読むことの意味」というテーマ自体が、どんな全体の中の一部分なのかをかんがえることになります。たとえば、「本を読む」を含む全体は「インプット→思考→アウトプット」という「知的生産」だ、と考えれば、「個人にとって、知的生産は、どんな意味を持つのか?」という上の階層を考えることになります。たとえば、「個人にとって」を含む全体は、「組織にとって」「「分人」にとって」など、個人よりも大きなレベルと小さなレベルだと考えれば、「組織にとっての読書」「個人にとっての読書」「「分人」にとっての読書」などを含む全体が、上の階層になります。

こんな思考が、ボトムアップ型思考のイメージです。

(c) 「シェイク」でメッセージを明確にする

これらのトップダウン型思考とボトムアップ型思考は、ひとつのテーマにどちらか一方しか使ってはいけないもの、ではありません。むしろ、トップダウン型思考とボトムアップ型思考を往復することによってこそ、メッセージを明確にすることができます。

これが、「シェイク」です。

c.逆流・枝分かれ・合流を活かして、文章を書く

文章を書くという知的生産のフローは、工場における製品製造フローとは異なり、一本道ではない形を指定ます。典型的には、逆流・枝分かれ・合流です。

では、これら逆流・枝分かれ・合流というフローの形を踏まえると、文章作法としては、どんなことに気をつけるとよいでしょうか。

(a) 逆流

文章を書くという知的生産のフローには、逆流がしばしば生じます。文と文を並べかえたり、項目立てを組み替えたり、途中まで書いた部分を消したり、一度消した部分を再び復活させたり、というように、行きつ戻りつで少しずつ進みます。これが、文章を書くという知的生産のフローにおける逆流です。

これを踏まえると、文章作法としては、以下の各点に留意することが大切になります。

  • 文章を削除する場合に、削除機能ではない機能を使うことを念頭に置く
  • 文章そのものだけでなく、文章のひとつ上の階層(メタなこと)を扱う
    • 文章を書くときに、「ここは後で確認しなくちゃなあ」「一応書いておくけれど、修正あるかも」と感じることがあります。文章を書く際に、こうした、文章のひとつ上の階層に属することを、文章を書く道具そのもので扱えると、便利です。
  • 大小様々な部分で、構造の組み立て直しを最後の方まで継続的に行う
    • 構造のある文章を書く際は、一般に、「最初に文章の構造を固めて、その後、構造に従って細部の文章を書く」という順序が推奨されます。しかし、文章の構造は、実際に細部の文章を書くことによってこそ、組み立てることができます。
    • そのため、文章を書くプロセスの後ろの方の段階まで、文章の構造を気楽に組み立て直すことができるようにしておいたほうが良いです。
      • 細部の構造だけでなく、文章全体の大きな構造も、最後のほうで抜本的に組み替えた方がよい場面が、たくさん生じます。
(b) 枝分かれ

文章を書くフローで生じる枝分かれは、新しい思考のよい材料です。文章を書いている途中で発生した枝分かれは、きちんと捕らえて、蓄積しておくことが望まれます。

他方で、枝分かれを捕まえることに注意をとられると、書いている途中の文章という本流を見失ってしまいます。そのため、枝分かれを捕らえるための作業は、無意識にさっと簡単に完遂されなければなりません。

このような、一見両立しがたい条件を満たすために、文章作法としては、以下の点が大切です。

  • ファイルを作る操作なしに、新しい文章を書き始めることができる
    • 枝分かれを捕まえるには、どこかにその枝分かれを記録する必要があります。文章を書いている途中に生じた枝分かれは、文章の形で捕まえておくことが合理的です。そのため、枝分かれを捕まえるには、ふと生じた枝分かれを、文章の形で書き記すことが必要です。
    • しかし、新しい文章を書き始めるために、「新しいファイルを作る」「ファイルの保存場所を決める」「ファイルを保存する」「ファイルに名前をつける」などの操作が要求されると、面倒です。枝分かれを捕まえるために、注意がとられてしまいます。
    • そこで、ファイルを作るなどの操作なしに、新しい文章を書き始めることができるような条件を整えておく必要があります。
  • 枝分かれを捕まえた後、すぐに本流に戻ることができる
    • 枝分かれを捕まえた後、すぐに本流に戻る必要があります。本流に戻るまでに時間が空いてしまうと、本流である文章を書く作業に対する没頭度合いが冷めてしまうためです。
    • キーボードやマウスなどの簡単な操作で、すぐに元通りの場所に戻ることができるような条件を整えておくことが大切です。
(c) 合流

文章を書くフローにおける合流とは、たとえば、ある文章Aを書いているときに、別の機会に書いたあの文章Bの一部分を流用できるかも、と思い、文章Bの一部分を、文章Aに組み込む、というようなことです。

こんな合流を活用するには、文章作法としては、以下の点が大切です。

  • 別の文章に至る知的生産のフローに、アクセスできる
    • 「文章Bの一部分を流用できるかも!」と思ったその瞬間に、文章Bに関するフローにアクセスできなければ、文章Bを文章Aに流用することはできません。そこで、これまでに書いてきた文章のフローの蓄積に、いつでもどこからでもアクセスできることが大切です。
    • また、「文章Bの一部分を流用できるかも!」と思ったとして、その一部分を発見するために丸一日かかってしまうのであれば、流用せずに新たに書き下ろしたほうが、結局は速いはずです。そのため、過去の文章のフローを簡単に掘り返すことができるような検索機能が望まれます。
  • 別の文章に至る知的生産のフローの一部分を、流用できる
    • 文章Bを文章Aに流用できるとしても、流用できるのは、文章Bに至る知的生産のフローのうち、ごくごく一部分だけです。そのため、文章Bの知的生産のフローを流用して合流させるためには、その一部分だけをピンポイントで抜き出す必要があります。
    • また、一部分だけをピンポイントで抜き出せたとしても、いちいち手作業で書き写さなければいけないのであれば、流用は面倒です。コピー&ペーストや、これと似たような機能によって、文章Bの一部分を簡単に文章Aに取り込めることが肝心です。

【続く】

ここまでが、『WorkFlowy文章作法』第1章「2つの原則」の前半です。長くなってきたので、ここで一旦切り出して、続きは別記事として書くことにします。

『WorkFlowy文章作法』の全体について

『WorkFlowy文章作法』は、WorkFlowyを使って文章を書くことについて考える連載です。

  • はじめに
  • 第1章「2つの原則」
  • 第2章「メッセージとその構成要素」
  • 第3章「文章とその構成要素」
  • 第4章「メッセージ群と文章群」
  • 第5章「フロー全体を大切にする」
  • 第6章「自分の全体から、目的に対応した一部分を切り出す」

文章を書く道具としてのWorkFlowyが持つ魅力を、少しでもお伝えできたなら、とてもうれしく思います。

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